グレーな色恋が懐かしさを感じさせる『愛がなんだ』

2019年公開映画91本中34位。

いい映画でした。
体にじゅわーって広がる感じ。
二日酔いのときに温かいしじみの味噌汁を飲んだときの、
あの五臓六腑に染み渡る感があった。

そう感じさせるのは、
キャラクター設定とセリフの絶妙さがあってこそだと思う。

恋人ではないし、
もはや好きという感情があるかもわからないけど、
岸井ゆきのが成田凌を一途に想い続ける話。

こういう曖昧な関係性というのは、幸せにならないことが多い。
冒頭の
「20代後半の恋愛は、“好きです、付き合ってください”というのはなく、
 だらだらしたところから始まることが多い」
という岸井ゆきののナレーションから、
すでに悲壮感しかないことを予感させるのが、
おじさんには心地よかったです(笑)

高校生キラキラ青春ラブストーリーとか、
みんな幸せ系な話は、
それはそれでいいのだけれど、
枯れてきた自分としては、ちょっとまぶしすぎて。。。(笑)

ひょんなことから出会った2人だけど、
成田凌は絶妙に自己中というか、
自分のペースがある人で、
それを乱されることを嫌うタイプで、
岸井ゆきのは絶妙にメンヘラで、
好きな人ができると自分すらもそっちのけになるタイプだから、
この2人がいっしょにいても噛み合わないことも多く、
本人たちですら「ああ、合わないな」
とうっすら気づいてるシーンがちょいちょいあるんだ。

でも、離れようとしないんだよね。
成田凌は相手を都合のいいように使うし、
岸井ゆきのもそれに応えるしで、
「おお、なんかこんな話、若い頃たまに聞いた気がするぞ」
という懐かしさに浸れるのが印象的。

都合のいい相手っていうのは、
こっちが時間や手間をかけなくても、
とりあえずそのときの自分の要望を満たしてくれるから、
言い方悪いけどコスパ悪くて手放せないし、
いいように使われる方は、大体惚れたもん負けで、
パワーバランス決まっちゃうけど、
当の本人は好きでやってるから、
そりゃ離れようとは思わないよな。。。

ただ、個人的には、メインの2人の関係性も共感しつつ、
一番ツボだったのは、若葉竜也の役どころでした。
彼は彼で、想いを寄せている女性に雑に扱われるんだけど、
彼自身は近くにいられればそれでも構わないという、
第三者からしたら、
それ絶対幸せになれないやつだろっていうスタンスで、
まあ最終的には諦める覚悟を決めるんだけど、
「ああ、何かそんなふうに思っていたこと自分にもあったな」
なーんて、これもまた懐かしいなと。

あんな甘酸っぱいこと、もう二度と起きないだろうな。。。

そして、この映画は配役がいいんだよね。
岸井ゆきのはああいうちょっと幸せにならなそうな役が似合うし、
成田凌はちょっとクズ入ってる役が似合う(笑)

登場人物が、誰かしら身のまわりの人とかぶると思うので、
共感を呼びやすい気がする。

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