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アメリカ人と付き合うと発音は良くなるのか?

タイトル文字数の都合上「アメリカ人」としていますが、「英語圏出身のネイティブ・イングリッシュ・スピーカー(以下ネイティブ)」とみなしてください。

第一弾「アメリカ人と付き合うと英語は上手くなるのか?」
第二弾「ネイティブ=優れた英語講師、ではない」

からの続きです。

さて、上記2つのnoteでは、わりと「ない」側の意見を述べてきましたが、こと発音に関しては、ネイティブをパートナーに持つことで上達する部分はあるかもしれないな、と思っています。

リスニング力はつくかも?

普段ほとんどネイティブの英語に触れるチャンスがない人にとっては、格段にリスニングがアップする可能性はあるかもしれません。この「かもしれない」というのは、やはりケース・バイ・ケースなんだよな、と。

第一弾でも書きましたが、もともと英会話力がゼロに近いようなレベルの人は、英語に触れる時間が増えるだけで一定の底上げにはなるので、リスニングもアップすると思います。ただ、結局は「パートナーが話す英語に慣れる」というところで止まってしまう可能性もあるんですよね。パートナーとの会話はスムーズなのに、他のネイティブが何を言ってるのか聞き取れない、という現象も起きてくると思うので、やはり総合的なリスニング力をつけるためには、コツコツ努力するしかないかなと思います。

また、第二弾でも書きましたが、パートナーが話す英語はその人の出身地のローカル英語に基づいているので、それが標準的な英語とは限らないということは、頭のどこかに入れておいたほうがいいでしょう。そもそも標準的な英語なんてものが存在するのか、という話もありますが……。どんな人にもある程度通じる、最大公約数的な国際言語としての英語を身につけようと思うなら、さまざまなバックグラウンドを持った人と会話したり、テキストや動画などでインプットすることが必須になってきます。


発音が良くなるには理由がある?

発音の良し悪しに関しては、ちょっと色々と思うところもあるのですが、ここでは「ネイティブと付き合うと発音は良くなるのか?」という点にフォーカスしたいと思います。

さて、私の答えは、「良くなる場合が多い、かも?」です。

ネイティブと会話をしていると、知らない単語がどんどん出てきます。そのたびにいちいち辞書を見ていたら会話が進まないので、とりあえず前後の流れで「こんな意味だろう」と当たりをつけて会話を続けることが多くなります。または、その単語が会話の肝となる場合は、「それってどういう意味?」と聞くのもありです。

そして、あとでしっかり辞書で調べてみて、答え合わせをしていく。この繰り返しによって、語彙が増え、使える英語表現の幅が広がっていきます。

なのですが、時々、あとで辞書で調べていて「……おや、さっきの言葉、辞書で見つからない」という現象が起こることがあるんですね。聞いた音から推測し、いくつかのスペルのパータンを調べてみても、どこにもそんな単語はない……。気になってパートナーに「さっきの言葉ってどういうスペル?」と聞いてみると、自分で考えたものとは全く違うスペルだったりします。

例えば、これは私の体験談なのですが、

病院で受ける手術で、全身麻酔をしない処置のことをprocedureと言いますが、この言葉を最初に病院で聞いた時、「プォーシィージャー」「パーシージャー」と聞こえたんですね。なのでpursedureとかpurceisureといったスペルを想像していましたが、いくら検索しても出てこない。正解はprocedureだったわけですが、実際の音はプロシージャーとは聞こえません。

もし、この単語との最初の出会いでスペルを見ていたら、私の頭にはプロシージャーと記憶されると思います。ロの部分を巻き舌にしたとしても、やっぱりロはロで発音したくなると思うんですね。しかし、音を最初に聞いていたことで、正しいスペルを知った後でも、私の発音はプォーでいられる。ロにはならないんですね。

つまり何が言いたいかというと、まず音から出会うことで、発音がよりネイティブの音に近づくという現象はあると思います。なので、パートナーがネイティブの場合、音から知る単語が増えるため、その点は有利かもしれません。

中高とテスト勉強のための英語をインプットしてきた私たち日本人にとって、単語を覚える=スペルを覚えるという意識が根付いているところがありますが、一度筆記を捨てて、音だけで単語を覚えるようにすると、発音はかなり上達すると思います。


ネイティブは音の違いを認識していない

これは第二弾で書いた「ネイティブは感覚で英語を身に着けているので、論理的に説明できないことが多い」という話になるのですが、発音についても同じことが言えると思います。

例えばcanとcan'tの音の違いについて、英語学習者は最後の「t」あるなしで聞き分けようとしますが、それよりも「a」の音の違いを認識したほうが、聞き分けはぐっとラクになります。あえてカタカナにすると、

can=ケン
can't=キャンt

という感じです。(can'tの語尾のtは母音なしの「ッ」みたいな音です)

ですが、これを英語講師ではない普通のネイティブに言っても「いや、どっちのaも同じ音だよ」と答える人が多いかもしれません。なぜなら、彼らは音の差異を理論的に認識することなく、感覚で身につけているからです。

じつはこれ、日本語でも同じことが言えるんですよね。
有名なエッセイマンガ「ダーリンは外国人」に出てきたエピソードで、

はんのう
はんば
はんこ

これらの「ん」はすべて違う音だ、という指摘が出てきます。私たちネイティブ日本語スピーカーは普段意識することはありませんが、よ〜く観察してみると、確かにこれらの「ん」は全部違う音なんですよね。

はんのう=舌がべたっと上顎に付く「ん」
はんば=舌はどこにも付かず、唇が閉じる「ん」
はんこ=舌はどこにも付かず、唇が開いた「ん」

プロの日本語講師の方なら、こうした音の違いを明確に説明できるのでしょうが、ただ感覚で話している私のようなネイティブ日本語スピーカーは、質問をされても答えることができません。それと同じで、英語ネイティブも、発音の違いや音の出し方を明確に説明できるわけではないんですよね。

また私の体験談で恐縮ですが……。
Ear(耳)とYear(年)の発音の違いをなかなか習得できず、ネイティブであるパートナーに助けを求めたことがあります。彼は何度も何度も、2つの単語を発声してくれましたが、私はその違いを聞き分けはできるものの自分で言い分けることができず、最後は「もっとちゃんと教えてよ!」とキレてしまったことがあります。舌の角度は?唇は?もっとちゃんと見せてと詰め寄ると、彼のほうが笑ってしまって、それがもう、その時は非常にむかついてですね……。いま思うと理不尽極まりないのですが。


パートナーがネイティブだと起こる問題

ネイティブと付き合うと、上記のように、「こっちは真剣に聞いてるのに、なんでちゃんと答えてくれないの!」や「私がこんなに英語で苦労しているのに、なんで助けてくれないんだ」といった不満が、出てきがち。これ、言う方も言われるほうも、つらいものがあります。下手したら、破局につながりかねない。

また、「ネイティブと付き合ってるんだから、英語ペラペラで当たり前」という周りからの目もあったりして、勝手にハードルが上がった気分になったり。

パートナーがネイティブだと、英語関連のさまざまなストレスが生じることも事実。だから何だって話で、愛情で結ばれている関係に終始することが大事で、それと英語学習はまた別の話。英語力の上達は、ほんと自分でコツコツやるしかないんです。

なので、第一弾の冒頭に戻りますが、「だからコツコツ努力しているあなたは正しい」ということが、私のお伝えしたいこと。積み重ねなくしては、誰と付き合おうが、結婚しようが、留学しようが、移住しようが、それほど大差はないと思っています。

という課題を、自分自身に言い聞かせつつ……。
私もまだまだ、まだまだ。英語をがんばっているみなさん、一緒にがんばりましょうね!!



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