ウィンタースポーツ

 九州・福岡で生まれた私にとって、冬のスポーツは少し縁遠い。今までのウィンタースポーツ経験と言えば、中学生の時、修学旅行で鳥取県の大山にスキーをしに行ったことと、大学在学中のスキー実習(教育学部の体育学科だったので)くらいなものだが、正直いい思い出がない。
 大学のスキー実習で自分のレベルよりちょっと高いグループに入ったことが悲劇の始まりである。長野の菅平で5日間の実習を行うもので、事前に自分のスキーの実力を進言する。参加者はみんな体育学科だが、スキーが専門の学生は一人としていない。私のスキー経験は先に述べた中学時代の修学旅行のみだったわけだが「多分できる」みたいな根拠のない自信がこの時は発動した(よく発動する悪い癖)。
 結局、上から2番目のグループになり、菅平に着いた初日から、急こう配に連れて行かれることになった。とは言っても、最初はハの字でゆっくりと滑っていくところからスタート。私は列の最後尾から滑っていくが、足を引っ張らないように必死だった。記憶から消しかけていたので定かではないが、初っ端から何度もこけたし、何回も板が外れた、と思う。出来ないくせに、やってやろう精神だけは強いので「えいっ」と勢いで行ってしまって、何度も直滑降気味に滑り、迷惑を掛けた。一日目の実習が終わる頃、急なコースから降りることとなるわけだが、「基本に忠実に、ジグザグに、ターンは焦らず、無理をせず降りましょう」を忘れてはいけない。私達は自分たちが滑ることが出来るようになるのも大切だが、先生になるための実習をしているわけで、指導者としての立ち位置も意識しなければならないのだ。
 先にスタートしたメンバーはスルスルと流れるように進み、小さくなっていく。いよいよ私の番。2回目のターンから、制御不能となり、斜めに猛スピードで進んでいくだけだった。転んで止めなきゃと思ったが、それも出来ない。成すがまま。目の前に、ネットが見えてきた。コースを区切る網だ。あそこに突進したら止められるかもしれない。
 
 ドンっ!!

 私を止めてくれたのはネットではなく、そのネットを支えている『杭』だった。そこに股間で激突した。痛かった。男性だったら喘ぎ苦しむレベルだったと思う。女子で良かったと強く思った。ゆっくりと立ち上がり、みんなのいる場所まで下って、ヘラヘラして「大丈夫です」と言ったが、心は泣いていた。
 実習で痛い思いはしたが、最初よりも格段に滑ることが出来るようになったし、皆で滑ることは楽しかった。翌年の実習にも参加したくらいだ。…が、スキーに魅せられた、というレベルまでは行かなかった。まぁ才能がなかっただけだろうが。なのでスキーはそれ以来やっていない。スケートですら、もっと長い期間やっていない。苦い経験もさることながら、やはり身近ではないのだ。
 九州人にとってウィンタースポーツは、場所も時間もそして精神的な距離感も身近ではなく、「わざわざやるもの」感が強いのではないだろうか。もちろん、九州出身者でも当たり前のように日常的にスキーやスノボーに興じている人はいるだろうが、プロになるまでの選手はそこまでいないように思う。

 という背景があって、この度の平昌オリンピックにおいて、どれだけ九州出身者がいるのか調べてみた。調べてみたら、すでに「週刊ダイヤモンド オンライン」でその記事があった。今回では、スノーボードの鬼塚雅選手(19)が熊本出身、フリースタイルスキーの村田愛里咲選手(27)が福岡出身の2名である。村田選手は九州出身者として初のスキー五輪代表である。
 二人とも小学校時代に競技と出会い、室内練習やスキー留学でレベルを高めている。環境が整っていなかったり、身近にライバルがほとんどいなかったりする中で、小学生や中学生から国内大会で結果を残しているわけだ。
 そうと知ったからには応援に力が入る。LIVEで見ることが出来たのが、スノーボード女子ビッグエア出場の鬼塚雅選手。競技時間は1分にも満たない一瞬の勝負。滑走路を滑り降り、反り返ったジャンプ台から跳び、縦横斜めに回転したり、ボードを持ったりして技を競う。何をしてやったら得点が加算されるんだか、難易度が高いんだか、全く分からないが、その一瞬に息を飲む。転ばずに着地してくれと祈る。予選では日本人4選手は見事なパフォーマンスで高得点をたたき出し、鬼塚選手含む3人が決勝へ進んだ。そして決勝。着地の失敗もあり得点が伸びず、鬼塚選手は8位。そりゃメダルは獲ってほしかった気持ちはあるが、予選を通過し、決勝の舞台に立つことは誇らしかった。
 九州出身の選手だけではなく、日本人選手の活躍は誰しも等しく嬉しい。オリンピックの時ほど自分が日本人であることを強く実感することはないかもしれない。今年は韓国開催だったお陰でたくさんの競技を見ることができ、メダルは過去最高になったためより楽しめた。また、日ごろほとんど接することのない、ウィンタースポーツを知るいいきっかけにもなった。ルールや得点基準がよく分からないから、無心で楽しめる点も良かったと思う。
 まもなく大会は終わるが、これを機にまたスキーでもやってみようかな。もちろん、傾斜の浅い場所で。

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