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美容文化論 ー日本髪 種類①ー

《日本髪の型》
1.島田髷(しまだまげ)

高島田(島田髷の一種)

 〽あなたのリードで島田も揺れる〜 という芸者さん目線の悲しい恋の歌は、戦争の爪あとがまだ残る昭和27年発売の『ゲイシャワルツ』である。この歌を知っているとなれば、その方はきっと70歳以上である(笑)

 この島田髷は芸事とは切っても切れない。なんとなれば今芸者さんと呼ばれる方々の髪型(カツラ)はみんな島田髷だからだ。

 京都の舞妓さんは『割れしのぶ』という特別なヘアスタイルを自分の髪を使って結う。しかし数年の修行時代においていくつかの髪型を経て芸妓になると、伝統としてこの島田のカツラに変える。このあたりのことは話のネタが多すぎるので別稿にて改めて語りたい。

 島田髷の構造を あえてその専門でない人に説明しようとすると、ポニーテールにした髪の束を一度後ろに折ってからすぐUターンさせるように 前に折り返す形式になっている。男性のいわゆる『丁髷(ちょんまげ)』と構造は同じである。少しわかりにくいが、画像を見ていただくと ポニーテールに結んだ所(『根』という)を丈長(たけなが)と呼ばれるキラキラの飾り紙で巻いている。根でまとまった髪束は上記の理屈でUターン(後ろ向き➡︎前向き)させ、根の上でこより状の紙紐である元結(もっとい)で結び留められている。
 根も髷も高く作り、飾りを付けた島田髷を『文金高島田』と呼び、今では花嫁さんにしか使わない特別な髪型としてあまりにも有名だ。綿帽子や角隠しの下にはこの髪型がある。

2.勝山髷(かつやままげ)

丸髷(勝山髷の一種)

 ポニーテールを島田髷のようには後ろに折らず、そのまま前方にもってきて 毛先を前髪の後ろで内側に折り込んだスタイル。幕末〜大正時代頃までは『丸髷』という名で、既婚女性の最もポピュラーな髪型だった。

 時代ものの映画やドラマなんかではこの髪型以外のスタイルが出てくることは少なく、『日本髪』という髪型は他には存在しないかのようだ。
 『丸髷』は『水戸黄門』にもバンバン出てくるのだが、水戸光圀が生きた時代は江戸初期が舞台である(黄門様は徳川家康の孫であり、彼が生きたのは江戸時代が始まってから数十年しか経っていない)。その頃街を歩く女性たちはまだ『結う』髪型をしておらず、自然に垂らした髪を肩や背中のあたりで簡単にくくっている程度だ。よって江戸時代の全期間を通じ、また未婚既婚や年齢はお構いなしに、女優にこのスタイルのカツラをとにかくかぶせるのは、私に言わせれば なかなかにギャグであり 残念でもある。

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