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買い手に「理解」を求めるな!?

多少乱暴な記事タイトルだが、丁寧に表現するなら「消費者の購買ファネルにおいて、“理解”のステップが飛ばされる場合が往々にしてある」ということ。

理解されないのに購買行動が起こる。この一見不可思議な現象を2つの心理学的理論を用いて紐解き、どんな消費者層がそのような行動を起こしたのか推測してみたい。

1つめの理論はペティ&カシオッポの『精緻化見込みモデル』。

精緻化見込みモデル
与えられた情報を処理する「動機」と「能力」によって、消費者の情報処理経路が2通りに分かれるという消費者行動モデル

2つめの理論はアサエルの『購買行動類型』。

購買行動類型
消費者の製品に対する関与水準とブランド間の知覚差異、それぞれの高低により購買行動タイプを4つに分類できるという考え方

この2つの理論から「理解されないのに購買行動が起こる」現象の真相を探る。

まず『精緻化見込みモデル』から。

・“理解されない”ため、図の左下の「認知構造は変化したか?」以下は消去
・“購買行動”は起こっているので、図の右下の「態度変容なし」は消去

そうすると、「周辺的態度変容(周辺ルートによって態度変容を起こした層)」が残る。

続いて『購買行動類型』を見てみよう。

・“理解されない”状態なので、「ブランド間知覚差異」は小さく、「製品関与」も低い

そうすると、「習慣購買型」が残る。

この結果から、「理解されないのに購買行動が起こる」現象の対象となる消費者は以下の特性を持つと推測できる。

<消費者特性>
●タレント、色彩、音楽。華やかさ、公正さ等のイメージで態度変容する層
●習慣・印象など、できるだけ楽な選択手法をとる層
●じっくり考えるより、とりあえず行動する層

今回は2つの理論から極めてシンプルに検証してみたが、同様な現象が見られた実際の案件でアンケート調査やグループインタビュー、購入ログ解析等を行って精緻に分析しても、やはり上記のような特性が見出されている。

ここで言いたいのは、「どんな説得手段で、どんな層が動くのか」を見定めることで“ターゲット”と“メッセージ”の方向性をある程度絞ることができる、ということ。無駄撃ちを減らして広告効率を上げるためにも、このような考察方法を取り入れてみてはいかがだろうか。

ちなみに、『購買行動類型』を提唱したアサエルは“周辺的態度変容層に有効な広告戦略”を明確に打ち出しているので、参考までに要点を紹介する。

<周辺的態度変容層に有効な広告戦略>
1.内容処理負荷の低い“テレビ広告”を主に用いる
2.メッセージの本質とは異なる要素を強調する
3.競合とコミュニケーション手法の差別化を図る
4.伝えるキーメッセージを厳選する
5.出稿範囲・期間を絞る(広げない)


(“マーケティング×心理学”note:マーケティングの「ま」。vol.001)

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