社会人が法科大学院に行く話(お金編① 教育訓練給付制度の概要)

2023年2月に一部更新

このNoteは、私が法科大学院に行く際に集めた情報を整理し、同じような道を目指す皆様のお役に立てればと思い執筆しています。なお、手続きは私も現在進行中のため、わかる情報から随時記載していきます。
基本的な内容は2022年1月の情報に基づいておりますので、最新の情報については、記載を参考の上、適切な管轄先へご確認ください。

社会人が仕事を辞めて大学院に通うとすると、まず問題になるのが収入です。
普通ならば、失業した人は失業給付を受けることになりますが、この給付期間は最短数ヶ月(年齢や雇用年数によって多少異なる)であり、法科大学院のカリキュラムの長さには到底及びません。

この間の収入を得る方法の一つに、教育訓練給付制度があります。これについては、すぐに大まかな情報は掴めたものの、なぜか方々の担当者にうまく当たらず、詳細な情報を得るのにはなかなか苦労がありました。収集した情報をまとめましたので、皆様のご参考になりますよう。

教育訓練給付制度について

教育訓練給付制度とは、働いている人(雇用保険に加入している人、いた人)がキャリア形成のために学びたいと思った際に、国から、学費の補助(教育訓練給付金)を受けることができるというものです。また、さらに条件を満たせば、生活費の補助(教育訓練支援給付金)を受けることができる場合もあります。

※教育訓練給付金と教育訓練支援給付金は別の制度です。

なお、専門実践教育訓練に限らず本制度を過去に受給している場合、支給条件や支給額などが複雑に変化します。過去に受給経験がある場合の詳細は割愛しますので、管轄のハローワークへご相談ください。

学費の補助(専門実践教育訓練給付金)について

厚労省発行のパンフレットはこちら

教育訓練給付制度が対象とする訓練は、その内容によって、「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」の三種に分けることができます。司法試験に合格するための課程である法科大学院は、「専門実践教育訓練」に該当します。以下、社会人上がりの法科大学院生が受給することになる教育訓練給付金を「専門実践教育訓練給付金」と記載します。

専門実践教育訓練給付金の受給金額

下記の合計金額(以下「教育訓練経費」)の50%です。ただし、受給上限額は年度ごとに40万円です。また、別途奨学金を受ける場合は、その金額が教育訓練経費から控除されます。

・入学金
・授業料
・施設維持費を除き、大学に在籍する上で絶対に払わなくてはいけない代金

各大学で想定される教育訓練経費については、厚労省のデータベースから課程中の合計金額を知ることができます。その金額の50%、または、120万円(未修)若しくは80万(既習)のうち、低い方を受給されるイメージになります。

国立大学の場合、かかった金額のうち、授業料の半額が帰ってくるイメージです。
私学の場合は、支払額が年間80万円(40万円÷50%)を超えるケースが多いため、実質給付比率は50%に満たないケースがほとんどです。私学は奨学金が充実している傾向にあり、場合によってはそちらを利用・併用した方が安くなることもありますので、入学後も学事を訪ねて検討することをお勧めします(とは言え、本制度の給付に必要な手続きの一部は入学前に必要なので、とりあえず手続きだけはしておきましょう)。

専門訓練教育訓練の情報を集めていると、最終的に教育訓練経費の70%が帰ってくるという話がありますが、これは期待しない方がいいです。なぜなら、+20%を受給するためには,大学院修了の翌年度中に司法試験に合格した上で雇用保険の被保険者になる必要があり、これを満たすのは例外中の例外だからです(裁判官と検察官は公務員、弁護士の多くは個人事業主扱いという理由で、雇用保険に入りません)。

なお、下記の金額は教育訓練経費に含まれません。
・施設維持費(これは盲点でした)
・学債など将来償還されるお金
・生協の加入金、行事やサークルの参加費など任意で払うお金
・定期券代などの交通費
・司法試験や予備試験の受験代
・パソコン代や参考書代
・銀行振込やクレジットカードの手数料 など

また、下記の費用についてはグレーゾーンです。
・教科書:本来、授業に必須である教科書は教育訓練経費の対象ではありますが、領収書が大学本体から発行される必要があるため、生協を通じて購入する通常の教科書購入では難しいと思います。

専門実践教育訓練給付金の支給条件

まず、通う法科大学院が厚労省の認定を受けている必要があります。これが結構な落とし穴で、すべての法科大学院が認定を受けているわけではないのです。例えば東大は2021年度まで認定がありませんでした。認定の有無については、募集要項に記載があります。また、厚労省のデータベースでも確認できます。

受給者本人に求められる条件は、初めての場合、端的に言えば、
・フルタイムで通算2年以上働いている
・過去にフルタイムで通算2年以上働いた後、辞めてから1年以内
のどちらかであることです。

※ 専門実践教育訓練給付金は、支給金額が高いので、他の訓練種別より条件が厳しくなっています。
※ 「働いている」の形態はパートタイム等でも良いですが、雇用保険に入っている必要があります。
※ 通算ですので途中に無職の期間が挟まっていても問題ありません。
※ 今後、必要とされる働いた年数が3年となる可能性があります。
※ 辞めてからの年数のカウントについては、妊娠・出産・育児・疾病・負傷の理由がある期間を除くことができます。

この「通算何年働いたか」「辞めてから何年経ったか」
を判断する日付は、受講開始日時点となっています。受講開始日は本来公開されている情報なのですが、ネットには大体月単位しかありませんので、ギリギリの方は正確な日付を大学に問い合わせる必要があります。この辺りは手続編にて詳述します。

生活費の補助(専門実践教育訓練支援給付金)について

名前が長いですね。問い合わせ時に何度舌を噛んだか知れません。

本制度は、前述の学費の援助を受けることができる人のうち、
・通う大学院が昼間通学課程であること(つまり夜間や通信でないこと)
・大学院に通う間失業していること(つまり休職ではないこと)
という条件を満たせば、失業給付が終了して以降、法科大学院に在籍している間(留年は除く)について、失業給付の給付額の8割を目安とした金額が毎月給付されるというものです。

しかもこの給付は税法上の非課税所得となりますので、同じ金額をアルバイトで稼ぐよりも、金銭面、時間面で高い恩恵を受けることができますし、家族が扶養控除を受けられる可能性もあります。

※ただし、多くの健康組合においては所得の計算対象になりますので、残念ながら健康保険は国保になります。

本制度は前述した学費の援助とは異なり時限措置という扱いですので、令和7年度以降に入学する法科大学院生が受けることができるかどうかは、予算案の成立次第となります。

受給手続きについて

記事が長くなりましたので、受給手続きについては次編で述べたいと思います。

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