📗昨日の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️
🌏礼拝メッセージ『創られたものすべての共同体と永遠の契約』
旧約聖書　創世記第9章1～17節　2024年2月18日
�1神はノアとその息子たちを祝福して、彼らに仰せられた。「生めよ。増えよ。地に満ちよ。�2あなたがたへの恐れとおののきが、地のすべての獣、空のすべての鳥、地面を動くすべてのもの、海のすべての魚に起こる。あなたがたの手に、これらは委ねられたのだ。�3生きて動いているものはみな、あなたがたの食物となる。緑の草と同じように、そのすべてのものを、今、あなたがたに与える。�4ただし肉は、そのいのちである血のあるままで食べてはならない。�5わたしは、あなたがたのいのちのためには、あなたがたの血の価を要求する。いかなる獣にも、それを要求する。また人にも、兄弟である者にも、人のいのちを要求する。�6　人の血を流す者は、�　　人によって血を流される。�　　神は人を神のかたちとして�　　造ったからである。�7　あなたがたは生めよ。増えよ。�　　地に群がり、地に増えよ。」�8　神は、ノアと、彼とともにいる息子たちに仰せられた。�9「見よ、わたしは、わたしの契約をあなたがたとの間に立てる。そして、あなたがたの後の子孫との間に。�10また、あなたがたとともにいるすべての生き物との間に。鳥、家畜、それに、あなたがたとともにいるすべての地の獣、箱舟から出て来たすべてのものから、地のすべての生き物に至るまで。�11わたしは、わたしの契約をあなたがたとの間に立てる。すべての肉なるものが、再び、大洪水の大水によって断ち切られることはない。大洪水が再び起こって地を滅ぼすようなことはない。」�12さらに神は仰せられた。「わたしとあなたがたとの間に、また、あなたがたとともにいるすべての生き物との間に、代々にわたり永遠にわたしが与えるその契約のしるしは、これである。�13わたしは雲の中に、わたしの虹を立てる。それが、わたしと地との間の契約のしるしである。�14わたしが地の上に雲を起こすとき、虹が雲の中に現れる。�15そのとき、わたしは、わたしとあなたがたとの間、すべての肉なる生き物との間の、わたしの契約を思い起こす。大水は、再び、すべての肉なるものを滅ぼす大洪水となることはない。�16虹が雲の中にあるとき、わたしはそれを見て、神と、すべての生き物、地上のすべての肉なるものとの間の永遠の契約を思い起こそう。」�17神はノアに仰せられた。「これが、わたしと、地上のすべての肉なるものとの間に、わたしが立てた契約のしるしである。」

　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。
　この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。

　今日は動植物の話からエコロジーの話で始めたいと思いますが、ある神学校の授業で、神学校の教授が、神学生たちに質問をしました。「神さまは、何のために、動物をお創りになったと思いますか？」ある神学生は答えました。「人間が食べるためです」
　この質問に、皆さんはどんなふうにお答えになるでしょうか？私たちは、別にその神学生の答えを笑いものにはできないと思います。なぜなら、今日のみことばの中で、神様が、動物の肉を食べることを許可しておられるからですね。「生きて動いているものはみな、あなたがたの食物となる」神さまが、大洪水の後に、方舟から出たノアに、そう語りかけておられるからですね。
　この箇所から、この時点から肉食が始まったんだ、と言われることがあります。その根拠は、創世記の第1章のアダムとエバが作られた時には、草と木の実を、食物として与えると神さまはおっしゃっていただけだったのに、ここで初めて鳥や魚や動物の肉を食べてよろしいと神さまがお語りになったことが記されているからです。ただ、それまで人類は全く菜食主義で、肉は一切食べなかったのか？実は肉食はあったけれども、ここで初めて正式に神様から許可のことばが出たのかは分かりません。どちらにも取れると思いますけれども、いずれにせよ、動物は家畜にすることも含めて、人間のために存在しているのだ、そして、植物も地球環境も同じように、人間の為に存在しているのだという価値観が、特にキリスト教神学と、その影響を受けた欧米諸国では長い間強かったと思います。創世記第1章28節にこうあります。

神は彼らを祝福された。神は彼らに仰せられた。「生めよ。増えよ。地に満ちよ。地を従えよ。海の魚、空の鳥、地の上を這うすべての生き物を支配せよ。」
　
　こういうところからがよく引用される箇所なのですが、ここ数十年は、この聖書の箇所も含めて、キリスト教会は、エコロジーの文脈から、批判を受けているんですね。キリスト教会は、聖書にこういうことばなんかがあるもんだから、エコロジーへの取り組みが遅いどころか、むしろキリスト教会は環境破壊に加担してきたんだ、というんですね。
　その批判は、その通りの部分がありますし、真摯に受け止めなければならないことだと思います。そこで、教会は、環境破壊に加担してきたことへの反省があって、「地を従えよ」「生き物を支配せよ」と言っても、それは好き勝手に支配して良いということではなくて、自然界の管理者としてクリスチャンは責任を神さまから与えられているんだ、という姿勢に改めたんですね。皆さんは、教会用語での、スチュワードシップ、というのをお聞きになったことがあるでしょうか？スチュワードっていう英語は、昔、客室乗務員のことをスチュワーデスと呼んだように、管理を意味するんですね。
　スチュワードシップとは、神さまから預かったものを、良き管理者として用いるクリスチャンの姿勢のことを言います。時間とか体とか才能とか財とかそういうものですね。これが被造物、と言って神の造られたものを指す場合、神さまから預かった、自然環境や動植物を管理する使命をいただいているのだ、しかもこれはかつてより見直して、細やかな感情や思いやりをもってすることであって、動植物や環境に対するお世話や奉仕の一つの形なのだ、と、こういうスチュワードシップに修正されて来たんですね。

　ところがこれ、最近スチュワードシップという考え方でも、不十分だということが、分かってきました。このキリスト教会のスチュワードシップというのをですね、ジェームズ・ラブロックという、地球環境と温暖化を研究していらっしゃる科学者の方が厳しく批判しているんですね。
　ジェームズ・ラブロックは、ガイア仮説という仮説を立てました。最近の研究で、地球は実は、多くの動植物の生態系がもう複雑に複雑に絡み合って、まるで地球全体が一つの生物であるかのように、―これはもちろんたとえなんですけれども。地球が生物なわけはありません。けれども―１個の生物であるかのように、気候を自動で調整する「気候調整システム」のようなものを備えている、っていうことがだんだん分かって来たんですね。
　このところ、今時々寒い日がありますけれども、もう3月くらいの気候ですよね。三寒四温じゃなくて、二寒五温なんて言われていますよ。なんか今年は、冬が一か月くらい少ないような気がしません？温暖化の影響でしょうか？去年から「地球温暖化時代は終わりました。地球沸騰時代に入りました」なんて言われていますけれども、ラブロックによれば、気候の自動調整システムが、人間があまりに環境破壊をしすぎて来たので、働かなくなりつつあるとラブロックは言うんですね。
　科学者ラブロックが、なぜキリスト教会のスチュワードシップがダメだと言っているかというと、それは、無意識な不遜さがあるからだ、っていうんです。この恐ろしく壮大で複雑で、おそらく人間が将来も決して知ることの出来ない自然界全体は、人間ごときが管理者になれるものではない、っていうんですね。
　イギリスの神学者であり哲学者でもあるクレア・パーマーも同じことを言っているんですね。「人間はそれらのことを理解することも予測することもできない」って。
　それならば、この創世記第1章28節も、人間が神さまから管理者として任されている、というスチュワードシップという考えは、改めるべきではないか？ということで欧米では、もうスチュワードシップとは言わずに、被造物ケア、と言うようになっています。被造物ケア。管理ではなくてもっと抑制的に、謙虚に見直すべきだということですね。実はそのことを詳しく書いているのが、リチャード・ボウカムという神学者です。彼は「聖書とエコロジー～造られたものすべての共同体を再発見する～」という本をお書きになっています。
　ボウカムは、ここのヘブル語に注目するんですね。「地を従えよ」とか「生き物を支配せよ」ということばは、これは日本語の翻訳としても全く合っているんですけれども、これが、従えよ、ということばも、また支配せよ、ということばも、人間に対しては暴力的あるいは力ずくあるいは上からのニュアンスが出て来るんですけれども、土地に対しては、あるいは動植物に対して使われる場合には、むしろ暴力性や力ずくや上からのニュアンスは必ずしもあるわけじゃない、っていうんですね。むしろ配慮と憐みをもって、土地や動植物をケアしなさい、というニュアンスになるわけですね。
　これまでの、キリスト教神学の、神と、人間と、被造物の関係はこうでした。(指で描いて指し示す)神↓人間↓被造物。ところがこれは今では見直されていて、神↓(そして)人間を含む被造物世界全体という、まさしく、神学者ボウカムが、～造られたものすべての共同体を再発見する～と、この本のサブタイトルに付けたように、共に地球を生きる仲間として、彼らをケアする責任を私たちは負っているのだ、という、こういう理解なんですね。
　そうしますと、この創世記第9章の見方も変わってきます。だからと言って、皆さんが菜食主義やヴィーガンにならなければいけないということではありません。確かに、創世記第9章で肉食が容認されています。アンドリュー・リンゼイという神学者が「神は何のために動物を作ったのか？～動物の権利の神学～」という本を書きまして、―最初の質問に戻りますけれども、神が動物を創られたのは、人間が食べるためじゃなくて、動物自身が存在の目的だって言うんですね。動物をことさらに低く見るこれまでの神学は、実はデカルトの影響を受けています。デカルトは、動物を心の無い機械のようにみなしていますが、最近の研究でどんどん、動物には心があることがわかってきているんですねー神学者リンゼイはクリスチャンの菜食主義をお勧めしていますけれども、でもイエス様ご自身が、復活の時に、焼き魚を召しあがっていますね。ですからちょっとリンゼイの説は、多少無理があるような気がします。
　いずれにせよ、創世記第9章でも、昔の神学による取り方だと、動植物をいくらでも好きなように搾取して良いかのように取れるかもしれませんけれども、やはりボウカムの、「造られたものすべての共同体」というのが、実は今日の創世記第9章に見事に現れているんですね。(本当は9節から読んだ方がいいんですけれど)少し短くして12節から16節をもう一度お読みします。

12さらに神は仰せられた。「わたしとあなたがたとの間に、また、あなたがたとともにいるすべての生き物との間に、代々にわたり永遠にわたしが与えるその契約のしるしは、これである。�13わたしは雲の中に、わたしの虹を立てる。それが、わたしと地との間の契約のしるしである。�14わたしが地の上に雲を起こすとき、虹が雲の中に現れる。�15そのとき、わたしは、わたしとあなたがたとの間、すべての肉なる生き物との間の、わたしの契約を思い起こす。大水は、再び、すべての肉なるものを滅ぼす大洪水となることはない。�16虹が雲の中にあるとき、わたしはそれを見て、神と、すべての生き物、地上のすべての肉なるものとの間の永遠の契約を思い起こそう。」

　つまり、ここはノア契約とか、虹の契約とか言われて、神さまとの人間の契約と理解されることが多いです。これは私たち人間と神さまが契約を結んでくださったことは間違いありません。けれども、今までの言ってみれば人間中心主義的だった神学の枠組みでは、見落とされがちな造られたものすべての共同体と、神との契約、ということなんですね。
　この造られたものすべて、被造物全体の救いというのが、実は新約聖書で語られているんですね。パウロが書いたローマ人への手紙第8章19～22節をお読みします。

新約聖書　ローマ人への手紙第8章19～22節�19被造物は切実な思いで、神の子どもたちが現れるのを待ち望んでいます。�20被造物が虚無に服したのは、自分の意志からではなく、服従させた方によるものなので、彼らには望みがあるのです。�21被造物自体も、滅びの束縛から解放され、神の子どもたちの栄光の自由にあずかります。�22私たちは知っています。被造物のすべては、今に至るまで、ともにうめき、ともに産みの苦しみをしています。

　つまり、動植物を含めたこの世界全体が、救われることを待ち望んでいるんだ、ということですね。それは、実は、旧約聖書でも、預言者イザヤが語っているんですね。イザヤ書第11章6～9節をお読みします。

旧約聖書　イザヤ書第11章6～9節�６　狼は子羊とともに宿り、�　　豹は子やぎとともに伏し、�　　子牛、若獅子、肥えた家畜がともにいて、�　　小さな子どもがこれを追って行く。�７　雌牛と熊は草をはみ、�　　その子たちはともに伏し、�　　獅子も牛のように藁を食う。�８　乳飲み子はコブラの穴の上で戯れ、�　　乳離れした子は、まむしの巣に手を伸ばす。�９　わたしの聖なる山のどこにおいても、�　　これらは害を加えず、滅ぼさない。�　　主を知ることが、�　　海をおおう水のように地に満ちるからである。

　こういう壮大な預言というかヴィジョンを、イザヤは語っているんですね。ある方は、こんなことありっこないと言っていました。だって自然界は弱肉強食でしょ？って言っていました。でもそれは、これが何を言っているのかを知らなければ、もちろん「あり得ない」ということになるわけですけれども、ここの箇所の一番良いと思われる解釈は、これは新天新地の幻だっていうことなんです。ヨハネの黙示録に記された、新しい天と新しい地の光景というものですね(黙示録第4章3節にも天上の礼拝が描かれていて、そこには虹があったと書かれています)。ひらたく言えば天国と言い換えてもいいんですけれども、私たちがやがて行くところですね。確かに地上では弱肉強食ですのであり得ないけれども、天国ではあり得るわけですね。これは何を意味しているかというと、天国では、動物同士、また動物と人間が、食べたり食べられたり、襲ったり襲われたり、というのが全く無くなって、完全な調和がある。神のシャロームがある、と言い換えてもいいでしょう。神の平和ですね。そんな天国の素晴らしい光景です。
　たまに、質問されることがあるんですね。ペットも天国にいるの？って。それは、先ほどのパウロのローマ第8章の、被造物全体が贖われる、つまり、造られたものすべての共同体が救われることを待ち望んいることからも、また、イザヤ書第11章の天国の幻の中でも、天国に動物たちがいることは確実だろうと、思われるわけですね。
　またマルコの福音書の第1章13節をお読みします。

新約聖書　マルコの福音書第1章13節�13イエスは四十日間荒野にいて、サタンの試みを受けられた。イエスは野の獣とともにおられ、御使いたちが仕えていた。

　マルコは荒野の悪魔サタンの誘惑を、ごくごく短く書いています。どんなささやきがあったかを全部省いていますね。けれど注目すべきは、マルコは、他の福音書の記者は書かないんですけれども、イエス様が、野の獣と一緒におられたということを書くんです。これはどういうことでしょうか？
　これは一つの解釈は、荒野に危険な野獣がいっぱいいたんですけれども、御使いたち、つまり天使たちが仕えていたというのは、天使たちが危険な野獣からイエス様を守ったんだ、という説が一つ、もう一つはですね、―これは最近の説だと思うんですけれども―悪魔に誘惑されたんだけれども、しかし終末的なシャロームがここであったんだという解釈ですね。
　つまり、獣たちがイエス様と一緒にいたんだけれども、天使たちも一緒にいて、獣たちと、完全な調和と平和があった。マルコはマルコの福音書の第1章を何の文脈で書いているかというと、イエス様がもたらしたのは、神の国の到来だという一本の筋で書いているわけです。その神の国の到来は、新天新地までつながっているものなんですね。つまり、イザヤ書の第11章のあのイザヤが見た幻が！その荒野で、一部だけでも、この動物たちとの調和と平和を含めて、イエス様のもとで実現していたんだ、ということなんですね。（この獣って訳されていることばは、蛇も含むんだそうですね。まさにイザヤ書の幻でしょう。）

　そして、契約の方に戻りましょう。ノアと神さまが結んだ契約ですね。これがのちに、アブラハム契約、そしてモーセが山の上で十戒を授かったシナイ契約、そしてダビデ契約と繋がって行きますけれども、皆さん、聖書の神の契約は、どんなものだったでしょうか？
　契約、私たちの社会には、契約がたくさんあります。保険の契約、携帯電話の契約、自動車の購入とか、賃貸契約もありますし、雇用契約もありますね。甲と乙があって、対等な関係として契約を結びます。しかし一方が契約を破ったら、何らかのペナルティがあったり、契約破棄ということもあり得るわけですね。
　けれども、聖書の神の契約は、一方的で無条件。これが驚くべきことなんです。一方的と言ったら暴力的な感じがするかもしれなんですけれども、そんな一方的に決めて、というふうに文句が出るところなんですけれども、別の言い方すれば片務的と言ったらいいでしょうか？片方だけが義務を負うんです。この場合、ノアさんとその家族は、この契約で、何か義務を負ったでしょうか？
　なんにも負っていませんよね。ただ一方的に恵みと祝福と守りと権利を与えるという契約なんです。そして神の側から契約を破られることは絶対に無い、ということなんですね。人間がどんなにこの先、神さまに背を向け続けても、神の側は人間を愛し続けるという、そういう一方的な契約なんですね。つまり神の側だけが、多大な多大な義務を負ってくださるわけです。
　そして、その契約のしるしが、契約書やハンコではなくて、虹だっていうんですね。虹、これはロマンティックですね。綺麗ですね。虹を見ると、皆幸せな気持ちになると思います。虹を見たら腹が立ってくる！という人はなかなかいないと思うんですけれども、なぜ虹なんでしょうか？
　この虹と訳されていることばは、実は、「弓」っていうことばなんです。旧約聖書で、他のところで出て来る場合には、弓って訳しているんですね。戦いの時に使う弓です。でもここでなぜ虹と訳してあるかと言うと、雲の中に弓を立てる。もうお分かりになっているかと思いますけれども、英語で虹のことをレインボウと言いますよね。レインというのは雨、ボウというのは弓ですね。雨あがりに出る弓のような形をしたもの、これがレインボウ、虹なんですね。それと同じで、いやそれのもととなった言い方なのかもしれませんけれども、雲の中の弓と言ったら、あの綺麗な虹である、とこの文脈から判断して訳しているわけですね。でもやはり美しい光景というニュアンスではなくて、ここでは戦いの弓、攻撃の弓というニュアンスが、確かにここにはあるわけですね。なぜ攻撃のニュアンスがあるのでしょうか？
　それは、このすぐ前に洪水があったからですね。人間の罪があまりに大きく広がったので、神さまはそれに胸を痛めて悲しまれて、悲しみと怒りのゆえに人類全体を滅ぼすほどの大洪水を起こされた。けれどもここで、神さまが全ての生き物を滅ぼさないと決心なさったのは、第8章の終わりで、「人の心が思い図ることは、幼い時から悪であるかだ」と、(ノアのような無垢な神に従う人がいたからではなくて、)これからは人間が悪であるにもかかわらず、愛し続けることを決心してくださった！だから、人間に向けていた弓矢を、置いてくださった、ということなんです。
　さらにこういうふうに言えるかもしれません。虹のあのアーチが弓であるとして、そこに弦が張られ、そこから放たれる神の怒りの矢はどこへ向かっていくかと言うと、それは天に向かっていくのです。その天に放たれた矢は、神様に向かいます。神様ご自身のひとり子イエス・キリストが、その放たれた矢に貫かれている。そんな光景を、思い浮かべることができるのではないでしょうか？その矢は、やがて槍となって、十字架におかかりになった主イエスのわき腹を突き刺し、水と血がそのお体から流れ出ました。血とお聞きになって、何かを思い出さないでしょうか？そうです。イエス様は、「あなたがたに新しい契約を与える」と言ってくださいました。それは、「わたしの血による新しい契約である。」「多くの人の罪のために流されるものです」と言ってくださいました。それは、繰り返し行われる聖餐式でもあります。
　またもう一つ、血と水が流れ出たとあります。今日、実は、世界共通の聖書日課では、ペテロの手紙第一、第3章が選ばれています。その20節21節だけを読んでみましょう。

新約聖書　ペテロの手紙 第一　第3章20節後半～21節前半

その箱舟に入ったわずかの人たち、すなわち八人は、水を通って救われました。�21この水はまた、今あなたがたをイエス・キリストの復活を通して救うバプテスマの型なのです。

　バプテスマ、洗礼のことですね。つまり、ノアたち8人が大洪水の水を通って救われたのは、―型っていうのは、あらかじめ表したもののことです―洗礼をあらかじめ表す型だったっていうんですね。
　そして今日の聖書日課でもう一つ読まれる福音書の方は、マルコ第1章の、またバプテスマのヨハネが登場する、ヨルダン川でイエス様が洗礼を受けられるシーンです。これまで何度もお読みした箇所ですので、時間の関係で今日は朗読はいたしませんけれども、これも水を通る、そして私たちもイエス様にならって洗礼を受ける。これは、イエス様の新しい契約に入る、っていうことでもあるんですね。
　なぜこの箇所が選ばれているかというと、レントに入りました。この間に、イースターに洗礼を受ける人は、洗礼の準備に入るからなんだろうと思いますけれども、ともにかくにも、私たちが信仰告白をして洗礼を受けました。あなたの罪はゆるされて、永遠のいのちが与えられ、天の御国が約束されました。こうして神との新しい契約関係に入ったということは、実はこの、被造物全体の救いと関係がある、この壮大なスケールのものである、ということなんです。
　やがて、この被造世界全体が救われるわけですから、その時まで、いわば被造世界全体をケアするという喜ばしい使命をいただいているんです。神と隣人を愛します。今日の創世記第9章6節に、

６　人の血を流す者は、�　　人によって血を流される。�　　神は人を神のかたちとして�　　造ったからである。

　とあります。人の命を奪ってはいけない理由の原点はここにあります。人の血を流す殺人や戦争や虐殺がだめなのは根源的にこの理由です。それは、ここで主が言っておられる通り、神のかたちとして造られた尊いいのちを損なうことだからです。さらに、殺されなければいいということではなくて、人権を侵害されたり、圧迫や迫害や搾取をされている、弱者とされている人びとや、マイノリティとされている人びとを弁護し、できるだけ守り支え、彼ら彼女らのために祈りろうではありませんか。(また私たち自らのうちにある差別意識や内なる優生思想とも戦います)
　そうして人を愛するだけではありません。動物たちをも愛します。動物たちを意味なく殺さないようにしますし、捨てられたり殺処分される不幸なペットを増やさないようにしましょう。さらには地球環境をできるだけ破壊しないように、かえってその環境にプラスになるようなことを模索して行動して行こうではありませんか。
　そのようにして、主が再び来たりたもう日まで、福音を宣べ伝え、また、造られたものすべての共同体と共に、歩んで行こうではありませんか。

お祈りをいたします。
恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神
あなた様の契約は、なんと広く深いことでしょうか。私たちは、その契約の確かさ、あなた様が絶対に裏切らず、かえって私たち人間の愚かさのゆえに何度も契約を更新し、ついには御子イエス・キリストをお送りくださり、御子の血による新しい契約を与えて下さいました。なんともったいないことでしょうか？けれどもこの契約は、人との契約だけではなくて、被造世界全体に及ぶものだと、私たちはあまり気が付いていませんでした。イエス様の血潮によって人間が贖われたら、動植物も、この世界も、終わりの日に、新しくされます。その日まで、造られたすべてのものの共同体を、ケアして行く使命に、忠実に生きさせてください。主イエス・キリストの御名によって祈り願います。アーメン。

#エコロジー #被造物ケア