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『400年の流れが2時間でざっとつかめる教養としての日本経済史』を読む

本日の読書感想文は、竹中平蔵『400年の流れが2時間でざっとつかめる教養としての日本経済史』です。

著者の竹中平蔵氏は経済学者が本業の学究の人ですが、小泉純一郎首相時代に、内閣府特命担当大臣(経済財政政策、金融)に抜擢され、長引く不良債権処理問題の解決に辣腕を振るった印象の方が強いです。

政治家時代の活動や人物像には賛否両論が相半ばする人であり、好き嫌いがわかれます。私個人は、小難しく勿体ぶった話し方をする学者然とした人が多い中で、弁舌爽やかに経済理論の難しい話を非常にわかりやすく説明する能力に長けている人、という印象があります。

本書では、日本経済史の解説に取り組んでいますが、難しい数式や理論の解説は最小限にとどめて、その時代を動かした人物の考え方や思想に焦点を当てて、とっつきやすそうな物語形式で進めています。

大変読み易く感じる本なので、経済学や経済史にさほどの素養がない私でも、本書のタイトルにもなっている2時間で読了することが出来ました。氏の好みが出ているのだと思いますが、徳川吉宗、松下幸之助、高橋是清、後藤新平、下村治といった歴史上の偉人の功績と人物像に多くの紙面が割かれています。

竹中氏の本はこれまでも良く読んでいますが、素直に「この人、頭いいんだなあ」と感心して終わることが多いです。平易さに騙されていたり、誤魔化されたりしているのかもしれませんが、説明や論理展開は私には「分かり易い」と感じます。

政治問題や経済政策にも積極的に発言されていて、時にその意見がポジショントークではないのかと批判を浴びることもあるようです。でも、現在の日本経済の正しい病状診断と処方箋を書ける数少ない人ではないかと期待しています。政治の世界で苦労した経験もあり、落とし所も弁えた現実的な手腕を発揮する感じもあります。

米国で学び、働いた経験から、新自由主義的な価値観は所々感じます。新自由主義的な価値観が余り好きではない私とは考えが合わない所もあります。それでも、主張は主張として理解できます。議論は議論として進めるべきで「竹中が気に入らないから意見に反対」という批判では上滑りと感じます。

本書の中では、卓越したリーダー(小泉首相)がボスだったので、思い切って手腕を発揮出来たというようなことも書かれています。基本的には、自らがリーダーとして君臨するというよりは、時の権力者のブレーン・影武者として本領を発揮した方が力を発揮できるタイプだと自覚されているのかもしれません。氏の本格的な論文も読んでみたいところです。

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