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汚水処理のしくみをざっくり

汚水処理の主役は現在のところ微生物である。これらは特別な存在ではなく、自然界に生息しているものであり、主に土壌細菌らが活躍していると聞く。糸状菌なんかは畑をしている人には馴染みがあるかもしれない。

微生物が濃縮された活性汚泥や、それよりはコンパクト化されたろ材と呼ばれる網状や板状の構造物を沈め、ここに微生物を付着させるといった方法がとられる。

微生物は呼吸し代謝しながら、彼らにとっての食物である汚濁物質を取込み分解して、結果汚水は浄化されていく。

彼らはどこにでもいてどこからともなく集団をつくる。排水溝のヌメリとはこれである。ヌメリを構成する微生物は生活排水を餌に、その汚濁量に従って増え、集団を作り、剥がれながら世代交代している。

主に汚濁の量(濃度)によって、微生物のつくる生物相は決定される。これを観察すれば浄化槽の状態や汚水の質を読み取ることができる。そこで顕微鏡観察という方法があるのだ。

顕微鏡の限界もあり、処理の主戦力たる細菌たちは一部をのぞき観察できない。観察できるのはそれよりは大きい原生動物や後生動物と呼ばれる一群だ。その生活形態で浮遊性、遊泳性、滑走性、固着性などに分類できる。

活性汚泥法とは、粘性物質を自らの周囲に分泌する細菌によって周囲の細菌を含む細かな固形物を付着させ、これに糸状菌が纏わりまたは埋め込まれて骨材の機能を果たし形成された泥の粒子(フロックという)を微生物の生活の土台として機能させる手法で、この泥を活性汚泥と呼ぶ。活性汚泥法では大体低くて1,200mg/ℓから高くて6,000mg/ℓ程度になっていると思う(うろ覚え)。

活性汚泥法では汚水と活性汚泥を混ぜる槽が設けられる。ここで汚水は処理されて綺麗な水になるが、活性汚泥ももちろん汚濁物であり、これを処理水と分離する必要がある。もっとも基本的な手法が沈殿法で、微生物処理のあとに設けられる。重力で活性汚泥を沈降させる。まあ物理現象としては放置した味噌汁を想像したらいい。

槽の底部に沈殿した汚泥を底から抜き生物処理槽に返送することで汚泥量を一定に保っている。また、増殖した微生物分を系外に抜き出す操作もここで行う。

処理された水は上澄みを形成し、槽上部から出ていく。ということは上昇流が発生しているので、重力沈降と拮抗する力となる。この上昇流を決定するのは最初の流入量である。流入量が多ければその分上昇流は増大し、汚泥は沈降できずに巻き上げられ、処理水に混入することになる。

汚泥の沈降率を決定するのは周囲の水の粘性にもよるが、主にはフロックのサイズと密度である。要するに軽かったり、図体の割にスカスカだったらすぐ巻き上げられる。ぎゅっとしているのが沈降には良い。しかし、重ければいいかというとそうとも限らないらしく、小松夫美雄『生態系の視点を加えた活性汚泥の維持管理』(日本水道新聞社,2013)によれば、重いフロックは早く沈降するのだが、沈降物は周囲に同等の上昇流を発生させ、細かな汚濁物は巻き上げられ、むしろ上澄みが濁るのだという。泥水が沈殿を形成しているところに砂利をザラザラ入れたら掻き混ぜられてまた濁ると。上澄みが綺麗にとれる程度のいい塩梅のフロックであってほしい。

そこでフロックのサイズを調整する必要がある。フロックは放っておくとどんどんお団子状になっていく。これは密度があってでかい。昔はこのお団子状が良しとされていたという。しかし、放流水質に係る規制が強くなっていく過程で、お団子状では本来沈むべき固形分が処理水に混入してしまうということで、良質な上澄みを形成する障害とならない丁度いいフロックの形態が求められた結果、先の小松曰く、フロックの極相であるお団子状ではなく、そこに至らない有枝フロック(☆型状のフロック)がよい。パラシュートを広げたような恰好をとるわけだな。

この有枝フロックは沈降性を抑制してゆっくり沈殿してくれるだけでなく、沈降してい間に、自身では沈まないピンフロック(微小なフロック)等を絡めとっていくという利点がある。また、生物処理においても、トゲトゲしているということは即ち体積に対し表面積が大きく効率がよい。

しかしこの状態はフロックの形態遷移の途中段階であるから、ここを調整しなくてはいけない。この調整は上述した汚泥の抜き取り(引き抜きというが)によって、育ち切らないうちに系外に排出することである。

(微生物の話するつもりだったんだが)

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