📗今日の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️
📗礼拝メッセージ『一粒の麦』
新約聖書　ヨハネの福音書第12章20～26節　2024年3月17日
 
20　さて、祭りで礼拝のために上って来た人々の中に、ギリシア人が何人かいた。
21この人たちは、ガリラヤのベツサイダ出身のピリポのところに来て、「お願いします。イエスにお目にかかりたいのです」と頼んだ。
22ピリポは行ってアンデレに話し、アンデレとピリポは行って、イエスに話した。
23すると、イエスは彼らに答えられた。「人の子が栄光を受ける時が来ました。
24まことに、まことに、あなたがたに言います。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままです。しかし、死ぬなら、豊かな実を結びます。
25自分のいのちを愛する者はそれを失い、この世で自分のいのちを憎む者は、それを保って永遠のいのちに至ります。
26わたしに仕えるというのなら、その人はわたしについて来なさい。わたしがいるところに、わたしに仕える者もいることになります。わたしに仕えるなら、父はその人を重んじてくださいます。」


　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。
　この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。
 
　ナポレオンの遺書がシカゴ大学に保管されているそうです。遺書にはこう書かれているそうです。
 
「今、私はセントヘレナの島に繋がれている。いったい誰が私のために戦って死んでくれるのだろうか。誰が私のことを思ってくれるだろうか。誰が死力を尽くしてくれる者があるだろうか・・・ローマ皇帝カイザルも、アレクサンダー大王も、忘れ去られてしまった。私とて同様である・・・イエス・キリストの永遠の支配と、大ナポレオンと呼ばれた私の間には深くて大きな隔たりがある。キリストは愛され、キリストは礼拝され、キリストの信仰と献身は全世界を包んでいる。これを“死んでしまったキリスト”と誰が呼べるだろうか。イエス・キリストは永遠の生ける神であることの証明である。私ナポレオンは、力の上に帝国を築こうとして失敗した。しかし、イエス・キリストは愛の上に彼の王国を打ち立てている」。
 
　非常に考えさせられる遺書ですね。実は、今日のみことばと、非常に関係してくる内容なんです。そのことも後で触れたいと思います。
 
　さて今日もヨハネの福音書なんですけれども、ヨハネの福音書の中で一番有名なことばは何でしょうか？と問うたら、皆さんは何とお答えになるでしょうか？色んな答えがあると思いますけれども、あのヨハネ第3章16節の、
 
16神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに世を愛された。それは御子を信じる者が、一人として滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。
 
　というこのことばを挙げる方がクリスチャンには多いと思います。しかしもし、クリスチャンでない方にもよく知られている聖書のことばと言ったら、人生に役立つ世界の名言・格言といった本が世に何冊もありますけれども、今日の24節に記されているみことばが、最も有名な部類として入ることが多いんではないかと思うんですね。
 
一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままです。しかし、死ぬなら、豊かな実を結びます。
 
　あるいは、古い翻訳の文語訳でどこかでお聞きになったことがあって、どちらかというとこちらの方で記憶に残っている方もあるかもしれません。
 
一粒の麥、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん、もし死なば、多くの果を結ぶべし。
 
　格調高いですね。どちらも味わい深いことばですね。これは世界の数多くの文学や芸術の作品のタイトルになったり、作品の中で引用されて来たりしたことばです。幾人もの人の伝記のタイトルとなったりもしています。
　それでこのことばそのものに不思議な力がありますので、世界中の多くの人が、これはどこから来たことばだろうか？と心打たれ、感銘を受けてきました。
　しかしそれは、勇気をもって、いのちを投げ打つかのように、一つのことに飛び込んでいこう。そうするならば、その働きは、素晴らしいものとなって、多くの人を生かすこととなり、偉業として後世に残って行くものだ。そういう格言のようにして聞かれることだと思います。そんなふうに、犠牲をいとわずに生きて行くように、私たちを促すことばであるかのように、一般にはよく知られています。
　それが聖書由来のことばであるということは、知っている人も知らない人もあるでしょうけれども、そんなふうに教会外の世界でも、このイエス・キリストのことばがよく知られているということは、私たちにとってもある意味嬉しいことではないかと思います。けれども、本当の意味は、じつはそういうこととはちょっと違う。応用としてはそういう用法は正しいんですけれども、イエス様がここで言われたもともとの意味は、少しというか、大分異なるんですね。その本当の意味を、訪ねて行きたいと思うんですね。
 
　少しだけ前の文脈をお話しますけれども、このヨハネの第12章の、今日の箇所に入る少し前には、いわゆるイエス様のエルサレム入城の話があるんですね。メシアとしてエルサレムに入城された。けれどもカッコイイ背の高い馬ではなくて、柔和なロバに乗られて入って来られた。このことも後で大変大事なポイントになります。
 
　そしてその後に起こった、一見なんでもないようなできごとが20節から記されています。
 
20　さて、祭りで礼拝のために上って来た人々の中に、ギリシア人が何人かいた。
21この人たちは、ガリラヤのベツサイダ出身のピリポのところに来て、「お願いします。イエスにお目にかかりたいのです」と頼んだ。
 
　何か今話題沸騰のイエス様にお会いするために、事務所を通してください、とか、マネージャーを通してください、といった話のように見えます。
　ギリシャ人、これは大変珍しいことのように見えます。私たちには何でもないことのように思えますけれども、イエス様はこの時世間から、ユダヤ教の教師か預言者と思われていたわけです。ユダヤ人から異邦人とみなされるギリシャ人が、ユダヤ教のラビに会いに来る、というのは珍しいことです。たぶん、過ぎ越しの祭りの時期とはいえ、単に観光客というのではないでしょう。真剣に、信仰を求めて来た、こんにちの教会の用語で言えば、求道者、といったところでしょうか。このイエスという方が、世界の救い主とまでは思わなくても、ギリシャ神話で教えられているような偉大な神々の1人だと思ったのかも知れません。
　いずれにせよ、彼らの背景とか、何人であったとか、どういう気持ちで来たとか、そういうことは一切この福音書は記しておりません。けれどまず彼らは弟子のピリポに頼んだ。このピリポは、ギリシャ風の名前でして、ギリシャ語が堪能だったのかもしれません。だから頼みやすいと思ったのかも知れません。そのピリポは、慎重だなとは思いますけれども、弟子のアンデレにそのことを話して、イエス様に報告するわけですね。（やっぱり2人はマネージャーみたいですね。）
「おい、あんなこと言ゆうんけんど、どうする？先生はお会いになるろうか？」
「いやー、今先生はこじゃんと大事な時やき、そんなヒマないがやないろうか？それにけがれた異邦人らぁやろう？もう断りを言うて帰ってもろうてもかまんがやないろうか？」
「いや、けんど先生は異邦人にも分け隔てなく話されるお方やろう。忙しくてもお会いになるかも知れんで。一応報告しちょこうやいか。」
　そんなことを言いながら、イエス様に話すと、イエス様はおっしゃいました。23節24節をお読みします。
 
23すると、イエスは彼らに答えられた。「人の子が栄光を受ける時が来ました。
24まことに、まことに、あなたがたに言います。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままです。しかし、死ぬなら、豊かな実を結びます。
 
　これは、取り付いたピリポとアンデレに対する答えになっているでしょうか？「ギリシャ人が何人か、先生にお目にかかりたい言うて来てますけど」の答えとして、「人の子が栄光を受ける時が来ました。」これは全くかみあっていないように聞こえるわけですね。
　「ギリシャ人が来てます。」という言葉に対して普通の答えとしては「よし、会おう」か「帰ってもらって」のどちらかでしょう。どちらとも言わない。そののち、このギリシャ人たちがイエス様に会えたのか会えなかったのか？会えたとしてイエス様の話を聞いてイエス様を救い主として信じたのか？全く福音書記者のヨハネの語りでは姿が消えてしまっています。ということは、それらのことは、さほど重要ではない、と著者のヨハネは考えている、ということなんです。この時に、まさにギリシャ人がイエス様のもとに来た、そのことが物凄い重要なことなんだ、って、ヨハネは語る、いや、神がお語りになるわけですね。
　
　ここで重要なのが、イエス様のエルサレム入場の後のできごとだということなんです。この時に、イエス様をメシアとして、ホサナホサナ（つまりこの時代には万歳万歳ぐらいの意味）と迎えていた民衆たちは、メシアが本当はどういうお方であるか全く分かっていませんでした。ダビデ王の子孫として来られる方と言っても、それは、政治的、軍事的、ヒーローであり、占領しているローマ帝国を追い払って、あのダビデ王国の再来のような神の国つまりユダヤの独立王国を打ち立ててくれるそういうメシアだと思っていたわけです。つまりユダヤの民族的な救い主だと思っていたし、彼が打ち立ててくれるのは地上の王国だと思っていたわけです。（しかし柔和なロバに乗って入られたというのは、そういう民族的、あるいは軍事的メシアでは無かったことを表しているんです）
 
　ところがここで、ギリシャ人が来たということは、時が来たのだ、ユダヤ人だけではなくて、ギリシャ人も、世界中の人を救う、そういう時が、まさに来たのだ、そう主イエスはお語りになっているのです。(ヨハネの福音書 第10章16節では、イエス様は「わたしにはまた、この囲いに属さないほかの羊たちがいます。それらも、わたしは導かなければなりません。その羊たちはわたしの声に聞き従います。そして、一つの群れ、一人の牧者となるのです。」とおっしゃっていますが、囲いに属さない他の羊たちとは、このギリシャ人をはじめとした異邦人のことを指します。彼らが救われる時がついに来たのだ、と主は言っておられるのです)
　つまり、ここで会話がかみ合っていない、ピリポとアンデレの言葉に、そしてギリシャ人たちの求めに、イエス様はお答えになっていなくてご自分の論を展開させていらっしゃるように見えるかもしれませんけれども、最も深い部分で、その求めてに答えていらっしゃるんです。ギリシャ人たちはもしかしたら表面的には病気を癒してほしいとか、人生の深い意味を教えてほしいとか、そんなことを求めて来たのかもしれませんけれども、しかし究極、意識に上らない最も深い部分で彼らが求めていたのは、やはり救いでしょう。その究極のところにイエス様は答えておられますので、この後このギリシャ人たちは、主イエスの復活や昇天の後、主イエスを信じてクリスチャンとして生涯を送ったのではないかと想像する人は多いんです。
 
　さてこの人の子というのは、イエス様がご自分を指して言われることばですね。人の子が栄光というのは、ヨハネの福音書においては、栄光は十字架なんです。十字架に上げられるのがなぜ栄光か？栄光と言えば私たちにはオリンピックでの栄光の金メダルなどと言いますけれども、あの十字架におかかりになった主イエスのあの姿は、いかにも敗北の姿のように見えますけれども、神の全人類の救いのご計画をあそこで実現した、じつは栄光の姿なんだとヨハネは語るんです。
　そして一粒の麦が地に落ちる。地に落ちるとはもちろん、死を意味します。そして地中深く下るということで、よみにまで落ちるということです。そのイエス様の死が私たちのあがないの、罪のゆるしの、救いの力を持っていたから、だからそのイエス様という麦の殻が破れて、新しい命が萌え出でて、芽吹いたのです。このイエス様の死から、新しい多くの命が生れて来たのです。
　それはこれまでのいのちとは違って、主イエスがここで約束されている通りに、永遠と言ういのちをいただいた、もう朽ちてしまわない命をいただいた麦たちの大収穫となったのです。
このことばは主イエスが異邦人に対して言われたことばでした。それは私たちと同じ、ユダヤ人ではない、ユダヤ人から見て外国の人たち、そういう人たちにも命を与えるその時が来たんだ。
一粒の麦が死ぬ。そして多くの実を結ぶその時が。
ヨハネの福音書の第4章で、刈り入れを待つ畑の話を主イエスはなさいます。刈り入れまで4か月とあるところから、麦畑ではないかと思いますけれども、福音を伝える働きの実りとして、イエス様の脳裏には、四方八方の地平線にどこまでもどこまでもザーっと広がる、金色に輝く一面の麦畑が見えたんです。そして主イエスは弟子たちに、ほらごらんよと言われたんです。将来こんなふうになるんだと。ほらこんなに色づいて、刈り入れを待っていると言われて、世界に広がる神様のビジョンを見せて御覧になって、それはすなわち、主イエスがその時から異邦人のこともご覧になっていて、つまり、私たちのことも主はご覧になりながら、そのためにわたしは死ぬとおっしゃった。一粒の麦が地に落ちる。そして死ねば、それが一面の金色の麦畑を生み出すんだ。その金色の麦畑の中にあなたがいるんだ。そんなあなたが新しく生まれると、わたしが死ねば、あなたが生まれると　おっしゃったんです。
 
でも、25節26節のことばで、戸惑いや抵抗を覚えられる方もあるかもしれません。
 
25自分のいのちを愛する者はそれを失い、この世で自分のいのちを憎む者は、それを保って永遠のいのちに至ります。
26わたしに仕えるというのなら、その人はわたしについて来なさい。わたしがいるところに、わたしに仕える者もいることになります。わたしに仕えるなら、父はその人を重んじてくださいます。」
 
　24節まではイエス様の犠牲のことを言っていて、25節26節は、私たちの犠牲のことを言っているように聞こえまして、そしてそれこそ、イエス様の犠牲にならってそれを真似するなんて、私にはとてもできません、と、言いたくなるところかもしれません。
　特に25節のことばはひっかかりを覚えるでしょう。自分のいのちを愛する者はそれを失い、自分の命を憎む者は、それを保って永遠の命に至る。
　自分の命を憎む、これはユダヤの表現でして、文字通り憎むわけではなくて、より小さく愛する、という意味です。ある牧師は、「自分のいのちに執着する者はそれを失い、この世で自分のいのちに執着しない者は、それを保って永遠のいのちに至ります」と訳した方がいいかもしれないと言いました。それが本来の意味に近いかもしれません。最初にナポレオンの遺書を挙げたのもその意味があります。自分の(ギリシャ語で)プシュケーと言いますけれど、プシュケーという儚い命に執着する者は、自分の地上の栄光や、地位や、名声や、金銭などを固執するけれども、ナポレオンのようにそれごと失ってしまうものなんだ。けれどもその地上の儚い命をより少なく愛する、執着しなくて主イエスに信頼する者は、永遠のいのち、主イエスという麦から芽吹いた新しい、来たるべき世にまで続く命に至るんだということですね。
　ですからここは、犠牲を払って愛の行ないをしなさい、とか、滅私奉公しなさいとか、そんな意味は、正確に聖書解釈をして行くと、決して一切出てこないことなんです。
そして26節のことばでもし、「嫌だなぁ」と感じるなら、「わたしに仕えるというのなら、その人はわたしについて来なさい。」「わたしに仕えるなら、父はその人を重んじてくださいます。」ということばから、「イエス様を信じているけど、私は仕えるとか、イエス様に仕えるとかがあまりできていないから駄目なんだ」とか「父なる神に重んじられるためにはイエス様に仕える努力を、もっとしなさいもっとしなさい、あなたはまだまだイエス様に対する聞き従い方が足りないのだ」と、まるで永遠に終わらない、そして永遠に合格点に達することができない宿題を、延々と出され続けているかのように受け取っているからなのではないでしょうか？
　なぜなら、イエス様に仕えるとか、ついて行くとか、聞き従う、というのは、頑張る、ということとは、異なるからですね。(「頑張って」イエス様に従うというのは実は自我のわざなんです)
 
お一人の方を最後に紹介してこの説教の結びとしたいと思いますけれども、クリスチャンの医師でありました、聖路加国際病院で長く医師を勤めて来られた日野原先生のことです(これは、この方のような立派な働きをしてください、という意味ではないものとして聞いてください)。牧師の息子として生まれ、小学校二年生の時に洗礼を受けられたのだそうです。幼いころから聖書に親しんで来られました。
日野原さんは、1911年の生まれだったそうですけれども、1970年3月30日　早朝、羽田を飛び立った飛行機に搭乗していらっしゃいました。学会に行くために福岡に向かった飛行機です。
その飛行機、よど号はハイジャックにあいました。日野原さんは60歳手前でした。子供と65歳以上の人たちをいったん途中の空港に降ろして、その飛行機は日野原さんをはじめとする人たちを人質として、北朝鮮のピョンヤンに向けて飛び立ちました。実際には途中で、韓国の金浦（キンポ）空港に着陸させられたのだそうです。
そしてそのハイジャックをした人たちは　自分たちがピョンヤンに着いたら送り返されるから心配しなくてもよい。そう語って、しかしその間にはかなり時間があるから、今から読み物のリストを読み上げるから、そのリストの中から読みたいものがあれば、手をあげてほしいとアナウンスがあったそうですね。
日野原さんはその読み物どういうリストがあるんだろうかと思って、非常に関心をもっていた。リストが読み上げられても誰も手を上げなかったそうですが、最後の最後に、ロシアの小説家の、ドフトエフスキーという作家の、カラマーゾフの兄弟という作品があったんです。その本の名が上げられた時に、「ああっ」と思って、縛られていた両手をおそるおそる上げて、そのカラマーゾフの兄弟が膝の上に置かれました。そして、その本の扉を開けたところに。書かれていたことばが「一粒の麦死ななければただ一粒のままである。だが死ねば多くの実を結ぶ」ということばだった。
3泊4日、生死を思いながら、この時このことばが傍らに会ったそうです。
結果的にはハイジャックをした人たちの計画は頓挫することになって、日野原さんは自宅に戻られました。
その後「ゆるされた第二の人生が多少なりとも自分以外の人にささげられたらと願ってやみません。いつの日かいずれかの場所でいずれかの人にお返ししたいと思います」というそういうことばの挨拶を返されたそうです。
日野原さんは　この時の変化について語っておられるんですね。この「一粒の麦ということば」を、カラマーゾフの兄弟のあの小説を読みながら、ずうっと味わっていた時の変化、その自分の内的な、そして外的な、そういう環境の中で新しい人生観、価値観なりを与えてくれた。この時の経験を回心と言っておられるんですね。
 
回心と言っても、自分の生き方を振り返って顧みて、自分が欠けていたこと、あるいは神さまの前には、はずれていた、そういうことを悔いて、そこから自分の生き方を変える、それを回心だと思っていることが多いかもしれませんが、この場合はそうではないんですね　そういう主観的な問題ではなくて、この時に出会ったのは、いのちの根源との出会い。目には見えないけれど自分の前に厳然としてあるいのちの根源のようなものと自分が出会う。死と隣り合わせの数日間を過ごす中で、いのちは自分のもので、そして自分の自由にできると思っていた、ところが、そうではなかったんだ。いのちの根源のような、その方が、私の命を囲んでいる。そしてその方に生かされていることがハッキリと分かった。そういう出会いのことを、ここでは回心と呼んでいるんです。
生きるか死ぬか分からないような、そういう時に、恐るべき方と出会った、そのような体験を、皆さんそれぞれにお持ちなのではないでしょうか？そういう体験をしているならば、おのずと、儚い地上のプシュケーの命を保つことにはそれほど執着しなくなり、まことのいのちの方に向かっていくのではないでしょうか？それがここで言う回心なんです。神様のいのちの方に向かっている。そういう者は主イエスに仕えるということを、―日々のつとめや家事においても―すでにしているのではないでしょうか？そういう姿を、父はその人を、あなたを重んじていてくださって、愛してくださっています。
 
お祈りいたします。
恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神
あなた様がこの世界にお送りくださったひとり子主イエス・キリストは、一粒の麦となられました。その命を地に落ちさせ、そしてそれによって黄金色の一面の麦畑をこの世界に実現させなさいました。国や民族の壁を超えて、世界中にあなた様の救いは広がりました。どうか一人も滅びるのを望みたまわないあなた様が、人々をご自身のもとに引き寄せて下さいますように。私たちの小さなわざも、そのために用いてくださいますように。主イエス・キリストの御名によって祈り願います。アーメン。