若さゆえの本能むき出しな『ホットギミック ガールミーツボーイ』

2019年公開映画106本中30位。

青春がとめどなく溢れて、ビッチャビチャになってた。
でもね、登場人物は高校生だけど、
大量生産されてるキラキラ映画にあるような、
若さ全開楽しさMAX!みたいなものではまったくなくて、
若さゆえの無知やノリが押し出す純粋さが、
やや歪んだ形で表出している暗めのヒューマンドラマです。

この時点で、やられたなって思った。
キラキラ系はもう食傷気味で、
人間のもっとドロドロした部分を見たいと思っていた自分には、
まさにうってつけの映画です。

自己肯定感が著しく低い主人公の堀未央奈と、
彼女の弱みを握って奴隷になることを強制する清水尋也と、
人気モデルで甘い言葉を使って彼女を騙す板垣瑞生と、
そんな堀未央奈に想いを寄せる兄役の間宮祥太朗という、
人物相関図だけでホクホクしちゃいそうな設定がツボ。

吉岡里帆もチョロっと出てるんだけど、
彼女は脇役でちょっとイラッとする役の方が存在感ある気がした(笑)

しかも、絶対的に悪い人なんていなくて、
みんな自分の想いが強すぎて、
その想いに忠実に動いてるだけっていうのが心地よい。

僕が思うに、大人になっても彼らが考えていることを
抱えている人は少なくないだろう。
でも、いろんなことを気にして、
心の内に留めちゃってることもある中で、
彼らは若さゆえにそれが外に全部出ているのが、
人間臭さを素直に形にできていて、ある意味うらやましい。

堀未央奈の、圧倒的に自分に自信がない中、
空っぽの自分を、他者との触れ合いの中でその向き合い方に気づき、
少しずつ肯定できるようになっていく変化もよかったな。

とにかく、出てくる人、みんな極端なキャラクターで振り切れているのが、
各人物の個性をよく表していてわかりやすかったと思う。
それはモブキャラに至るまで徹底されていて、
例えば、清水尋也の同級生とか、
模試終わりに、バカな女引っかけて股開かせようとか言ってるのも、
自分たちが選ばれた人間であるという選民意識が垣間見えて、
「中途半端に偏差値高いやつってこういうのいるよな」っていう
懐かしさすら感じた。

BGMが有名クラシックのアレンジがメインってのも
個人的には好きなポイント。
パッヘルベルの『カノン』や
ベートーヴェンの『悲愴』は好きな曲なので。

山戸結希監督の『溺れるナイフ』は、
世間での評価と僕の共感度に乖離があったけど、
これはいい映画でした。

ただ、堀未央奈が結局誰を好きになるんだっていうのが、
ハラハラしつつも、男3人とのやり取りで情報量が多くなるから、
ちょっとわかりづらいっていうのもあるけど(笑)

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