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横分け

 中学2年の頃。周りは小学校8年生の子供っぽい一群と、高校マイナス2年の大人っぽい、または大人になりたい一群に分かれていた。もっとも小学校8年生たちも、しばらくしない内に高校マイナスチームの一員になっていくのだが。

 高校マイナスチームのメンバーたちは他人の着る物や持ち物を気にした。モテたり嫌われたり、くっ付いたり別れたりすることが人生における最大関心事となり、女子は化粧の真似事をし初め、男子はアウトローなヤツだと思われたがった。
 そして私は明らかに この中2の時に色気づいた。いわゆる思春期後半に誰もが経験する、あのウレシくもハズカシい独特な時期である。巷にはヤンキーと呼ばれるヨタ者も多かったが、私はあくまで小ジャレたシティボーイを目指したのだ。当時の青少年が読む人気雑誌は『ポパイ』や『ホットドッグ・プレス』だったが、この2誌はどちらかといえばカジュアル~アウトドア系だったから、私の教科書は月刊誌である『メンズ・クラブ』一択だった。洗練されたセンスが光る紙面には心酔したものだが、なんせ高かったので毎月買うことはできなかったことを思い出す。
 私が特にこだわったのはズバリ髪型だ。アイビーがメインとなるメンズ・クラブのモデルの髪形の多くは7:3だった! 間違っても男性アイドルがやっていたようなロン毛のパーマスタイルなどではない。私も7:3でキメようとしたのは言うまでもない。当時はやっていた『ブラバス』シリーズのヘアトニックを振りかけた後、同じシリーズのヘアリキッドをつけて櫛目を付けた7:3に分けるのだ。『MG5など子供が使うもんだ!』などと言いながら、銀行の課長のような髪型をしたガキが、自分は大人なんだぜ!と自己陶酔していたわけだ。

 しかしあの7:3というスタイル、今ではユーチューブで欧州車から降りてくる金持ちの中国人くらいでしか目にしなくなったが、理容の国家試験ではそのスタイルが今でも課題である。本稿の冒頭に掲げているテーマ画像は、そのスタイルを作る前と、仕上がり後のモデルウイッグ(人形)の状態であるが、実物を見た業界外の人は必ず驚き、また爆笑する鉄板ネタでもある。

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