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好きなものは何?と聞かれて答えられなかったことがある。

今から6年ほど前、ちょうど第一子を出産して2ヶ月後だったと思う。

「まるきちゃんは何か、好きなものとかあるの?」

雑談の中で出た義母のたわいもない質問に、私はすぐに答えることが出来なかった。

好きなものがないわけではなかった。私の人生は、アイドルを追いかけたり、同人誌即売会に行ったり、とにかく好きなことばかりする趣味に生きる人生で、きっと当時も、好きなものはたくさんあったはずだ。でも、どうしてだろう。その時は、なにも好きと思えなかった。

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そして、今、「何が好き?」と言われたら私は迷うことなく"SNS"と答える。私はSNSが好きだ。

SNSとはソーシャルネットワーキングサービス(Social Networking Service)の略で、サービスに登録した利用者同士が交流できる会員制のWebサイトだ。
代表的なものTwitterやInstagram、TikTokがある。いまや、日本国内におけるSNS利用者数は年々増加傾向にあり、2020年末には7,975万人に達する見込みらしい。(※1)
私を含め、人々を魅了する何かがSNSにはあるのだ。

私はSNSに何度も救われてきた。
SNSは家に居ながらにして、世界中の人々と繋がれる。例えばTwitterでは、ちょっとしたひとりごとを呟いたり、悩みを吐露したりと自分の中の行き場のない気持ちを置きにくる一方通行的な使い方をするのが一般的だ。他にも、イラストや写真を他人に見せたり、同じ悩みを抱える人を見つけ、コミュニケーションをとるという使い方もできる。

出産を終え、自宅で一日中赤子と2人きりという生活をしていた私は孤独だった。子供と接する機会が全くない人生を歩んできたため、赤子と過ごす日々がこんなにも孤独だと知らなかった。
夫が帰宅するとすぐに「ねえねえ、今日ね!今日ね!」と話したがった。とにかく人間と話したかった。しかし、夫も仕事で疲れて話を聞く余裕がない時もある。冷静に考えればわかるが、当時の私は自分の話を聞いてもらえなかったことが悲しくて寂しくてたまらなかった。

そんな気持ちを抱えて、なんとなく始めたSNSがTwitterだった。初めての育児で悩んでいるとき、同じ悩みをTwitterで呟いている人たちを見つけたときの衝撃はすごかった。
「こんなことで悩んでいるなんて母親失格じゃないか?」というマイナス思考は、同じことで悩んでいる人たちの呟きを見ることで全くなくなった。
解決方法を知りたいなら、今の世の中にはインターネットサイトも育児書もいくらでもある。でも、どれも私が欲しかったのは解決法ではなかった。育児という孤独の中で人間と関わることができたことこそが、私の求めていた解決法だった。

さらにSNSでは違う自分になれた。
SNSでの私は母親でもなく、妻でもなく、しがない会社員でもない”まるき”という人間になれる。”誰かと繋がりたい”と始めた独りよがりな発信が、いつしか”誰かのためになりたい”という思いに変わり、発信をするたびに誰かに感謝されるようになった。気付けばInstagramのフォロワーが10万人を超えた。
SNSのすごいところは、誰でも何にでもなれるところだと思う。何にでもなれるし、何にもならないでもいい、自分のしたいことをできる。

令和の今、インターネットを介した出会いはごく普通に行われているが、ネットの出会い=怖いというイメージがあった私にとって、ネットを介した出会いは衝撃の連続だった。
SNSでの出会いは、出会う前から文字や画像を介してその人のことを知っている。もしかしたら、毎日顔を合わせる同僚なんかよりも人としての”核”の部分を知っているかもしれない。それでいて私がその場で発言したことが、子供にも、夫にも、仕事にも影響しない。SNSは現実世界と切り離されたところにある、もうひとつの現実である。

そして気づいた。
私は、社会的に分断された日々がすごく辛かったということに。子供が生まれたから子供だけのことを考えなきゃいけないと勝手に思い込んでいたことに。
義母の質問に答えられなかったのは、"私はお母さんだから我慢しなきゃいけないの?"、”幸せなはずなのに、なんでこんなに辛いの?”と、抵抗する自分の存在を感じるのが嫌だったからだ。
自分に向き合い、その結論が出せたのは、本音をさらけ出せるSNSとそれを通じて出会えた人たちのおかげだと思う。

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SNSでは何にでもなれる。自由な世界がある。その世界を通じて、現実世界で絶対に出会えなかった人たちに出会える可能性がある。縁がある。こうやって昨日まで知らなかった私のnoteを読んでくれているのも、SNSの縁だ。

感情を動かされる何かを見つけたり、情報を交換したり、時に暴言を吐かれたり、SNSを介して繋がれる世界は無限である。SNSが人々を魅了するのは、無限の世界をいつでもどこでも感じられるからだ。

母であり、妻であり、しがない会社員である私は、”まるき”としてこれからも発信を続けていく。私はSNSが好きだ。

(※1)ICT総研「2020年度 SNS利用動向に関する調査」より引用

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