巨人にみるリーダー企業の陥落原因

巨人の4連敗で幕を閉じた今年の日本シリーズ(ソフトバンクvs巨人)において、両球団の差について多くの記事で取り上げられているかと思いますが、コトラーの競争地位4類型で見るとリーダー企業が気をつけなければならない点が見えてきます。
そして、巨人に必要なのはDH制の導入ではなく、もっと根っ子にある球団体質というか戦略体質であることも。

一昔前、日本球団の盟主と言えば巨人軍でした。これは誰もが認めることでしょう。
多くのプレイヤーが巨人に入ることを憧れとし、選手へ支払う年俸においても突出していました。
他球団に関しても打倒巨人を抱え、それが日本球界全体を盛り上げていったことは誰もが疑わないところだと思います。
それ位、圧倒的な存在であったと言えます。

それから少し時が経ち、
王監督が巨人を離れ、ダイエー(現ソフトバンク)の監督に就任してから、大きな流れがゆっくりと変わってくるようになります。

ソフトバンクは大きな資金力と戦略性から、グイグイと力をつけ、巨人を脅かす資本と独自性を持つチャレンジャー企業に成長します。
3軍制を取り入れ、日本代表となる選手を輩出するなど育成を強化したことは有名ですが、巨人はと言うと、ソフトバンクに追随しする形で3軍制を導入したりと模倣化戦略を取ります。

リーダー企業としては、チャレンジャー企業以下が実施して有効だと思ったことを真似するこれら模倣化戦略を取り入れるのは王道ですが、見た目のハードな部分は真似が出来ても、それに至った戦略性つまりソフトな部分というのはなかなか真似できないものです。

加えて、
短期的な成績がいつも求められる空気感、
オーナー・監督の支配力
も相まって、改善策が短期的視点になってしまうことがウィークポイントなのかもしれません。

施策はいつも短期的で、
勝つために強豪チームからFAで戦力を引っ張り、競合を弱体化させると共に自身のチーム力を強化する。
3軍制を代表するように、他社の模倣化を図りリーダー企業の差別化戦略を子もティティ化して中和する。
FAで補強するため、若手選手のモチベーションが低下する。
支配者が強すぎるため、YESマンに固められ、短期的な視点以外の長期的な視点や戦略的視点からの意見が上がってこない。

といった事がここ10年以内に巨人を取り巻く環境として起きていたことが予想されます。

そういったところから、リーダー企業としての資本量はあっても独自性が失われ、リーダー企業からチャレンジャー企業に陥落したのではないかと思います。

現在、資本の量もあり独自性のある球団はソフトバンクで、巨人に変わってリーダー企業に座っているのが私の実感です。(巨人は現在はリーダー企業ではなくチャレンジャーに)

巨人が再度リーダー企業に復帰するのは、DH制を導入することでもなく、FAでさらなる補強をするわけでもなく、ソフトバンクにない経営資源の独自性を生み出してソフトバンクをリーダーから引きずり落とす戦略を取る以外にはないように思えます。

ただ、球団のTOPの意見を見る限りは、これらの戦略的視点の意見は現状見受けられず、かつての盟主は「DHがないからセ・リーグが弱いんだ」と発言し、その弱さを世間に晒している。
視点・企業文化が改善されなければ、しばらくこの地位は続くだろうなと思う次第です。

緩慢なリーダーは陥落するという例なのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?