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第50回全日本大学駅伝

私は、駅伝観戦歴37年の筋金入りの駅伝オタクです。今日もまた、妻から散々苦情を言われつつ、朝からテレビの前に釘付けとなってしまいました。

ご承知の方も多いと思いますが、大学駅伝の世界では、10月の出雲全日本大学選抜駅伝競走(通称 出雲)、11月の全日本大学対抗駅伝選手権大会(通称 全日本)、1月2-3日の東京箱根間往復大学駅伝競走(通称 箱根)を学生三大駅伝と呼びます。

最も歴史が古く、正月に行われることもあって国民的風物詩になった感のある箱根駅伝は、位置付け的には、関東の大学だけに参加資格のある関東大学駅伝競走(将来的には変わる可能性あり)であり、日本一の大学を決める大会は、熱田神宮〜伊勢神宮間の106.8㎞ 全8区間で争われるこの全日本大学駅伝です。

三大駅伝を同一シーズンで全て勝つことを"三冠"と言います。この三つのレースはそれぞれコースや区間配置の特色が異なっており、適材適所を任せられる分厚い選手層が求められます。近年は各校の実力が拮抗状態にあり、"三冠"を達成するのは至難の技となっています。今年の全日本の焦点は、先月の出雲を制した青山学院大学が二冠目を達成し、三冠に王手をかけるか、という点でした。

現在の大学駅伝界で最も有名な存在である原晋監督率いる青山学院大学は、目下、箱根四連覇中で近年最も成功しているチームです。今年のチームも飛び抜けた大エースこそいないものの、他校であれば十分にエースを張れるようなハイレベルな選手達が揃い、例年以上に選手層が厚い、隙の無いチームに仕上がっている印象です。8区間にエントリーされた選手を見ても、適材適所に人材がいるという感じで、四六時中、自チームやライバルチームの選手配置を考えていると言われる原監督だけあって、あらゆる状況を想定して、考え抜かれたオーダーを組んできたという印象でした。

「打倒青学!」を目指すチームでは、学生トップクラスの走力を持つ三人のエースに加え、中堅クラスの選手も充実している東洋大学、黄金世代と呼ばれる三年生に有力選手が揃う東海大学に注目が集まりました。東洋大学・酒井監督、東海大学・両角監督は、共に選手の育成手腕に定評があり、経験も豊富な名将です。選手起用にも両監督の描く作戦が如実に出ていて、なかなか興味深いものがありました。

東洋大学は後半の長距離二区間に上級生エース(山本選手・相澤選手)を残し、前半は勢いのある下級生(西山選手、今西選手)を配する布陣ですが、出雲のアンカーで好走した吉川選手とスピードのある渡邊選手がエントリーを外れた為、ベストメンバーとは言い難く、その分の戦力ダウンで優勝は苦しいかな…… との印象でした。

東海大学は、黄金世代の三年生の中でも爆発力のある關選手が2区、陸上日本選手権1500m二連覇の館澤選手が3区と、主力を前半に集めるオーダーで、前半で大量リードを築いて、青山学院にプレッシャーをかける作戦と思われました。

詳しいレース経過については、他のネットサイトで確認していただければと思いますが、王者・青山学院が、狙い通りのレースプランで、7区で先行する東海大学を逆転し、最後は2位以下に大差をつけて、貫禄勝ちしました。駅伝の勝ち方を知っているチームのレースでした。雨模様の比較的恵まれたコンディションの中のレースだった為か、全体的に大きな番狂わせやブレーキは少なく、4区では順天堂大学の塩尻選手、7区では日大のワンブィ選手、というスーパーランナーが格違いの走りを見せてくれました。

原監督が三冠の"鬼門"と言っていた全日本で、勝負強さを見せつけて勝ったことで、青山学院大学の箱根五連覇の確率は俄然高くなってきました。走る区間が10区間に増え、一区間毎の距離も延びる箱根駅伝では、選手層の厚さに加えて、特殊区間と呼ばれる箱根山中の5区(上り)と6区(下り)に適性のある有力選手がいるかどうかがポイントになります。

青山学院大学の特殊区間要員には、実績も経験もある竹石選手と小野田選手がおり、他校には大変な脅威となります。平地区間を走るであろう森田主将、橋詰選手、鈴木選手、梶谷選手、林選手なども他校のエースと全く遜色の無い実力者ですし、駅伝ではブレーキをしない安定感があります。新戦力としては、出雲、全日本の繋ぎ区間で連続区間賞を獲得した2年生の吉田(圭)選手が台頭してきており、下級生の次世代エースの育成も順調に進んでいるようです。レースに出ていない控えにもレベルの高い選手が多く、ここまで名前を挙げた選手の何人かを故障や体調不良で欠いたとしても、カバー出来るだけの豊富な戦力が整っています。

今回は2区に起用されたエース格の西山選手がブレーキ気味となり、流れに乗れずに完敗となってしまった東洋大学、前半は狙い通りだったものの7区を走った主将の湊谷選手が今ひとつだった東海大学ですが、両校とも今回欠場した有力選手が戻れば、青山学院に十分対抗出来る戦力がありますので、後2ヵ月で立て直して欲しいものです。駅伝オタクには、ワクワクする季節になりました。

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