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個人企業主になるのに苦労した話

  最近、個人で受ける仕事が増えて、以前はそういった一回きりの仕事でも臨時雇い扱いで会社の方で諸々の手続きをしてもらっていたが、個人事業主(フランス語ではmicro-entrepreneur または auto-entrepreneur)として登録した方がいいということになり、そうすることにした。

 これから書くことはこの手続きをしようとしている、またはすでにしたけど苦労したという人以外には全く面白くもなんともない話だと思うけど、どなたかの参考になればと思って、また人に聞かれることもあるかもしれないので、備忘録としても記すことにした。
 書き始めた4月8日現在まだ現在進行中で、正確にはタイトルも「苦労してる話」だが、訂正事項も出てくると思うし、サイトのインターフェースも変わるかもしれない。できるだけアップデートしていきたいと思うが。
 書いているうちにかなり長くなってしまったので、見出しで流れとポイントを書いて、あとは参考として自分の経験談や失敗談を時系列に並べてみた。

1. Urssafに自分のアカウントを作る。
しかしその前にINPIのギシェユニークで活動内容の申告を。

 手続きは簡単だと聞いた。以前はUrssaf(社会保障徴収機構)のサイトでちゃちゃっと入力するだけ。実際に身内を含めやった人たちに聞いても、みんな「細かいこと忘れたけど簡単だった」など印象に残らないくらいあっという間にできるとのことだ。
 いまでもUrssafの入力欄は至ってシンプルだ。名前、社会保障番号、電話番号、メールアドレスなどを入力するのみ。しかし、今はいきなりこれを入力しても、「入力は無効です」というエラーメッセージが出る。 
 2023年1月1日以降やり方が変わったらしい。
 Urssafのサイト個人事業主向けのページを開くと、手順と流れの説明が表示される。(下図)

矢印のボタンをクリック

 ステップ1としてまず、INPI(Institut national de la propriété industrielle:産業財産庁)という機関が管理をしてるギシェユニーク(Guichet unique: 直訳すると「唯一の窓口」日本では同様のサービスとして、『ワン・ストップ・行政サービス』というものがあるらしい)で活動内容の申告をすることから始めなければならない。最初に画像の矢印のボタンをクリック、そうするとINPIのサイトのギシェユニークのページに飛ぶ。そちらで詳細を入力ののち、それがINSEE(フランス国立統計経済研究所)に認証され、しばらく待って登記されるとやっとUrssafで個人事業主として登録ができるという仕組み。
 しかしこのギシェユニークがくせ者であった。少なくともわたしにとっては。以前は先にUrssafでアカウントを作れば、そのあとこのステップ1の面倒な部分は向こうでやってくれたので、われわれにとっては楽だったわけだ。

2. INPI/ギシェユニークにログイン。いろいろなログインのしかたがあるけど、アプリをダウンロードしてFranceConnect+でログインしましょう。

 まずはログイン。しかし、なんだなんだ、3種類ある。FranceConnect,  FranceConnect+, INPIConnect どれでログインすればいいの??

 FranceConnectは様々な公的機関にアカウントがあればそちら経由でログインすることができるシステムだが、結論から言うと、FranceConnectの拡張版である FranceConnect +でログインしましょう。FranceConnect+ はLa Poste のアプリ L'Identité numériqueをインストールして本人認証、これでログインすればデータ入力後の電子署名は問題なくできる。L'Identité numériqueの本人認証は自力でうまくいかなければ、郵便局の係員にお願いしましょう。
 
わたしは当初そんなこと知らなかったし、L'Identité Numérique のアプリもダウンロードしてなかったので、まずINPIからログインして、それで入力していた。それでちょっと困ったことになったのだ。またそれは後述。

3. プロフィール、活動内容など入力、そして電子署名をした後に送信

INPIの手続きフォーム一覧の画面 
ほかに商標、特許などの項目があり、右の方にもメニューは続いてる

 さていずれの方法でログインしても、まずこのメニュー画面が出てくる。一番左の「事業」という項目、一番上の「起業届を提出する」をクリックし次の画面で、「会社を作る」をクリック、そのあとどんな形の会社かという質問があり、選択肢は個人事業、法人、共同運営の3つ。個人事業(Entrepreneur Individual) を選択すると、その下に質問が現れる。その会社は小規模事業家であるか、すでにフランスで自営業を営んでいるか、など。それに答え、次の画面に進み、名前、住所、生年月日、出生地、国籍 etc. など入力し、次に進む。
 しかし、わたしの場合ここで、「同じ名前、プロフィールでSIRET番号(事業所識別番号)があります」などというメッセージが出てきた。
 以前、イラストの仕事をしたときにSIRETおよびSIREN(企業識別番号)は取得している。ただその時代は絵画やイラストはUrssafではなく、Maison des Artistes(著作権など作家に関しては当時はAgessa 現在、両者は併合されてSécurité sociale des artistes auteursとなっている) というところに登録するようになっていた。しかしSIRET/SIREN番号がすでにあるのであれば、変更扱いになるようだ。なので、Urssafには登録をしてないが、すでにSIRET/SIREN 番号を取得している場合は、2番めの「変更の手続きをする」をクリックする。
 
 再び必要事項を記入。SIRET/ SIREN を取得したときに、名前や住所、活動内容などは登録済みなので、それらはすでに入力してある。ただし住所は、10年前に引っ越してるので古い住所のままだ。あと活動内容という欄はアーティストとして登録したのでそれも入力済みだが、今受けている2種類の仕事はアート関係ではないので、2種類追加しなくてはならない。
 なので、変更内容としては、住所と活動内容の追加。あとはいろいろな質問、選択肢の中にチェックを入れなければならない。
 わたしの場合は変更だったけど、新規の場合も入力することはだいたい同じだと思う。

 活動内容は、大きなカテゴリー(カテゴリー1)から細かいカテゴリーに絞り込んでいくが、最後の業務内容(カテゴリー3または4)を選ぶとき、自由業形態の活動 (activité de forme Libérale)と商業形態の活動(activité de forme Commerciale )があるので、それを間違えないように注意しなくてはならない。個人事業主の手続きする人は自由業形態の場合がほとんどだと思うが。わたしはこれでミスして数日間ロスした。こちらも詳しくは後述。

アンダーラインの部分、ここに選択した業務内容が自由業形態か商業形態か書いてある

 以下、わたしの経験談。不備があると、赤字でエラーメッセージが出たりするが、なんとかクリアして、最後に電子署名をして送信。‥‥しかし、これが最初の大きな関門となるのであった。電子署名ができない!というか、説明画面にある、電子署名のボタンが表示されないのだ。
  INPIは電話での問い合わせも可能なので、電話して聞いてみた。すると、フランス国籍保有者でないとレベル3の電子署名が必要であるから云々かんぬん、って全然わからないので正直にそれを言うと、レベル3の署名はFranceConnect+でログインすることにより可能となるとのこと。電子署名は4段階のレベルがあり、数字が上に行くほど身元確認が厳しくなるということだ。

 さっそくFranceConnect+のログインに必要な La Poste のL'Identité numérique のアプリをスマホにインストールする。アプリで身分証明書をスキャンし、さらに息子に手伝ってもらいスマホで自分の顔を正面、両横から撮影し、認証を行う。しかし、翌日La Posteからメールが来て、身分証明書と顔写真が同一人物であるという認証ができなかったという返事。再びやり直したが、また認証できず、のメール。ああ、もう!なんだか嫌がらせか!
 途方に暮れつつ、こんどはフランスの郵便局 La Posteに電話してみると、それでは直接郵便局で係員に認証してもらうといい、ということだった。これについてはまた近々詳しく記事を書くつもりだが、レベル3、4の電子署名の身元確認は、信頼できる第三者機関や公的な機関が、個人の身元を確認し認証をしてくれるということだ。L'Identité numérique の場合は La Posteが開発、管理してるので、郵便局員によって本人確認をしてもらえるというわけだ。さっそく郵便局に出向いて、郵便局専用のスマホを使って、認証してもらえた。

 そのあと、家に戻りパソコンから(もちろんスマホでもいい) INPIのログインページで FranceConnect+をクリック、次にL'Identité numériqueという文字とロゴが出てくるのでさらにクリックすると、電話番号を入力する欄が出てくる。そこにスマホの番号をクリックすると、スマホのアプリが立ち上がりあらかじめ設定しておいた、4桁のコードを入力するとログインできる。
 さて、ふたたび入力フォーム、最後のページにいくと、ついに!「電子署名をする」のボタンが現れ、無事変更したフォームを送信できた。
 というわけで、L'Identité numériqueの認証は自分でやるより郵便局の係員に頼んだほうがわたしはずっと簡単だったので、こちらを勧める。
 L'Identité numériqueでのログインは、上記のようにスマホと連動して、毎回コードを入力するというセキュリティ的には安心だけど、ひと手間かかるので、INPIからの返事を確認したり進み具合を見たりするのは、INPIのアカウントでログインしてもできるし手軽にできるので併用している。

おまけ:さまざまな直し、バグもあってにぎやかだ

 さて以下はまたわたしの経験談。
 2日後、直しを求められる。事業所の住所についての質問、はい/いいえで答えるものに矛盾があったらしく、これかな?思うところを直して再び送信。翌日OKが出たが、また数日を別の件で直しを求められる。また、住所がなんたら、と書いてある。しかし、前回もそうであったが、具体的にここをこうしろ、ではなくなんかぼかしたような説明で、特に2回目は全く要領を得ない説明で何が問題なのかわからないので、わたしのフランス語理解力に問題あるのか?とネイティブの家族に見せても、やはりわからぬということで、再び電話して問い合わせてみた。

理解不能。。

 そうしたら、1つの変更フォームでは、2種類の変更はできないということ。わたしの場合、住所の変更と活動内容の追加をしたので、それがいけなかったらしい。だったら、入力した時点でそのようなエラーメッセージ出るようにしてほしい‥。直しの説明にもそんな事書いてなかったし。2箇所変更するとバグるようなことも言ってたので、あの奇妙な説明はそのせいか。
 今回は新規で申告する場合も、いずれにしても今後変更することもあるかもしれないので、1つのフォームで変更は1種類のみ、ということを知っておくといいかも。

 まずは活動内容の追加を先にする方を勧められ、それがINSEEによって認証されたら住所の変更フォームを送るようにとのことだった。
 ということで、また昔の住所に戻して、変更点は活動内容の追加のみで、フォームを再送信した。そうしたら、その日のうちにINSEEから認証されたが、今度は TCOの認証待ち、と出た。TCOってなに?調べたらGreffe du Tribunal de Commerce(パリ商業裁判所登記局)のことのようだ。
 何日もそのままだったので、また電話で問い合わせると、パリ商業裁判所にデータが送られたということは、活動内容の一つが商業形態になっているからだが、それで間違いはないかと聞かれた。えっ?と思い確認すると、第1のカテゴリーが1番大きな区分で、第2,第3と絞り込んでゆくのだが、追加した活動内容のうち1つは商業形態のものを選んでしまった。

再び同じ画像ですが、アンダーラインの部分をちゃんと確認しよう

 最初は画像の上のように商業形態の活動となる業種を選択してしまったのでパリ商業裁判所にフォームが送られ、審査待ちとなったわけだ。なので第3カテゴリーから業種を選び直したら、よく見るとわたしが普段している業種そのものが出てきた。そして下のようにそれはちゃんと自由業形態の活動となっていた。これはわたしの注意不足だった。

 訂正して再送信したら、その日のうちに書類自体が却下となった。パリ商業裁判所の管轄ではない、ということだろう。しかも拒否されたらまた、最初からやり直し。すぐ前の段階に戻してくれればいいが、できないということだった。まあ一度やってるので、大体はわかるからはじめてのときのようなことはないが、いくつか、これはどっちにチェックすればよかったっけ??というのがあった。最初にフォームを記入てから2週間、たったそれだけの間で忘れてしまうのは年のせいか。
 なんとか、全部記入し最後の署名に進もうとしたらまたエラーで進めない。セカンドハウス住所が記入されてません、と出る。そもそもセカンドハウスなんて持ってない。またINPI 電話したら、ああ、それバグだから、時間置くかログインし直してと言われた。ただでさえ、わかりにくいのにバグまであるとは!
 ログインし直してもだめだったので、時間置くよりバグのあるフォームは破棄して、また新たに作り直したほうがいいかな?と思い、そうした。今度はスムーズに送信できた。
 
 さて、その後2日ほどでINSEEから認証されたので、次は住所変更。今度は最初から記入しなくても会社の情報(Informations de l'entreprise)のメニュー画面で「事業の変更」というところをクリックすれば、あとは住所の欄だけ変更すれば良い。今度は何の問題もなく送信でき、やはり2日ほどで認証された。

 しかし、まだUrssafのアカウントは作れない。あいかわらず「入力は無効です」というエラーメッセージが出る。 
 今度はUrssafに電話して聞くと、INPIで認証されてからしばらくまた時間かかるとのこと。4週間から10週間ということだが、「そんなに待たなくちゃならないのですか?もう2月、3月分のインボイス作りたいのですが。」と、わたしの状況を説明すると、「ではサイトの連絡先、メールでの問い合わせフォームから直接、個人企業主としてUrssafに加入したいというメッセージ記入の上、INSEE認証済みならば、INPIのサイトから会社の活動内容など概要ダウンロードできるはずなので、それを添付して送って」と言われた。そうすれば、加入手続きを急ぎでやってくれるのか、と思ったが2週間経った現在、まだできていない。まあ、もともとが4週間から10週間だからと思いつつ、なんか心配なので予約をとって今週直接Urssafの窓口に出向くことにした。

 と、いった感じで難航してるけど、それぞれの機関に電話で問い合わせる前に、解決策はネットで出てこないだろうかと、この件についてフランス語、日本語でもいろいろ検索したりしたのだが、日本語の方はINPI、ギシェユニーク(Guichet unique) などをキーワードに検索しても、マニュアル的なもの、経験談的なブログ、SNS を含め全くと言っていいほど日本語のページがヒットしない。Urssafはヒットしても2023年以前の記事であったり、以降だとしても新しいやり方については記されていなかった。フランス語では多少出てくるものの、わたしの知りたいものとは微妙に違う。

 2023年以降、新規で個人事業主の登録をした、または現在している日本人はどうしているのだろう?どんくさいのはわたしだけ?
 とにかくわたしは何度もつまづいたり、やり直したりして、なんだか非常に厄介な印象を受けられたかもしれないが、最初から手順をわかってやればそれなりにスムーズに進むと思う。(つづく)

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