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不可逆的進化を体感せよ!マイクロソフト西脇資哲が解き明かすChatGPT

あらゆるところでChatGPTが話題になっているが、IBMエンジニアからキャリアをスタートした私のIT業界界隈では、ChatGPTのビジネスインパクトを読み解くにはマイクロソフトのエヴァンジェリスト西脇資哲(にしわきもとあき)氏のセミナーが一番である との噂があり、これは実際に参加してみねば、と2023年6月某日にセミナーに参加させていただいた。

冒頭から所感を述べるのも恐縮だが、最高に良い学びの機会となった。当noteでは、私の意見も含めてしまっているが、大人気の西脇氏セミナーに、満員御礼だったり遠隔だったりで参加できない方向けにも楽しんでもらえれば幸いであると考えまとめている。

(※当noteエントリーについては西脇氏本人にも公開許可を取らせていただきました。西脇さんありがとうございます!!)


■とんでもない!ブームのChatGPT、 AIの歴史を学ぶ

まずセミナー開口一番西脇氏氏が語ったのは「とんでもない!ChatGPTブームが訪れています。そのブームをマイクロソフト自身は追い風と感じています。」とのこと。確かに西脇氏のChatGPT関連セミナーに参加しようとすると満員御礼のことがあったり、私のメールボックスにも日英問わず様々なニュースレターが ChatGPT / ジェネレーティブAIについての情報を流してきてくれる。
ただ、西脇氏はAIブームは今始まったものではなく、歴史があると語る。

ジェネレーティブAIはAIの歴史の最前線に位置している

ただ、何故今回のジェネレーティブAIだけが、とんでもない!ブームになっているかというと民主化・大衆化しているからである、と西脇氏は語る。自然言語でコミュニケーションできることが民主化・大衆化のことを指しているのだろうか?と私は思ったのだが、西脇氏はビジネスパーソンが使い慣れているPower PointやWord、TeamsにChatGPTが組込まれることにより、民主化・大衆化が実現できていると教えてくれる。Power Pointがテキストを入れただけでデザインを提案してくれる機能は既に知っていたが、プレゼンテーションのリハーサル&コーチングをしてくれる機能は知らなかった。

PowerPointではプレゼンのリハーサルやコーチング機能もある

Teamsのセンチメント分析(感情分析)にもびっくりした。これはTeamsオンライン会議参加者の感情をトラック・分析するものである。何故びっくりしたのかというと、ハーバードやスタンフォードよりも人気があると言われている少人数型オンライン教育を行うミネルヴァ大学の授業を思い出したからだ。ミネルヴァ大学では先生がこのセンチメント分析を利用し、オンラインでも生徒がいまどのような感情なのかを察知し、適切な指導を行っていると聞く。優秀な学生が目指す大学で使っている機能と同じものが、Teamsで使えるとなると、どこかで一度試してみたくなる。

Teamsのセンチメント分析の例

既にみんなが使い慣れているツールにジェネレーティブAIの魅力を追加することにより民主化・大衆化を目指すアプローチは深津貴之氏 @fladdict の「怠惰の法則」も思い出させてくれる。ものぐさな人でも使えるテクノロジーこそが市民権を得るというのが「怠惰の法則」で深津氏が語っていることなのだが、同じ視点で眺めてみると「既に民主化されているパワポやワードにChatGPTを組み込む」ことにより、最新テクノロジーであったとしてもマジョリティに受け入れやすくなるアプローチでもあると考える。やはり新規ツールを使いこなすのは少し億劫だが、使い慣れたツールの新機能となると敷居が下がる。

怠惰の法則はTakram田川欣哉氏のnoteエントリーがわかりやすいので興味ある方は是非↓こちらも参考にしてもらいたい。

■わずか5日で100万ユーザー獲得。ChatGPTの勢いを支えてきたマイクロソフト

さて、なぜマイクロソフト製品にはChatGPTが組込まれているのかというと、ChatGPTを提供するOpenAI(創業2015年)に、マイクロソフトが潤沢な出資を行ったからである。西脇氏が強調してたのは、創業わずか3年強のスタートアップに大規模出資およびAzureなどのクラウド環境も提供したことにより、いま私達がお世話になっているChatGPT3, 4、そして画像生成AIのDALL-Eが生みだされた点である。大企業のスタートアップへの支援成功事例としても大きく取り上げられる素晴らしい事例だと私も考える。

OpenAIもMicrosoftも人類に利益をもたら、より多くのことが達成できることを願っている
総業3年強のOpenAIに多額の出資を行ったことが現在のマイクロソフトとChatGPTの関係を作る

OpenAIは創業わずか8年で時価総額4兆円。この時価総額は日本郵便と同じ額とのことだ。金額面だけではなくユーザー獲得のスピードも驚異的である。わずか5日で100万人登録突破、史上最速2ヶ月で月間アクティブユーザー1億人達成、西脇氏が冒頭で「とんでもない!ChatGPTブームである」と強調されていたことに納得がいく。

総行8年で4兆円の時価総額であるOpenAI
たったの5日間で100万ユーザー獲得
世界最速のアクティブユーザー1億人突破

■野良ChatGPTを生みださないために・・

西脇氏のセミナーではChatGPTの構造もわかりやすく教えてくれる。570GB以上の文章と1,750億個のパラメーターというとてつもない(人間ではとても処理不能・・・)なデータにより、自然言語の文法と構造を理解して文章を作り上げていくChatGPT。西脇氏は、桃太郎の物語を例に、ChatGPTが文章を生成する様を教えてくれる。

ChatGPTは膨大なデータと自然言語文法・構造を理解することにより、物語の続きを推測可能
ChatGPTは膨大なデータと自然言語文法・構造を理解することにより、物語の続きを推測可能
最新のGPT-4では統一司法試験も合格してしまう優秀さ。

最新のタスク一覧では、GPT-4から出来たインサイト抽出、添削・評価、コード生成、アイディア創出など仕事の相棒として最適な機能を改めて紹介してくれる。

様々な仕事の場面で活かせそうなタスクの数々。赤字はGPT-4の機能だ。

さて、企業導入で気になるのがChatGPTを使うことにより機密情報が流出してしまう恐れがあることである。西脇氏は監視無きChatGPT企業利用を「野良ChatGPT」と語る。例えば新製品のスペックを翻訳するためにChatGPTを使うとなると、それは情報漏洩となる。プレスリリースの原稿をそのまま入力して要約するのもご法度だろう。そしてユーザーデータなどを入力する恐れなども出てくる。

機密保持に当たるデータを入力することを野良ChatGPTと西脇氏は語る

西脇氏はルール、マナーづくりと同時に、自社専用のChatGPT環境を作る必要性を述べている。予算が大規模に膨れ上がると思うのだが、安心してChatGPTはじめジェネレーティブAIの恩恵を受けるためには、ルールを決めて徹底的に機密情報を入力しないようにする方法もあるかもしれないが、自社専用の環境を作るのが大事そうである。

ルール、マナーづくり、自社専用環境の構築がビジネスでChatGPTの恩恵を受けるには大事

西脇氏のプレゼンを聞いていて、私が魅力的と思ったのは「コンテンツ・セーフティー」機能である。これはChatGPTが不適切な言葉を発さないためのフィルターやモニタリング、アラート機能を有するものである。間違ったキーワードを生成させない、生成したとしてもすぐに察知できることにより、企業が安心して最新テクノロジー ChatGPTを使い始めることが出来る「はじめの一歩」機能をこのコンテツセーフティーは提供してくれている。

企業導入の際に安心を提供するコンテツセーフティー機能

■日本のメガバンク全社が利用開始しているAzure OpenAI Services

「コンテンツセーフティー」のような機能があり、機密情報を守る仕組み、ルール作りの支援があるからか、既にマイクロソフトのChatGPT AIサービスを利用し始めている企業が日本にも増えている。西脇氏が強調していていたのは日本のメガバンク全社も導入を決めてる、という点だ。

以前書いたnoteのエントリーで、伊藤穰一氏が「日本はインターネットの波には乗り遅れたが、AIガバナンスにおいては世界において良いリードを取れるのではないか?」と語っていた事を伝えたが、メガバンク始め大手企業がジェネレーティブAIを使うことによりにより見えてくるルールづくりを企業の枠を越えて共有したり、政策などにも活かすことができるのであれば、AIガバナンスとして世界に提唱できるものが日本から生まれてくるかもしれないと思うとワクワクする。

■ChatGPTは歴史に残る不可逆的な進化

最後に、西脇氏は「ChatGPTは歴史に残る不可逆的な進化である」と語る。ChatGPTは電卓やPC、スマホが出てきたのと同じような位置づけになるであろう、とのことだ。私のキャリアのなかだけでもこの不可逆のうねりは体験しているが、先述の通りChatGPTはその勢い・速さが半端ないと思っている。常に最新動向を追っている必要があり、使い続けていく必要があると考えているので、また西脇氏のセミナーに参加し学び続けて行くことができればと考えている。西脇氏のセミナーまとめが少しでも読んでくださった方の参考になれば幸いである。

この進化の流れを見ていくと2030年には何が起きているのだろうか?2030年の「不可逆」に乗り遅れないためにも、今後も学び続けていこうではないか。

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