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君はスリにあったことがあるか。

私はあります。


こんにちは。まるです。

今日は、おそらく日本中のほとんどの人が一生に一度も出会うことがないであろう、「スリにあった話」をします。

「スリ?なにそれ、こわーい!」ってなりますよね。
私もね、「スられた!」って気づいた瞬間は、頭真っ白になりましたよ。
(いやいや、そっちじゃなくって。当時はまだ髪黒かったんですって。)

時は2009年(多分。細かく覚えてないけど)。

当時、私は夫の仕事の関係でインドネシアの首都、ジャカルタに住んでいました。
インドネシアといえばバリなんかは皆さんに馴染みがある観光地で、南国のリゾート、というイメージかもしれません。

しかしながらインドネシアという国自体、外務省が発表している「海外安全情報」でレベル2、つまり特段の理由がない限りは渡航を控えてください(不要不急の渡航中止)、という危険度の国です。

バリのような観光地と違って、ジャカルタはいろんな人たちが住んでいて、活気に溢れてはいますが、それだけ危険もたくさんという状況です。

邦人は「道を歩くこと」自体も禁止されており、どこへいくのも車で移動することが求められます。

道をはさんだ向かいの店に移動するためだけに車に乗らないといけないというのは、ウソのような本当の話。

(ちなみに、インドネシアでは邦人が車の運転をすることは難しく、必ず運転手を雇わなくてはなりません。
↑免許の問題もありますが、3車線の道路で車が4列になって走る上にバジャイ(三輪タクシー)が隙間をすり抜けるような道路状況では、運転は無理っす)

もちろん、ショッピングセンターや空港などを歩くときは、常にカバンは身体の前に持ち、ぎゅうううううっと握りしめる、ということも身についていました。

余談ですが、日本に帰ってきて、レストランや喫茶店で自分の荷物を置いたまま席を離れる人を見た時は、背筋が凍りました。その後「あ、ここは日本なんや……」と力が抜ける、ということを何回か繰り返したのち、すっかり元の不用心な日本人に戻っちゃいましたけどね。

さあ、前置きはこのくらいで。

日本と違って、普段からちゃんと自己防衛してたんだよ、という言い訳を十分にしたところで、当時のお話を。

ですからね、ジャカルタ、という都市で暮らす駐在の邦人はなかなか自由に出歩いたりできないわけです。
ましてや、都市の中心部を歩くなんて。

そんなところに「ジャカルタマラソン」というイベントが開催されることになりました。
これは、ジャカルタ中心部の主要道路を走っちまおうぜ!というもので、いつもは車でしか通らないところを自分の足で走れちゃう、在留外国人にとっては垂涎のイベントなんです。

こんな機会は滅多にない!と、私も友人達と「ジャカルタマラソン5キロの部」に参加しました。
(ちなみに、当時住んでいたアパートメントには、ジム、プールが付属していて、住人は自由に使えました。朝、子どもたちをスクールバスに乗せたあと、NHKワールドの朝ドラを見ながら、30分から1時間ランニングマシンで走る、というのが私の日課でした)

いやあ、楽しかったですよ、マラソン。

いつもは排気ガスが充満してて、一ミリも車の窓を開けたくない、って思っていましたが、この日ばかりは清々しくって。

いつもは車の窓越しに見るモニュメントや風景が、こんなに間近に見られるなんて。

ジムでは毎日10キロ近く走っているのに、実際の道路で走ると5キロでもしんどいとか、途中で嫌になった地元の参加者たちが、堂々とショートカットしてるとか、

いろいろ面白いこともあり、概ね満足なイベントでした。

さて、「その時」はマラソンのイベントが終了したあとです。


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結構な参加費を払っていたので、Tシャツとかなんだかんだお土産をもらってホクホクしていた私。

貴重品は、ウエストポーチ(もちろん前持ち)、友人の分と自分の分のお土産の紙袋を両手に持って、集合・解散地の公園内を歩いていたら、目の前に人だかりが。

「なんの人だかりだろう?」と思っていたら、その人だかりが私に近づいてきて
あっという間に私も人だかりに巻き込まれてしまいました。

なんだかわけの分からないうちにもみくちゃにされ、頭の中に飛びかう「????」。

誰かが私のウエストポーチを触っている感触がする。

「あ!やばい!」とウエストポーチを抑えようにも、両手に持った荷物が邪魔をして手を動かすことができない。

どこからともなく腕が伸びてきて、私のウエストポーチから財布を取り出す様子がスローモーションのように目にうつる。

「スられた!」
「まずい!」
「現行犯!」
「叫ばないと!」
「誰か捕まえて!」
「お前、許さん!」

などなどの単語が頭を渦巻き、最終的にとにかく「スリだ!」と叫ばなきゃ!というところまで考えが及びました。

で、叫ぶぞ!と心に決めて、口を大きく開けた瞬間、頭に浮かんだのは



「インドネシア語で、スリって、どういうんやったっけ?!」。



結局、いろいろ言葉を思い出そうとした結果、

日本語で「スリだ〜!」(迫力8割減な感じで)と一応叫んでみました。
(英語でも叫んだと思う、自信無さげに。)

もちろん時すでに遅し。
人だかりもあっという間に無くなっていて、何事もなかったかのような周りの様子。
日本語で、「スリだよ〜」「スリ捕まえてよ〜」と叫ぶ私を怪訝そうな顔で見る人々。

何か今やるべきことはないかと、ようやく動き出した頭で考えてみましたが、ただウエストポーチが空っぽになった、という事実があるだけで、警察に訴えることも(犯人の顔見てない、そもそも言葉が無理)、目撃者を探すことも(人だかりに中で行われた、そもそも言葉が無理)できず。

結局、何にもできずにとぼとぼ友人のいるところまで歩いて行きました。

いやあ、あの時の空虚感というか、自分だけがテンパっていて、周りに気にかけてもらえない孤独感というか、忘れられないですね。

後から考えてみると、人だかりまるごとスリの仲間だったんでしょうね。

ウエストポーチに振り分け荷物のカモがふらふら歩いてきたので、
「今日のノルマ楽勝で達成!」ってな具合だったんでしょう。

うう、腹たつ。

友人にも「ウエストポーチは危ないんだよ」と諭され、「ほな、貴重品はどうしたらよかったん?」と聞くと「ホテルの金庫に預けとく」と言われ納得できず。(だってホテルも信用できない、って言われてたし)

いまだに正解がわかりません。多分、リアル腹巻きに仕込んどくのがいいんでしょう(ヤケくそ)。

我が家では私が一切の家計を握っているので、財布にはあらゆるカードが入っていました。(「そんなもん、持ってきたらダメ」と言われた。これは納得。)
クレジットカードとか、在留邦人の登録カードとか。

その後しばらくは、カードの停止や再発行の手続きに明け暮れました。

現金はしょうがないものとして、それ以外の被害がなかったのは幸いです。

うう、腹たつ。

なにに腹たつって、スリにあった自分に。

ウエストポーチに最重要貴重品入れてヘラヘラ走っていた自分にもだし、何よりウエストポーチに手を突っ込まれているのを見ていながら、何もできなかった自分に腹がたつ。

叫ぶことすらできなかった。(語彙力の無さ!)

なんで一発反撃ができなかったのか。誰のでもいいから腕に噛み付いてやればよかった。

まあ、そんなことを思うのは後のことであって、実際にはできないし、むしろできない方が良かったんです。
お金を取られただけで、怪我もないし、命も取られなかった。

ただ、やっぱり「スリにあった」というショックは想像以上に大きかったです。

もう10年以上前の話ですっかり忘れていましたが、こうやって思い出すとあの時の気持ちも蘇ってきますね。

でもまあ、おそらくもう二度と同じようなシチュエーションでスリにあうようなヘマはしないでしょうし、

何より「スリにあいました」のネタはいろんなところで活用させてもらったので、もう元は取れました笑

これを最後まで読んでくださった皆さん、スリには十分お気をつけくださいね。

それと、散々ディスってしまった気がしますが、I love Jakarta.です。もし機会があるなら、またジャカルタに住みたいと思っています。

人は優しく、ご飯は美味しく、活気にあふれた街です。たまに爆弾テロがあったりしますが(コラ)。

今日は、この辺で。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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