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VRで生産ラインはどう変わる? 「ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記」を読んで

 こんにちは。先日の記事で、作業者の経験やカンに頼っている部分のデジタル化を課題にあげている企業が多いことがわかりました。そこでカンの標準化や技能継承のデジタル化はどのように行うかを考えてみました。「ものづくり白書」では、今はまだ生産管理や進捗状況の管理(見える化)で行っているところが多かったです。しかし、今後は生産管理等だけでなく、より直接的に技能継承するため、VRを使用した方法が主流になるのではないかと思い、VRについて知るためにGOROmanさん著の表記の本を読んでみました。すると、技能継承はもちろんその他様々なことが今後VR化されると考えられました。


 今回は、この本の概要、読んだ感想、製造現場で今後使われるVRの予想を書いて、次回実際にどのようなものが既に世の中に出ているかをまとめたいと思います。
 この本を読んだ理由は、個人的に360度カメラやVRに興味がありアマゾンで調べていたところ、VRの市場動向に関して詳細に書かれているようでしたので選びました。

1.  本の概要

 1章、2章ではVRを取り扱うまでの著者の経歴が書かれていました。学生時代から当時珍しかったプログラミングにのめり込んでいたということや、オキュラスとの出会いからVRにハマり、日本オキュラスの立上げを担うことになること、そのタイミングでフェイスブックに買収されたことやそこからさらに日本でVRを広める先駆者になることなどが書かれていました。
 3章では、著者の考える今までのイノベーションがおきた時の条件を「キモズム理論」として説明していました。パソコンでも、出立ての時は「キモい」と言われるが、「キモい」を通り越して便利や普通と受け入れられるようになった時に流行ったというイメージです。
 
 4章では、VRによって変わる生活環境の説明でした。
・2020年からVRが本格的に広まる。現実の上に架空の情報を重ねるARから広まる。(VRは代替するもので、ARは継ぎ足すもの)
・VRが広まるには、「現実より便利になる」必要がある。紙で行っていたことがPCで便利になったからPCが普及したように。
・VROSの操作はちょっとしか体を動かさない地味なものになる。あまり大きく動かすとしんどいから、普段の生活が便利にならないから流行らない。
・VRが普及すると今のペーパーパラダイム(机の上の2次元)から空間パラダイムで考えるようになる。画面が四角いモニタだった物が、視界全てが画面になる。
・VRの場合、ビデオ会議より「会った感」が出る。人はミーティングの際、視線や相槌など声以外の「しぐさ」のような情報を重視している。ミーティングはほぼVRで、自分が必要なタイミングだけ入るようになる。
・ライブや劇場も今まで特別な体験のためにその場所へ行っていたものが、VRで自分のいる場所からみれる、参加できるようになる。(相対的に本当のライブ体験の価値も上がる。)
・VTuberなどのようにアバターでコミュニケーションをとることが当たり前になる。

 5章では、VRによって変わる社会の説明でした。
・波にできる情報はデジタル化でき、そうでないものは価値が上がる。視覚情報は光なので波に変換でき、音も空気の波なので数値化できデジタル化できる。逆に匂いや味などは数値化しにくいのでデジタル化しにくい。
・AIやVRによって代替される部分で時間ができ、よりクリエイティブなことに時間を使うことができる。
・「国」という概念が弱くなる。「生まれた国」と「自分が属する国」を決めるようになる。その国の文化や理念、価値観に共感できるのであれば属せるようになる。エストニアの電子国家のように。離れていても教育や医療を受けられるようになる。

2.  本の感想

 ・キモズム理論に非常に納得しました。キモいと思われなくなったぐらいから世の中に普通と受け入れられるという理論ですが、やはりPCやスマホも始めは変な物のイメージでみられていましたが、今やなくてはならないものになっていました。それと同じくVRも今はデバイスが大きく変なものというイメージがありますが、今後世の中に普通に受け入れられるのではないかと思いました。
・VRによって変わる生活や社会が書かれていましたが、VRでできることは基本的には「その場にいなくても体験ができる」、「普段の視界に映像か音をプラスする」ことであると考えました。
・そのため、「その場でしか体験できなかったもの」、「普段スマホで何かを調べながら行っていたもの」が変わると考えました。例えば、教育、劇場、映画、スポーツ、旅行、打合せ等がどこにいてもできるようになり、運転、機械操作、多言語のコミュニケーション・文字でのやりとりなどがVROSを取り付けているだけで、わからないことも理解できるのではないかと考えました。

3. 生産ラインで使われるVR

 それでは生産ラインで使われるVRはどのようなものがあるか考えてみました。
(実際にどのようなものがあるかは来週調べようと思います。)
生産現場で使用されるもの
①技能継承、作業の記録:VRレンズをつけた作業者の作業を記録しておき、別の作業者がレンズをかけるだけで、自動で作業指示が行えるというもの。今でも実際の記録する部分は簡単には可能になっており、細かい精度や、作業順序の指示・間違えた時に指摘される機能等はまだ確立していないのではないかと思います。
②組立作業の指示、確認:組立ラインで作業者がレンズごしに製品を見ると、どの部品を組み付けるのか、どの順序で組み付けるのか、組み付けた部品はあっているのかを指示・確認できる機能です。これらは現在現場で使えるように開発中といった段階ではないかと思われます。これができれば、多品種混合組立ラインを形成することができます。
③検査機の撤廃:人がレンズごしに製品を見ることで検査ができるようになると思います。レンズ(カメラ)の精度が上がれば、今カメラで行っている傷や打跡の確認、人が見るように6面全てや重点箇所を注力的に見ることができます。AIソフトを使えば、OK,NGの判定もある程度自動化が可能です。カメラではみにくい部分や人による検査結果の差をなくすことができます。
④作業指示書、現場の書面関係のデータ化:作業指示書や現場の書面関係が全てデータになり、レンズごしに見ることができるようになると思われます。作業者が必要と思った時に視界内で操作を行い、書面を見ることができるようになると思われます。このようになると、作業者がつけている保護メガネがVRレンズに変わり、誰もがつけることが当たり前の状態ではないかと考えます。
⑤自動翻訳:機械やその他、現場での使われる言語が、文字・言葉共に自動翻訳されるようになるでしょう。多国籍に現場、海外工場、海外製の機械を使用する場合等、コミュニケーションのハードルが下がります。

その他事務所やアフターサービスや営業等で使用されるもの

⑥VR空間でのシュミレーション:工程シュミレーションをVR空間で行うことができるようになると思います。今は2次元のシュミレータはありますが、実際に作業者がどのような動きをするかまで実際の動きを合わせた空間的シュミレーションをVR空間で行った上で、実際にラインを作ったり、生産したりするようになると思われます。
⑦VRレンズで行う遠隔修理作業:機械の修理などの際、遠隔にいるベテラン作業員とレンズごしの画面を共有して指示をもらいながら作業を行うことです。これは既に機械メーカーの間では広まりつつあります。
⑧工場・ライン PR:生産ラインを360度動画、及びARで説明の追加を行うことで、工場まできてもらわなくても工場見学が可能となります。製造業では取引先に自社の工場、生産ラインを他社に見せることがあると思います。生産方法だけでなく、6Sの状態、生産管理法、安全面への配慮等様々なことを確認するために見ると思いますが、わざわざ工場まで来なくてもPRをすることができ、受注までの期間の短縮につながります。

以上、今回は技能継承のデジタル化の課題に対して、VRでどのようなことができるか、及びVRで生産ライン全体にどのような課題解決ができるかを考えてみました。まだまだできることはありそうですが、次回は今どのようなサービス・商品が出ていて、どこまで進んでいるのかを調べようと思います。

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