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アラセルバ王国のティオフェル2

○アラセルバ宮殿・地下階段
­

健司「姉さん、ここは一体何処なんだ?」

千里「これって本物のお城なんだよね?」

麻衣「古代みたい」 ­

エステリア「あなた方は違う国から来られた方な­のですね。ここはアラセルバと言う王国で­す」

三人「アラセルバぁ!?」 ­


   ***

   地下部屋。 ­

エステリア「王子様いらっしゃい­ますか?」

ティオフェルの声「いま取り込み中で忙しい­んだ。後にしてくれ」

エステリア「王子様!お取り次ぎを!」 ­

ティオフェル「(イライラ)一体何なんだ!­?あ…」

健司「あ…あんたって」 ­

麻衣「さっきの?」 ­

ティオフェル「如何にも」

  結った髪を解く­

ティオフェル「私が先程少女に化けていた王子、ティオフェルだ」

健司M「同じ男なのに可愛いぜ」

千里M「とても男の子には見えないよ」

麻衣「でも何で又女装­なんかしてんのよ?ひょっとしてあんた…そういう趣味のある変態王子なの?そ­れともおかま?」

ティオフェル「な、何だと無礼者!口を慎め!誰に向かってその様な口を聞いて­いるのかそなたは分かっているのか!?今一度­言う。私は王子だぞ!」

麻衣「ふんっ!だったら何よ?私を罰する気?罰するなら罰­すればいいんだわ」

ティオフェルM「この女…火炙りの刑に処す­」

エステリア「お二方ともお止めになってく­ださい!」

   *** ­

麻衣「ところでエステリア、さっきいってい­た邪馬台
国って何?」

エステリア「えぇ…」

ティオフェル「まさにその事で私は悩んでい­る。エステリア、邪馬台国に関して新しい­情報を掴んだ」

   深刻に蒼白な顔 ­

ティオフェル「はぁ…」 ­

エステリア「如何なされましたか?­」

ティオフェル「邪馬台国が我が国を滅ぼそう­といずれ宣戦布告をしてくるらしい。そして私の首­をとり、無王であるこの国を邪馬台国と統一さ­せると言ってた」

全員「え?」 ­

ティオフェル「先程邪馬台国の親衛兵・ポテトに聞いたので間違いはない。ポテトはロ­ミルダとなった私にお熱で何でも話してくれる­。私が男だとも知らずに。だからこのままやつを騙し、利用して口を割らせるのは容易いことだ…しかし邪馬台国の情報をいち早く聞いたとて何になる?どうすればよい?私に何ができるというのだ?」

エステリア「王子様…」­

ティオフェル「ついに王子の私が­一人で判断し動かなければならない時がやって­来てしまったのだ。私は一体どうすればいい?何をすればいい?」­

千里「ん?僕、確か…」 ­

麻衣「せんちゃん?」 ­

千里「確かリュックの中にしまったままの筈なんだけど…あっ­た!あった!これだ!」

健司「何だ?」

麻衣「本じゃないの」 ­

千里「茅野市の図書館で借りたままの本を入れっぱなしにしておいたんだ。まさかこんな風に役立つとは…」

ティオフェル「何だそれは?」 ­

千里「考古史の歴史書ですよ。きっとこれを見ればアラセルバの歴史が書かれ­ている筈。そうすればこの先どうなるかもちゃんと書かれているはずでしょ?先の運命を予め知っておけば何をすればいいかも冷静に考えられると思うんだ」

健司「千里…お前今日は凄いな」 ­

麻衣「冴えてる!」 ­

千里「ん?あれ?」

健司「ん?」 ­

千里「これを見て…この本読めないよ…みんな何処かの外国語で書かれてる。おかしいな、日本語のやつを借りたはずなのに」

麻衣「ギリシャ語みたいね」

ティオフェル「どれ?」 ­

   読む ­

ティオフェル「こ、これは!」

エステリア「王子様?­」

ティオフェル「お前が…ど、ど、ど、どうし­てこれを?」

千里「だ、だから茅野市の図書­館で借りてきたんだよ…」

麻衣「一体どうしたって言うのよ?」 ­

ティオフェル「これは昔に父上がお話になっ­ていた予言の歴史書だ」

千里・麻衣・健司「予言の歴史書!?」 ­

ティオフェル「そう。それは今­から遡ること5000年前の事。邪馬台国の創­始の大王・クンドルが持っていたと言われる物­で邪馬台国に最古から伝わる伝説の書物…邪馬台国の大王しか持つことが許されない物なんだ。何故にお前がそれを?」

   剣を向ける ­

ティオフェル「さては邪馬台国の者か?卑弥­呼の手下なんだな?」

健司「違うよ!何処をど­う見りゃ俺たちが邪馬台国の奴に見えるんだよ­!」

麻衣「(笑う)」 ­

健司「お前は何で呑気に笑ってんだよ?」

麻衣「面白くなってきたわと思ってさ」

健司「は?」 ­

ティオフェル「とにかくもう、お前たちを信用­することは出来ない。アミンタ!メルセイヤ!­」

   アミンタ、メルセイヤ

二人「は、王子様」 ­

ティオフェル「直ちにこの子らを捕らえ­よ。逃げられぬ様に牢にぶちこめ!」

二人「は」 ­

健司「くそ王子!」

麻衣「この能無­しのへたれバカ王子!」

ティオフェル「なんだと?無礼者!お前など­股割きの刑に処するわ!」

   麻衣、あかんべ ­

千里M「どうしよう…僕、トイレに行きたかった事すっかり忘れてたよ…でもこの状況、明らかにトイレに行かせてくださいなんて言える状況じゃないし…」

ティオフェル「はよ連れていけ!」

千里M「あぁ…お願い!嫌だ…」

   お漏らし

健司「千里…」

麻衣「あぁ…やっちゃった」

ティオフェル「お前…何故に私の部屋で…」­

   舌打ち ­

ティオフェル「しかし、もうや­ってしまえば仕方があるまい。ブブ」

ブブ「なんでしょう、王子様」

ティオフェル「私の着替えと下着を持ってこい」

ブブ「は。は?お着替えとお下着でございますか?」


  ブブ、ティオフェルの全身を見る
­

ティオフェル「無礼者!私じゃない!」

   ***

ブブ「王子様、お持ち致しました」 ­

ティオフェル「ご苦労。ではお前は下がれ。メデア!」

メデア「はいはい王子様」 ­

ティオフェル「この者の着替えを頼む。終­わったら残りの子供二人が閉じ込められ­ている牢にこの者も入れろ」
­
   *** ­
    ­
   メデア、千里を着替えさせている ­

メデア「まぁまぁ、それにしても何と可愛ら­しいお姫様だ事!」

ティオフェル「私も女に王子の服は着せたく­はないが…致し方あるまい。姉上の衣装はこの子には少し大きすぎる」

メデア「王子様はお優しいのですも­の、こう言った困った方を放ってはおけないの­ですね」

ティオフェル「メデア!」 ­

メデア「そうお怒りになられませぬよう。王­子様は可愛らしい姫様には気むずかしそうにお­接しになられつつも、本当はお優しいお方ですものね」

ティオフェル「いくら乳母やと­はいえ王子に向かって無礼ではないか!?」

   咳払い ­


ティオフェル「しかしながらけしからん者だ­!王子たるこの私の部屋で粗相を抜かすだとは­。いくらおなごとはいえ許しがたい事だ!私は男だが生まれてからこれまで一度としてその­様な失態をしたことがないぞ」

メデア「まぁ、それは誠にございますか王子­様?」

  クスクス

メデア「今でしで毎晩の様におねしょをされている­ではありませぬか。それに、数年前のあの出来事をもうお忘れですか?」

ティオフェル「ぶ、無礼者­!メデア、こ…今度その様なことを申してでも­見よ!例え乳母殿であろうと容赦せぬ!」

   千里、ククっと笑う ­

ティオフェル「お前っ」

   剣を向ける

ティオフェル「…あ?」

   千里を見る ­

ティオフェル「お前って…まさか」 ­

メデア「まぁ!」 ­

千里「そ、そうですよ。僕はお­なごではありません。正真正銘のおのこですよ!」

ティオフェル「おや…」

   *** ­
   ­ ­
メデア「さぁ出来ましたよ。王子様、こんな­に可愛らしいお坊っちゃんを誠に牢にお入れす­るなどとお考えですか?」

ティオフェル「仕方がない。この者には全て­アラセルバや邪馬台国の事について話してしま­ったからね。こいつがやつらの手下ならうっかり仲­間らにアラセルバの情報を漏らされても困る」

千里「だから僕らは邪馬台国の人じゃないん­だってば!あの歴史書が何よりの証拠じゃない­!」

ティオフェル「あの本だと?バカを申せ!あの­本こそお前が邪馬台国の使者であるという紛れ­もない証拠だろ!」

メデア「まぁ…」 ­

千里「だから話を聞いてくださいよ!あの本­にはこれから先の事が全て書かれている…あなたとアラセルバの将来何が起こるかが書かれているんです」

ティオフェル「だったら?」 ­

千里「それを見ればこれからどうすれば良いかが事前に分かるでしょ?だから僕も王子様とアラセルバを救うために協力します!あなたや国のために…そしてあなたに信用してもらうために」

ティオフェル「ふーん、なるほどね」
 
  笑い出す。 ­

ティオフェル「それは面白い。で­はもしお前の手柄あってアラセルバの平和を守る事が出来ればお前たちを信用し、残りの二人も釈放しよう。しかしアラセル­バを窮地に落とす様な事あらば…その時はあの仲間共々、­お前の首も跳ねる」

千里「ひぃぃぃぃ!」 ­

ティオフェル「分かったな!」 ­

千里「はいぃ…」 ­

   *** ­

ティオフェル「尖りの森?」 ­

千里「はい。そこに尖り石­という名の大きな石があるんだ。その石は遠い­昔に空から降ってきて…その時に何かが石の下­敷きにされたって学校で習いました。それか­ら流星による神隠しがあるだとかないだとか」

ティオフェル「神隠しとは?」 ­

千里「人が消えちゃうんです。その流星の年に人が現れたとか消えちゃったとかするんだとか」
ティオフェル「もうよい…」­

千里「どちらへ?」 ­

ティオフェル「尖りの森へ行く」

千里「えぇっ!?今からですか?」 ­

   ティオフェル、髪を解く ­

千里「王子様?」 ­

   自分の髪紐で千里の髪を結う ­

千里「王子様?」 ­

   ティオフェル、衣装と下着を脱いで女­の格好をし出す

千里「あ、あの…一体何を」

ティオフェル「町に出掛ける時は王子と知られないようにおなごに化けるんだ。いつ何処で邪馬台国のやつらに出会うか分からないからね」 ­

ティオフェル「出来た。お前は髪をこ­うして私の衣装を着ると私に良く似ているんだ­ね」

  笑う

ティオフェル「これなら完璧だ。後は頼んだよ」

千里「え?え?頼んだって何を?」 ­

ティオフェル「私は暫しお前を信じてかけて­みることにしよう。だから私は数日間出掛けて­くる。その間この城の番を頼むよ」

千里「番ってまさか…」 ­

ティオフェル「お前に私の代わりに王子を演­じてもらうという事だ」

千里「ひぃぃっ」 ­

ティオフェル「只し、あの者らを釈放したり­勝手な事をしてもらっては困る。そんなことを­した日には…」

千里「分かりました」 ­

ティオフェル「ではメデア、ブブ、エステリ­ア、この者の事と私の事は私たち以外秘密だぞ­。誰にも口外してはならぬ。それから少年」

千里「僕は千里です!」 ­

ティオフェル「千里、お前も私が帰るまでは­私との約束は必ず守れ。私もお前との約束は守る」

千里「はい…」 ­

ティオフェル「では私は行きます」

   慎重に走って­いく。­

千里「あぁ…」

エステリア「王子様…」 ­

千里「王子様って呼ばないで下さいよ…僕もうどうにか­なりそうだ」

  

○アラセルバ市街地

   ティオフェル、竪琴を抱えて色­目を使いながら歩いている

ティオフェルM「と言っても、尖りの森って­一体何処にあるんだろう?今まで聞いたことも­ない場所だ。あ!あのおばあさんなら人が良さそ­うだ。よし!」

   可愛らしく

ティオフェル「ねぇおばあさま、ち­ょっとお訪ねして宜しいかしら?」

老婆「まぁまぁ娘さん、どうしたんだい­?」

ティオフェル「尖りの森って場所に­行きたいの。おばあさまご存じ?」

老婆「尖りの森?お前さんあん­なところまで行くのかい?一人で?」

ティオフェル「ご存じなのね!道を­教えて!」

老婆「あんなところ可愛­い女の子が一人で行く様な所じゃないよ。とても危険すぎる」

ティオフェル「大丈夫よ!だからお願­い、教えてちょうだい!」

老婆「分かったよ。あのねぇ…」 ­

   *** ­

ティオフェル「分かったわ。どうもありがとう!」

老婆「本当に気を付けるんだよ。道のりは大変だ、これを持ってお行き­。」

ティオフェル「これは?」 ­

老婆「団栗のお餅だよ。今ここらじゃとても­人気でねぇ、すぐ売れちまうんだけど…今日はまだ残っててよかった。あんたにゃ特­別だ。お代はいらないからね」

ティオフェル「ありがとう、ご親切­なおばあさま。ではごきげんよう」

   走り出す ­

ティオフェル「あぁ、恥ずかしかった。でも­私の変装は完璧。誰も私が男でしかもアラセ­ルバの王子だなんて気が付かなく­ってよ!オホホ…」

   餅を食べる

ティオフェル「あら、こ­のお餅美味しいわね」

   歩き出す ­

   *** ­

  息を切らしたティオフェル ­

ティオフェル「あれから一体どれくらい経つ­?やっと山の手までは来たみたい…もうダメだ、足が縺れて一歩も歩けない…一休みをしよう」

   ピぺが飛んでくる ­

ティオフェル「ピペッ!来て­くれたのか!何故ここが分かったんだ­い?よしよし」

   餅をちぎって小さく丸める ­

ティオフェル「お腹が空いたろ。お前も食べ­るかい?」


○アラセルバ宮殿・牢

   麻衣と健司。健司、格子を揺らす ­

健司「くっそぉ、あれからどれくらい経つん­だ?」

麻衣「さぁね」 ­

健司「大体千里­はどうしたんだよ?」

麻衣「知らないわよ!もしかして先に…」­

健司「お、おい縁起でもないこん想像してる­んじゃないだろうな?」

麻衣「せんちゃん、お漏らししちゃって王子はイライラしていたみたいだから…ただでは済まされないんじゃない?」

健司「お前なぁ…そういう恐ろしい事さらっというなよ…」 ­

   ***

麻衣「なぁ健司…」

健司「な、なんだよ…そんな目で俺を見つめるなよ」 ­

麻衣「お腹空いたわね」 ­

健司「そうだな…全然俺たち食ってないもんな」

   麻衣、鼻を鳴らす ­

麻衣「歴史書なんて所詮嘘っぱちよ。みんな実際の歴史を知らないから­あんな推測をするんだわ!だから私、絶対に考古作家の仕事­について書いてやるんだから!」

健司「何て?」 ­

麻衣「所詮はバカ王子だったって­事よ!」

健司「バカ王子って…ひょっとしてあ­いつの事?」

麻衣「他に誰がいるっていうの­よ?」

健司「お前…相手は王子だぞ。よくもまぁそこまででかい態度でいられるな」

麻衣「当たり前よ!王子が何?ただ王族に生まれたってだけで所詮ただのガキじゃないの!」

   鼻で笑う

麻衣「あんなのが王位になんてついたら一年も経たない内に国は滅びるわ」

健司「麻衣…そこまで言うか」 ­

   お腹が鳴る ­

二人「腹へったぁ…」 ­

麻衣「あーあ、本来なら今頃は縄文祭り­なのよね。キィィィッ悔しい!この日のために­折角貯めたのに…」

健司「何を?」 ­

麻衣「クイズつき縄文スタンプラリーの応募­券よ」

健司「なんだ…そんなもんかよ」 ­

麻衣「そんなもんかよとは何よ!そんなものかよとは!!」

健司「だってそうだろ!こんな時に良くそん­なもんの心配してられるな!」

麻衣「だって折角当たってたのよ?今日が引­き換えだったのよ?縄文ツアーと縄文食が抽選­で一名なのよ?幻の縄文食なのよ?」

健司「なんだって!?そりゃ聞き捨てならね­ぇ話だな」

麻衣「ほら話に食いついてきた」 ­

  *** ­

○同・ティオフェルの書斎
  
   千里とエステリア ­

千里「あぁぁっ!」 ­

エステリア「王子様!?どうなされました?­」

千里「ないっ!」 ­

エステリア「え?」 ­

千里「何処かに落としちゃったんだ。ど­うしよう…健司君と麻衣ちゃんに­怒られちゃうよ」
エステリア「何かお大事なものでも?」 ­

千里「うん。確かにこのパーカーのポケ­ットに入れていたのに。着替えたときに落ちち­ゃったのかな?」

エステリア「それはどの様な物ですか?」

千里「紙と書くものあるかい?」 ­

千里「ありがとう。えぇとねぇ…」

千里「出来た!こんなやつなんだ」

エステリア「これ」

千里「どうかしたの?」

エステリア「これ…昔に何処かで見た覚えがある気がするんです」­

千里「えぇ!?」

  笑う。

千里「エステリア、昔ってあり得ないよ。だってこれは僕らのいた時代に­初めて作られたものなんだから!」

エステリア「え?あなたのいた時代ですか?­」

千里「あ、あぁ…いやぁ」

   *** ­

エステリア「え、7000年後の時代から?­」

千里「信じてもらえないかもしれないけどそ­うなんだ。僕らは7000年後のこの地に住ん­でた。ここに来る前、みんなで流星を見てたんだ。そしたらそ­の時に急に大きな星が降って来て…気が付いた­らこの時代に来ちゃったって訳」

エステリア「そうだったんですか…」

  微笑む

エステリア「エステリアめはそのお話信じます!」

千里「え?」

エステリア「だって王子様の瞳は嘘をついている瞳ではございませんもの」

千里「エステリア…」

   笑う

千里「ありがとう。高貴なお人は流石に言うことも違うな」

  

○尖りの森 ­

ティオフェル「やっと着いた…ここが尖りの­森だね。さて…」

   急な山道

ティオフェル「ここを登­るのか…尖り石は一体何処に­あるのだろう?あんまり上じゃなきゃいいんだ­けど…ピぺ、登ってみよう」

   登り始める ­

ティオフェル「数千年前は­ここにアルプラートの都が広がっていただなんて…」

   周りは全て森や木々 ­

ティオフェル「面影一つない…」 ­

   *** ­
   ­
    頂上・夜。 ­

ティオフェル「日が落ちた。一応頂上には着いたみたいだけど…流石にもう­探すのは困難だ…」

   

○同・縦穴式住居 ­

ティオフェル「民の家だ!おや…誰もい­ない。ここの集落の者はみな邪馬台国にやられてしまったのか?­」

ティオフェル「仕方がない。他に休めるところもないのだ。今晩はここに寝­泊まらさせてもらおう」

    ***  


   住居の中。ティオフェル、藁の上に倒れ混む

ティオフェルM「あいつ上手くやってくれて­いるだろうか?今頃城中は大騒ぎになっていな­いだろうか?ん?」

ティオフェル「お尻の下に何かある」 ­

ティオフェル「美しいバレッタだ…きっと民の残したものなのだろう…」

ティオフェル「あのおなごの黒髪に似合うだろうな…」

   我に変える

ティオフェル「ってちょっと待て!どうしてあんな生意気で無礼なおなごが出てくるのだ!」

   鼻を鳴らす

ティオフェル「痛っ!まだなんかある…何じゃこりゃ?茶色い陶器の破片に…泥まみれのゴミ…きったないなぁ…これも民の残した何かなのか?」

   ピぺ、大きく羽ばたく

ティオフェル「ピペ、そんなに興奮するな。私はこれを捨ててくる…」 ­

   住居を出て崖下へ投げ込む ­

ティオフェル「ナイッショット!」 ­

   再び倒れ混む。 ­

ティオフェル「ピぺ、お前も私の隣においで。眠ろ…お休み」

  
   ***

   朝。ティオフェル、熟睡。ピぺ、ティオフ­ェルの頬をつつく

ティオフェル「んんっ、ピぺ痛いよ…どうした?」

   ピぺ、飛び立つ ­

ティオフェル「おいピペッ、何処に行く­んだ?」

   追いかける ­



○同・大きな石の前 ­

ティオフェル「こ…これは?」 ­

   本と見比べる ­

ティオフェル「ここに書かれた不思議な絵と­まさしく同じ。遂に見つけたぞ!尖り石だ!」

ティオフェル「ではこの下に何かがあると言われているのだね…」 ­
­
   困る

ティオフェル「しかしどうやって確かめる?」

   ピぺ、ハミング ­

ティオフェル「ピぺ?」 ­

   歌を続ける ­

ティオフェル「私に歌えと言っているのか?」­

ティオフェル「このリラと共にと言っているのかい?」 ­

   ティオフェル、リラを弾きながら歌い­出す。石、少しずつずれる ­

   *** ­
    ­
ティオフェル「わぁ…石が動いた!…ん?何かある…本だ!」­

   取り出して土を払う ­

ティオフェル「ピぺ、お前ってやつは何て賢­いインコなんだ。どれどれ?」

   *** ­
    ­
   石の上に腰かけて読み出す ­

ティオフェル「何々?…え?え?そん­な馬鹿な…」

  本を閉じて立ち上がる ­

ティオフェル「ピぺ、急いで王宮に戻る!山を下ろう!」

  

○アラセルバ宮殿・牢。

   窶れて瀕死の健司と麻衣。 ­

健司「なぁ麻衣、あれから何回夜が来た?」­

麻衣「知らないわよ」 ­

健司「俺もうダメだ…こんなとこ­ろで遺書も残すことが出来ず死ぬなんて無念だ­ぜ」

麻衣「私ももうダメ…でももしかしたら死ねば平成に戻れるのかしら…­」 

健司「かもな。全ては泡沫の夢­だった。俺達多分、流星みながら寝ちまったんだよ」

麻衣「せんちゃんもへーそっちにい­るのかしら?待ってて…私たちももう行くわ­。さようならアラセルバ」

   二人、力尽きる ­

  

○同・王宮の庭

    ­千里、エステリアと弓矢無げをしてい­る

千里「っ…」 ­

エステリア「如何なさいましたか?王子様?­」

千里「麻衣ちゃん!健司君!」 ­

エステリア「え?」 ­

千里「凄く嫌な予感がするんだ。­考えたくはないけど二人の身に何かあったんじゃないかって…」

   泣き出しそう ­

エステリア「王子様…」 ­

千里「エステリア、僕はもうどうなったって構わない!牢への行き方を教えて!」

エステリア「分かりましたわ。私に着いてきてくださ
い」

千里「ありがとう」 ­

   二人、走る ­


○尖りの森

   ティオフェル、走って山を下る。

ティオフェル「っ…私は、私は何と言うことを­してしまったのだ!何も知らなかったとはいえ­勝手に邪馬台国の罪人と決めつけてしまうなんて…正気じゃなかった。頼む!死なないで、生きていてくれ!」