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『今夜すべてのバーで』改め、『今夜奈良の立ち飲み屋で』

知識を偶然得る事

敬愛する故・中島らも氏が言っていた「何かの拍子にある知識を得る偶然」が好きです。
しょうもない独り言ちですが、徒然なままに。

デカい態度とは裏腹に、小心者で気にしいな私。人を誘ったことや連れてった先が、果たしてよかったのか?とか、この選択はあっているのか、とか、けっこうあとからグジグジ悩んじゃうことが往々にしてある。(うっとーしー性格!)

先日カメラ友を奈良に案内した。その時最後の訪問地を薬師寺にしたことがカメ友にとって良かったのかちょっと悔いていたんですね。
平城京最古の建築物というわりに、重ねた改修で近代的だし・・。
楽しめてるかなあ、とちょっと気にしながら散策。
友人と
「お寺なのに、お墓がなかったね」
「聞いたことない不思議なお経だったね。葬式で聞くような、南無阿弥とかな言ってなかったね。なんの宗派なんだ?」
などと、たまたま巡り合わせた、年に1回の法会のありがたみも良くわかってないまま 奈良を後にしました。

奈良再訪&立ち飲み屋へ

2週間後の先日。奈良の紅葉を撮り足りなかった私は単身また大和の地へ。
夜飯がわりの日本酒の立ち飲み店でたまたまお隣になった、地元の気さくなおじさまと会話が弾む。
なんでも、定年後に、若いころ学んでた芸術分野を生かして郷土史家や観光ガイドになりたく、休日は奈良について勉強中なのだとか。

「今日はね、薬師寺にお経の研究会に行った帰りに飲みに来たの」

とのこと。
 先日友人と訪問したと言ったら

「お墓のない不思議な寺でしょ??」

おっと、答えがむこうからやってきた。

なんでも、天武帝の頃に国家鎮護・疫病退散の為に作られた寺で、檀家制度や葬式などができるはるか以前のものなので、お墓もなければ、経も私たちの馴染みのある念仏ではなく漢文で書かれた哲学書に近いものらしい。そりゃ、耳なじみないわ。

「これがね、今日の勉強会で使ってる本」

と分厚い経典を見せてくれる。2週間前耳で聞いたものが、活字で目の前に現れる不思議。

あの時薬師寺を選んだことが、なんだか誰かに正解!と言ってもらえているような気分になって、2週間前のモヤモヤが消えていきます。

その後も、私の興味ある分野の奈良談義に、全部対応可能な、郷土史家のたまごさん。
古墳から、古事記、万葉集、寺社に仏像、万世一系のこと、日本酒の起源まで、教養をひけらかすのではなく、二人で知識のフロート上で会話しているような、私の頭の中の知識の切片同士が、おじさんからの知識で紐で結ばれていくような、心地よく不思議な感覚の2時間半でした。
立ったまま2時間!!
そして、しっかり立ち飲み屋の閉店までいて最後の客となりました(笑)

会話の最後、おじさんが学んだ大学の話になった。

「大阪芸術大学」

中島らも氏の母校だ。

この出会いは「正解!」と、らも氏に言われているような、そんな夜。
『今夜すべてのバーで』ではなく、『今夜奈良の立ち飲み屋で』でした。

近鉄奈良駅改札前にある、酒蔵直営の「豊祝」機会あれば是非どうぞ。
アテも安くて美味しく、おすすめです


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