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きれいなご主人様

ボクのご主人様はうつくしさにこだわっている。
家にいるときはサラサラで気持ちのいいお洋服を着ている。
散歩に出かけるときはキラキラしていたり、ツルツルしていたり、
フリフリしたりしたカワイイお洋服を着ている。
そんなご主人様の隣にいるボクも、素敵なお洋服を着せてもらってる。

ボクはお出かけするとき、少しリンとして鼻を高くして歩くんだ。
そうしたらすれ違う人たちがボクのことを「かわいい」と言う。
ご愛想でシッポなんか振ってみると、その人たちは簡単に喜ぶ。
なのに、ご主人様を見てすぐに目を逸らす。
そして、少しだけニヤッとする。
それから、コソコソと隣の人とお話をし始める。
たまに、ジロジロと舐めるように見る人もいるけど。
不思議なんだ。
ご主人様はキレイなのに誰も褒めてくれない。
ご主人様はカワイイのに誰もそうは言ってくれない。
ご主人様はうつくしさにこだわっているのに笑われてしまう。

不思議そうな目で見ているボクにご主人様が気付いてしまった。

「嫉妬だよ」

あぁそうか。
うつくしいご主人様にみんな嫉妬しているんだ。

ボクはホッとしてご主人様の足にすり寄った。
ボクはご主人様の足が大好きだ。
ツルツルするところとジョリジョリするところが楽しいから。

「みんな、なりたい姿になれないから。自由がないから」

そうご主人様が言った。
ボクはよく意味が分からなかったけど、
ご主人様はやっぱりキレイだから、1回吠えて褒めてあげたんだ。

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