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「女と男のいる舗道」のロケ地と謎

*前半部分は別のところで書いたもので、映画を観に行ったのは2017年春、桜の季節。今回の記事はそれに大幅に手を加えたものです。

 ソルボンヌ横のLe Champoで「女と男のいる舗道」がやってたのでウン十年ぶりに見てきた。
 最初にこの映画を観たのは名古屋の名画座のようなところで、日替わりの初期のゴダール特集をやってたとき。ゴダールは初めて見たのが「探偵」でなにがなんやら?という感じで、第一印象としてはこの人は合わないわ、だった。しかし初期の作品は写真や記事などを見るとどうにも気になる。行きたい!確か1、2回のみの上映、しかも平日の夕方遅くからであったので必死に仕事切り上げ定刻ダッシュで飛んで観に行ったなあ。「女と男のいる舗道」は感動した、というのとはちょっと違うけどアンナ・カリーナがすごく魅力的だったし、今までに見たことのない作りの映画で衝撃を受けた。まあ、「探偵」も見たことのないタイプではあったといえばそうなんだが。ほかにも短編作品なども上映されていて、こちらはずっとシンプルながら良かった。「勝手にしやがれ」はこのときだったかもっとあとだったか。
 ちなみにゴダールは70年代以降の作品は、一部の作品を除いては今でもなにがなんやら?である。

 ラストシーンは13区のエスキロール通り(rue Esquirol)17番地という記事を読んだ。エスキロール通りは比較的うちの近くで、ちょうどその桜並木は今が満開。自転車だと帰りの通り道になるので、天気もいいし、メトロは利用せず貸自転車のvélibに乗ってロケ地探索でもしよう。
 映画で見ると当時のこの通りは、郊外のすさんだ町のように見えるが、今は庶民的で閑静な住宅街。

エスキロール通りに並ぶのは薄ピンクの八重桜で「天の川」という日本の品種 
こちらでは比較的見かける(2017年撮影)

 映画で見ると車は角を曲がったあと止まるのだが、そもそもエスキロール通りは17番地付近には曲がり角なんてない。そもそもあの通りはずっと先の方以外は途中で曲がるところなんてないのだ。別撮りかな?映画ではよくあることだからと思ったが、そのシーンの画像と動画を見つけた。 
 ラストシーンの場所は、ジェンナー通り(rue Jenner)、サルペトリエール病院の塀の向かいを曲がったところだが、あの場所って曲がれたっけ?そもそもこの辺りは大きなアパートが数多く建っていて、ジェンナー通りもあの位置では曲がることはできない。

ラストシーン www.thecinetourist.net より転載
現在の通り(GoogleMap)

  細長い三角形をなすこの3本の通り。エスキロール通り17番地の向かい、地図上でいうと右側は大きなアパート群が建っている。真ん中のジャンヌ・ダルク通りは両側がアパート。ジェンナー通りは地図上左側、つまり上の写真が曲がってくるところ(地図の"ジェンナー通り"と文字のある辺り)は、やはり大きなアパートが。

上の画像の場所 同じサルペトリエール病院の建物が見える
しかし、その向かいは今はこうなっている 横に長い建物で手前までずっと続いてる

 かつてはこの上の写真のこの位置からエスキロール通りまで結ぶ Gustave-Mesureur通りという短い通りがあったようなのだ(下のピンクのラインのところ G.Mesureurと略されている )。

1948年の地図 真ん中あたりのアンダーラインを引いた通り

 ただ、映画の中では一回しか角を曲がらなかった。エスキロール通り17番地の前に止めるには2回曲がらないとそうならない。 Gustave-Mesureur 通りの突き当りがエスキロール通りの17番地だとすると、車の正面に来るはずだけど、映画ではそうではなかった。どちらにしてもジェンナー通りを曲がってすぐのところで車は止まる。
 下はラストシーン。思い切りネタバレなので、まだ観てない方はご注意!

 このシーンは本当にエスキロール通りなのだろうか

エスキロール通り17番地とされる映画のラストシーン
現在のエスキロール通り17番地 Tatooスタジオが入っている

 エスキロール通りの手前の建物とその向こう側の2階の窓の数は一致してるが手前の建物の幅が違うような‥映画の方が少し勾配がついているようにも見えるが。ラストシーンはどう見ても、今はもうないGustave-Mesureur 通りだという気がするが実際はどうなのであろう。 
 ネットで調べる限りでは、このラストシーンがエスキロール通り17番地としてあるのはすべて英語のサイトなのだが、何を根拠としているのだろう。このシーンに出てくる "Restaurant des Studios" がかつてあった場所がそこなのか、それともシナリオに書いてあるのか。今度図書館でシナリオあるか見てこようかな。

 というわけで、考えてみたらどうでもいいことのような気がしてきたけど、こういう検証は結構好きなのだ。
 さてGustave-Mesureur 通りはもうないが、ほぼ同じ位置にある小さな公園、Gustave-Mesureurスクエアとしてその名前は残っている。Gustave Mesureur は19世紀の政治家だそう。

Gustave-Mesreurスクエア入り口
公園の中右側の建物の向こうががジャンヌ・ダルク通り 左の方はエスキロール通り


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