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今日の単語帳 スマートシティの現在

こんにちは。昨今注目されるスマートシティですが、現在のスマートシティがどうなっているのかについて、みていきたいと思います。

スマートシティが国策として推奨されはじめ、多くの民間や自治体が動き始めています。デジタル技術を使ってエコロジカルで持続可能な街の実現を目指すスマートシティ。その技術的な柱はIoT、ビッグデータ、AI、自動運転やMaaS(Mobility as a Service)、そしてロボットです。ロボットとスマートシティはどのように関わっていくのでしょうか。

 「スマートシティ」の代表例がトヨタが東富士工場跡地に着工した「Woven City」ではないでしょうか。「Woven」とは「編む」「織り交ぜる」という意味です。その名のとおり、地上には自動運転モビリティ「e-Palette」専用の道、歩行者専用の道、そして歩行者とパーソナルモビリティが共存するプロムナードを網の目のように織り込んでいます。さらに地下にはモノの移動用の道を作っています。その街には、高齢者、子育て世代の家族、そして発明家など360人程度住むそうです。さらに将来的にはトヨタの従業員を含む2,000人以上の住民が暮らし、「社会課題の解決に向けた発明がタイムリーに生み出せる環境」を目指すとされています。ちなみに公用語は英語だそうです。


 私有地なのでさまざまな実験が比較的自由にできます。おそらく、エッセンシャルワーカーが行っている仕事の自動化も想定されているのでしょう。屋外だけではなく、Woven Cityの住宅内部では、日々の生活を支援する家庭内ロボットなどの新技術の実証が行われる予定だとされています。

 もちろん家自体もスマートホームで各種センサーで冷蔵庫の中身から住民の健康チェックなどを自動で行うといいます。


 これほど大規模なものは他にはあまりありませんが、他にも東急不動産やソフトバンクによる竹芝地区のスマートビル実証実験、千葉県柏の「柏の葉スマートシティ」、パナソニックの工場跡地を使った「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」などが、しばしばメディアに取り上げられています。

 2025年に予定されている大阪万博をスマートシティの実証実験の場としようという案もあります。大阪府は2020年4月にスマートシティ戦略部を設立しました。同年7月に大阪商工会議所は「コモングラウンド・リビングラボ」を中西金属工業の敷地内に設置。「コモングラウンド」はgluonの豊田啓介氏が提唱している概念で、「建築や都市の 3Dデータをインデックスに、空間に存在する様々なものをデジタル情報として扱うことで、フィジカル空間とサイバー空間をリアルタイムにシームレスにつなぐ」という考え方です。そのためのデータ構造を異業種で共同して構築しようとしています。


 いっぽう、海外では中国のテンセントが人口8万人の「Net City(ネットシティ)」を建設するとしています。2027年に完成予定で、この都市でも自動車や鉄道は地下を走ることになっています。また「スマートシティ先進国」とも言われるシンガポールでは総面積700ヘクタールのスマートシティプロジェクト「Tengah Town(テンガータウン)」を政府が主導して進めています。特に中国やシンガポールの動きは、今後も注目です。

 ちなみにシンガポールはロボット導入先進国でもあり、パナソニックの搬送ロボット「Hospi」など8つのメーカーから50台のサービスロボットが導入されているチャンギ総合病院では、すでにロボット同士の渋滞が発生しており、今後はロボット相互の通信規格の策定や、全体最適のためのフレームが重要になると言われています。

 スマートシティを実現するには、物理世界をほぼ正確に映したデジタル世界、いわゆる「デジタルツイン」、あるいは「ミラーワールド」と呼ばれる世界を構築するための技術が必要になります。現実をほぼリアルタイムに反映したデジタルワールド、データの塊ができ、そこに自由にアクセスできるようになれば、ロボットが移動するのも簡単になるし、ロボット自体のコストも大幅に下げることができるようになります。

 だが、そのためには屋内外問わず物理世界をリアルタイムにデジタル化し続けるための各種センサー類の実装、データ構造や更新の仕組み、時間的・空間的なデータ構造フォーマットの共通化やデータ連携するための基盤の構築や利活用のための整理、そもそもどんなデータを作り出して回すべきなのか、データ基盤上で各種サービスを展開するためのプレイヤーなどなど、さまざまな要素が必要になる。

 

 スマートシティがどんなものであるにせよ、ネットワークに接続された各種機器からなるいわゆるIoT技術、次世代のスマートフォンやウェアラブル端末、解析するためのAI技術、そしてそれらの結果を生かして実際に物理世界で動作してサービスを提供し、同時にデータ収集のためのプローブともなる各種モビリティやロボット等が重要ですが、物理的に何かを動かすためにはロボット技術が必要となります。


 最も単純な例が、ようやく日本でも始まった宅配ロボットの類です。ZMPとENEOSは東京の佃・月島エリアで自動宅配ロボットを使ったデリバリー実証実験を2月に行いました。ユーザーがスマホアプリを使って注文した商品を、人間がコンビニなど各店舗から実際に買い回りして、ZMPの宅配ロボット「デリロ」を使って、最寄りの場所まで配送します。そしてユーザーのスマホに通知と開錠キーを送ります。ユーザーはスマホを使ってロボットを開錠して、商品を受け取るというものです。

 実証実験では人がついていましたが、将来的には無人で行うことを想定して実験を進めているといいます。ちなみにZMPの「デリロ」はエレベーター連携などの実験も行っています。


 ただ、ロボット宅配サービスは未来の町の想像でよく想定されていますが、法律的・技術的に可能であっても、実際にどれだけ使い物になるかは未知数ではあります。ユーザーにせよ運営側にせよ、人が何らかのかたちで関わるシステムを運用するためには、人のインセンティブ設計が重要ですが、このシステムはユーザーがどう動くかが設計しにくいからです。

 

 また、移動ロボットを使ったサービスは宅配以外にも清掃や警備など、さまざまなものが考えられます。いずれにしてもロボットは物理的な存在なので、置き場所やメンテナンス場所が絶対に必要になります。ENEOSは、このロボットの保管・運用などをガソリンスタンドで行っています。おそらく、そう遠くない将来に予想される、車の全電動化に備えているのかもしれません。


 なお同様の配送ロボット実験はパナソニックも「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」で、2021年2月から実証サービスの提供と検証を行っています。パナソニックでも宅配だけで利益を出せるとは考えていないようで、ロボットを動かすことで生成される街のデータを複数の事業者でシェアすることで、何か新しいことを生み出せないかと考えていようです。



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