VRアイドル「えのぐ」に初めて出会ったこと

2024年2月12日、北風に冬の冷たさを感じながらも、春の陽気をどことなく感じる快晴の日、自分は日比谷野外大音楽堂でアイドルのライブを観ていた。

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1.このライブに参加した経緯のこと

自分の当初の目的は、カラオケだった。
ロボットアニメソングを突然熱唱したくなること、男にはそんな時がある。
一人で行くか?いや、どうせだったら・・・と声を掛けたのは大学時代以来の付き合いの友人であった。この友人に関して語ると相当長くなるが、ロボットアニメソングといったら「この男しかいない」という存在である。今度スーパーロボット魂 2024“春の陣”に2日連続一緒に行くことになっているほどだ。

「突然だけどカラオケ行かない?カラオケ行きたいわ。」
「いや、週末これ(アイドルのライブ)行っててな・・」

大学時代、ロボットアニメソングを熱く唄いあった男は、アイドルオタクとかいう軟派な存在になっていた。けしからん。しかしそういう自分も大学時代の就活で酷く傷んだ心を3次元アイドルに救われ、ドルヲタ転向していた。

「Finally出るならいくわ。近所のカラオケも朝からやってるみたいだしな」
「マジで助かる」
そんなこんなで、カラオケに加えアイドルの対バンライブに出向くことになった。

日比谷野音には思い出がある。2014年6月15日の「東京女子流 4th JAPAN TOUR 2014 CONCERT*04 ~野音 Again」に参加した時の記憶だ。暮れなずむ夕日のなか聴く音楽は、最高だった。だから日比谷野音で音楽を聴くことは贅沢で、いい日になるだろうという予感があった。

2.えのぐを観た瞬間の話

前置きが長くなったが、2024年2月12日は自分が「えのぐ」を初めて観た日だ。ステージ後方に設置されたモニターにメンバーが投影され、歌って踊る瞬間を観た時、まぎれもなく「アイドル」を観た。

最初は、その場にいた友人と訝しんでいた。「これ録画じゃね?」と。
いやいや、違った。ちゃんとオーディエンスの反応を観てコメントしてる。
あまつさえ「動画じゃないですよ~」とか言ってる。

自分はこう理解した。
ビジュアル:3DCGで構成されている。
ダンス:モーキャプ技術でリアルタイムに反映されている。
歌:マイクを通してリアルタイムにスピーカーから流れる。

よくみるとダンスの動きもなめらかで、個々人の個性がみられる部分もある。特に違和感のない動きで感心してしまう。

加えて、えのぐのファンの人達も、そんな有り様を前にしても、メンバーが描かれたカラフルな法被やTシャツを着て、音楽にノり、非常に楽しそうなのが印象的だった。

自分はVtuber等の方面には全く疎いが、いやなるほど!と合点がいった。

「これは(3次元)アイドルだ!」と。

3.リアルとバーチャルのはざまで

なぜ自分が「えのぐ」を「(3次元)アイドルだ!」と思ったのか。
それは、「えのぐ」のライブの持つ「1回性」である。
ベンヤミンの焼き直しの劣化コピーの逆回転みたいな言葉だけれど、
実際そうではないか。

えのぐが歌う、オタクが楽しむ、その会場で、その限りの時を。
そうして時が経つ。時は戻らない。だから私達は未来に向かって生きることができるし、時が戻らないことを知っているからこそ後悔の無いよう今を生きようと思える。

結局、ライブの演出上、ビジュアルが3DCGとしてモニターに投影されているだけで、ありようはアイドルではないだろうか。我々は目に見えるものを重視しすぎるきらいがあるが、実質(=Virtual)アイドルではないだろうか。

いや、むしろVirtualではなくActualではないだろうか。
このライブを観たあと調べてわかったことがある。
所属事務所の廃業・倒産である。

いち企業の解散、これはバーチャルではなくリアル社会で起きていることである。それでもなお「えのぐ」はアイドルであるために活動し続けるという
「決定」をする。

見た目は2次元だけれども、彼女たちはまぎれもなく3次元世界を生きているんだと、このニュースから自分は感じ取った。

4.で、今後自分はどうするか

見た目が2次元で可愛いからとか、物珍しさがあるからとかではなく、
現場の雰囲気、良質な楽曲、歌、キャラクター性、そんな部分が気になったので、今後もチェックしていきたいし、現場にも通ってみたいと思った。
現場に通う理由なんて後付で「これは運命的なんだ!」とか理由付けしたくなるのがオタクの性だけど、実際はこんなかんじにふんわりとした理由がきっかけなのではないだろうか。自分は「楽しければそれでいい」と思っている。

5. 余談 2次元と3次元のコンフリクト

100%の主観を交えて言うと、「2次元オタクは3次元嫌いが多い」。
かつては自分もそうだった。

(余談の余談)ギャルゲー原作のアニメのタイアップで、ももクロが「ピンキージョーンズ」を歌った時、「よくわからない3次元アイドルが歌うんじゃねーよ」と内心思っていた。その1年後、自分は西武ドームで紫色の半被を着、紫色のペンライトを持ち、「笑顔が一番!れにちゃん!!!」と叫ぶももクロのオタクになっていた。特大手のひら返しだ。

Vtuberは比較的アニメやゲーム等2次元が好きな方が多い世界である。
えのぐのファンの方も、割とそういったバックグラウンドを持った方が多いのではないだろうか。それでもなお3次元アイドル界隈を開拓していくのか。見上げた開拓者精神であると思う。


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