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青春の日々にこそ(『君のくれるまずい飴』冬虫カイコ:著 感想)

青春といえば、なにを想像するだろうか?

ちょっと汗臭い部活動? 同級生や先輩とのどぎまぎする恋? はたまた、謎解き?

いや、そんなもんじゃなかったはずだ。青春の青臭さは生臭さなんだ、と突きつけてくるのが、冬虫カイコの『君のくれるまずい飴』という短編集だ。一つ一つを説明してしまうのは、あまりにもったいないのでしないが、とりあえず表題作だけ触れておく。

表題作はたった四ページの漫画だ。たわいない女子学生の日常を切り取っている。しかし、ラスト、タイトルを見れば分かっているはずなのに、それでもなおインパクトの強い落とし所は、短編集すべてを覆うテーマを含んでいる。試し読みをできるサイトはいくらかあるので、これだけでも読んでほしい。

ほかの作品は、ややファンタジー要素があるものの、青春の青臭さを通底のテーマにしているので、胃がむかつく感覚まで覚えるかもしれない。

でも、大人になった我々は思い出さなくてはいけないのだ、きっと。青春のすべてが美しかったなんて、嘘っぱちであることを。


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