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浄瑠璃寺の秋

浄瑠璃寺は文学者に愛された寺の一つ、堀辰雄の随筆の中にも登場することがこの記事でも紹介されています。

かつて歌人の会津八一も失恋の痛手を癒すため、奈良に訪れ、浄瑠璃寺の歌を詠んでいます、早春の小雪ふる山道を浄瑠璃寺へと歩んだ八一はこんな歌を残しています。

「浄瑠璃の名を懐かしみみ雪降る春の山辺を一人行くなり」

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「最初、僕たちはその何んの構えもない小さな門を寺の門だとは気づかずに危く其処を通りこしそうになった。その途端、その門の奥のほうの、一本の花ざかりの緋桃ひももの木のうえに、突然なんだかはっとするようなもの、――ふいとそのあたりを翔かけ去さったこの世ならぬ美しい色をした鳥の翼のようなものが、自分の目にはいって、おやと思って、そこに足を止めた。それが浄瑠璃寺の塔の錆さびついた九輪だったのである。」(堀辰雄「浄瑠璃寺の春」の一節より)

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私も山の中にひっそり佇むこのお寺が大好きです。私が訪れたのは春ではなく、紅葉の季節です。ここの紅葉はとりわけ美しいのです。

秋になると、浄瑠璃寺に行きたくて身体が疼いてしまうのです。↓2018年の時の写真です。ちょうど見頃今年はそれより一週間早く訪問しました。

浄瑠璃寺は京都と奈良の境にあります。近鉄奈良から車で20分くらいで到着します。途中から景色が急に田園風景に変わるので面白いです。

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こじんまりした大きさの浄瑠璃寺、山奥の静けさと相まって行くととても癒やされるのです。

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入り口もこんなに可愛くって素敵です。浄瑠璃寺は全てにおいてその大きさが心地よいのです。

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この日は見頃の紅葉の他に、緑、黄色の紅葉も見ることができ、そのコントラストが見事でした。

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秋は瞬く間に過ぎ去ってしまいます。その日その日ごとに変わりゆく植物の姿の一端を今年もこの目で拝むことができて良かったです。

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先ほど紹介した堀辰雄の随筆の中にこんな一節があります。

「あこの塔も見なはんなら、御案内しまっせ。」少女は池の向うの、松林のなかに、いかにもさわやかに立っている三重塔のほうへ僕たちを促した。
「そうだな、ついでだから見せて貰おうか。」僕は答えた。「でも、君は用があるんなら、さきにその用をすましてきたらどうだい?」

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これがその三重塔。平安時代に建立された国宝建築です。三重塔の高さは16mほど。

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水面に映る姿も趣があります。

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塔から見える浄土式庭園と本堂。浄土式庭園は、平安時代以降に発達した仏教の教えに基づいて造られた日本庭園です。

浄瑠璃寺は毎年秋に訪れているのですが、堀辰雄の文章を詠んでいたら、今度は春に行ってみたくなりました。

浄瑠璃寺の近くには岩船寺もあります。

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岩船寺は境内に四季折々の花々が咲き誇ります。

三重塔は室町時代のものです。

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