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CM効果向上のカギは「認知の仕組み」

突然だが、
下記A)~C)3タイプのテレビCMクリエイティブを“最も広告効果が得られる”と思われる放映順に並べてみてほしい。
※前提条件:各素材カブりなく1週間ずつ放映。CMで訴求する商材は、初めて市場に投入する新商品であり、3タイプとも同じ商材を扱う。GRP配分は均等

A)情報訴求型
内容理解重視
イメージ:情報=2:8
※情報を詰め込むのではなく、伝える要素を情報に寄せる(簡潔なキャッチコピーを打ち出す等)

B)バランス型
インパクト・明確さ重視
イメージ:情報=5:5

C)コミカル型
新奇性重視
イメージ:情報=6:4

並べられただろうか?
実際、クライアントからこのような相談は度々受ける。自社課題やコミュニケーション戦略に基づいて複数パターンのクリエイティブを作ったのだが、放映タイミングと量(GRP配分)が分からない、というのだ。

では、答え(=考察上の仮説)を導くために「記憶」に関する2つの理論を紹介したい。

1つめは、プライミング効果。

プライミング効果
先行してある事柄を見聞きしておくことで、後の刺激の処理を促進したり抑制したりする効果
関連ワード)活性化拡散、連想ネットワークモデル

このプライミング効果、身近な場面でもよく使われる。例えば、10回ゲーム。「ピザ」と10回言ったあと「ここは?」と肘を指さされると何故か「ひざ」と答えてしまう。ピザという音韻の先行刺激(プライム刺激)が認知に影響を与えたのである。

ただ、今回注目したいのはプライミング効果の“ある性質”。それは「プライム刺激によって与えられた情報は長期(数週間~数か月)に渡って残ることもある」というもの。一説によると、長期記憶の知覚表象システムに直接書き込まれ、新奇性の高いものほど効果も高いとされる。
※「記憶の二重貯蔵モデル」については、ここでは説明を割愛させていただく

2つめは、系列位置効果。

系列位置効果
順番に提示されたものを記憶する際に、提示順によって各項目の記憶の保持状態に差異が見られる現象

最初に提示された項目の記憶成績が高くなる現象を「初頭効果」、最後の方の項目の記憶成績が高くなる現象を「親近効果」と呼ぶ。同企業・同商品のテレビCMが3タイプあった場合、1本めのあとに2本めを見たら無意識もしくは意識的に1本めの内容を思い出す。つまり、1本めは繰り返し思い出されることになり、長期記憶として残りやすい。そして3本めは、最近見た新しい情報として一時保存される。2本めはというと、前後の影響を受けて印象が薄くなりがちなのだ。

では改めて、最も効果が高いと思われるテレビCMの放映順を考えてみよう。
前述の理論を根拠にすると、下記のようになる。

■回答
B)バランス型
インパクト・明確さ重視
イメージ:情報=5:5

A)情報訴求型
内容理解重視
イメージ:情報=2:8

C)コミカル型
新奇性重視
イメージ:情報=6:4

■解説
B)……“インパクト”で最初のアテンションを獲得。“明確さ”は、初頭効果を利用して正確な情報をインプットするため

A)……抑制効果を想定し、簡潔なキャッチコピーなどメッセージを絞って印象を残す(プライム刺激)

C)……新奇性により脱馴化・親近効果の強化を図りつつ、CMを通して伝えたい情報(プライム刺激)の再生を促す

もちろん、実際のクリエイティブ内容やGRP投下量・配分、線引き等々の要因を加味して熟考する必要はあるが、「消費者の中でメッセージがどのように認知されるのか」を知っておくことで、CMをより戦略的に活用できるようになるのではないだろうか。

(“マーケティング×心理学”note:マーケティングの「ま」。vol.002)

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