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生きているだけで価値がある

会社を出て、最寄り駅に向かう道を歩きながら、『あなたは生きているだけで無条件に価値があるんだよ』と私に言ってくれる人って、果たして世の中にどれくらいいるだろうか? とぼんやりと考えていました。

"無条件に"となると、妻と息子、私の両親、の4人くらいかもしれません。私のことを理解して長年付き合ってくれている昔からの友人や、特段の利害関係がない寛大な人達も、言ってくれる可能性はあるかもしれませんが、単なる仕事仲間や知人にそこまでを期待しても無理でしょう。

私が相手に何か価値のあるものを提供し続けられる人でない限り、そういう言葉を得られることはないでしょう。いや、仮に自分が提供していたとしても、そう思ってもらうことは難しいでしょう。それは、別に悲しむべきものでもない話です。

身を置く世界が広くなればなるほど、人間関係も薄く、細くなっていくものなので、割り切って考えた方がいいでしょう。私自身は、できるだけ多くの人に『あなたは生きているだけで無条件に価値がある存在なんですよ』と言える、寛容で、心の広い人間を目指していきたいと思います。しかし、同じことを他人に強要するものではありません。

なんでこんなことを考えたかと言うと、今ニュースになっている、大規模詐欺集団が主催する忘年会への『闇営業』を斡旋していたとして、所属する吉本興業を解雇された、お笑いコンビ、カラテカの入江慎也氏のことを思ったからです。

『友達5,000人芸人』と言われ、幅広い人脈が話題となっていた入江氏は、人付き合いの苦手な自分とは真逆のキャラクターで、よくもそんなに広い人間関係を維持できるな、人たらしってスゴイ才能だな、と思っていました。

人に好かれる為には、
● 人の懐に飛び込んで可愛がられる能力
● 相手を不快にさせず、自尊心をくすぐる気配りの能力
● 出会いを長く引っ張れるまめな行動力
を持ち合わせていないと、そういう芸当は出来ないだろうと思うからです。入江氏の人と仲良くなる才能は凄いんだろうな、と思っていました。

では、社交のプロのどこに落とし穴があったのでしょう? 本人はこんなことになるなんて思ってもみなかった筈です。人間関係を広げる能力には長けていても、深く関係構築すべき相手を選ぶセンスがなかったのでしょうか? あまりにも無防備過ぎたのでしょうか? 

今回の不祥事により、先輩芸人、後輩芸人を巻き込んでしまいました。謹慎処分となった13人の芸人さん達も、その経歴と社会的信用に大きな傷がつくことになりました。予期していなかった転落であり、悪夢でしょう。なぜ5年も前の話が今になって発覚したのか、など色々と疑問も多い事件ですが、生きていく中で、危険な話が至る所に落ちていることを痛感させられた事件でした。

禁じられている反社会的組織との繋がりを持ってしまったこと、『闇営業』というルール違反を犯してしまったことは、どう言い繕おうとも批判されて当然で、しっかりと社会的制裁を受けねばなりません。

ですが、それをもって、人間性を全否定するような言説や評価はいかがなものかという思いがあります。今回の騒動の当事者の方々には、『みなさん、生きているだけで無条件に価値がある人たちばかりです。どうかいつか再起を果たして下さい』と申し上げたいです。

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