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不戦の誓い

 さて私も還暦、ええ歳である。そろそろ大人の落ち着きも欲しいと思っているところだ。60回目の誕生日に誓ったことがある。それは『不要な戦いはしない』ということだ。意味の無い勝負はしない。その誓いから少し時間が経った。かなり頑張っていることは事実なんだけど、自身に課したその約束を守ることは実際には至難の業であり、なかなか実現できなくって自分でも嫌になっている。

《道で》
 車を運転していて最も嫌だなと思うドライバーは、自分の前に他車が入ってくるのを嫌がって阻止する人だ。私がウインカーをつけて駐車場から道に出ようとする時、あえて私と目を合わせず車列に入れようとしない人。横から私の車が入れないように、前車との間合いを詰めてしまう人がいる。もちろん私自身はそんなドライバーには絶対なりたくないし、ならないようにするし、強引に割り込んで来た車があったとしても、とにかくグッと我慢して入れてあげる。戦わない、戦わない。


《報復》
 全ての人をフラットに扱う。イヤなヤツに対しても一切報復をしない。実はこれはなかなかに難しい。普段から意地の悪いヤツはどこの世界にもいるものだが、そんなヤツにも他と同じく接する。『私は報復なんてしない!』と思っている人は多いかもしれないが、いつも意地悪な態度を取ってくるイヤな感じのヤツでも、困っていれば声をかける。『ザマァ見ろ』とか『いい気味だ』とは思わないようにする。困っている人に手を差し伸べないで放置するのは報復であると肝に銘ずる。その人からは散々冷たくあしらわれていたから、こちらも冷たく接したい気持ちには蓋をして、『何か手伝いましょうか?』と言うのは菩薩の領域であり、容易く達成できるものではない。

《捨て台詞》
 『ほんなら初めから言えよ!』とか『偉そうに言うならお前やってみろよ!』とか『だからオレはアカンって言ったやろ?』みたいな、あと出しジャンケンみたいなことや、それを指摘したところで事態が変わらないことは口にしない。その一言をグーーーーーーッとこらえる。

《駅で》
 駅によっては改札機が一方通行ではなく対面で行き来する場合がある。
 まず改札機を通過しようとする私と、反対側から来た人とで同じ改札機を通すことになった場合は、少々こちらが早かったとしても必ず相手に譲ることを自分の中のお約束にする。そんな場面は時折あるけど、間一髪のタイミングの時も少なくない。
 中にはこっちと自分が微妙なタイミングだとわかれば急に急いで小走りでその競争に勝とうとするセコいヤツまでいて呆れることもあるけど、そんな時にも笑って譲る。改札機の競争はそいつの勝ちだが、人としては私の勝ちだと思いながら。

 なぜなら私は還暦だから。あくせくしないのである。不要な戦いはしない、、、のが理想だったのだが・・・(笑)

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