花の散歩道

普段何気なく歩いている駅までの道。駅へ行くときだけではないが、多くは駅まで歩くときに通る道。アスファルトが敷き詰められたその道は、左右両脇等間隔に木が植えられている。緑を感じる。そこはいつも歩いていて心地いい風が吹いているような気がしてくる。右手には小学校があり、もう少し進むとプラネタリウム付きの図書館が見えてくる。小学校から図書館へ抜ける道には、左手に小規模な池がある。池には立派な鯉が何匹も泳いでいる。その向かいには小川があり、カメが3匹住んでいる。顔の横に赤い模様が入っている。調べるとミシシッピアカミミガメというらしい。名前が可愛い。つい声に出して言ってみたくなる。ミシシッピアカミミガメ。やはり外来種であり、無闇に別の場所へ移したり、家に持ち帰ることはやめておいた方がいいらしい。彼らは3匹いるはずなのに、甲羅干しの時は決まって2匹で同じ方向を向いている。理由はわからないけど、自分の見た限りでは必ず2匹だ。その甲羅干しをしている姿はすごく可愛くて、猫が日向ぼっこをしている時のそれと一緒だ。子供たちもじっとそれを観察して、絵を描いたり、写真を撮ったりしている。穏やかな光景。

そんな道を歩くのが好きだ。忙しなく過ごしていて会社へ向かう朝も、疲れ切って帰ってくる夜も、そこを通るだけで気持ちが少し穏やかになっている気がする。仕事の事が頭から離れず、ストレスを溜め込んでいる、ずっと吐き気を催している状態。そんな時でも少しラクにしてくれる。そんな道。やはり人間にとって自然は大切なのだろう。自然的であり、かつ可愛がれる存在がいることも大切なのだろう。心の依存先を分散させておくのが大事らしい。しかも他人ではなく物や場所がいいのだという。確かに人はその日その時の気分に左右されたりする。流動的な気持ちを持っている人間より物や場所を心の拠り所としていた方が安定感はある。だからと言って他人に対して寄り添うのをやめるという訳ではない。依存はせず、お互い良い距離感でいられることが重要なのだろう。

でも何だかんだで周りの人々への悩みや心配事は尽きない。考えが違う。好きなものが違う。歩く速度も違う。少し気を使ってしまう。みんなそんな事を少しでも悩んでいたりするのだろうか。人それぞれ違うのは当たり前で、認め合ったりしながら一緒に過ごしていきたい。罵り合うことなどせず、好き同士として歩いていきたい。「この本良かったよ」とか「あそこのハンバーガー美味しかったからまた行こうよ」って具合に共有したりして。そんな事を話しながら、ゆっくり、カメたちの甲羅干しを立ち止まってみたりしながら、花の散歩道を歩きたい。

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