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インスタントラーメン

 家事など何もできない父が、息子である私と兄2人の面倒を見ないといけなくなった時期があった。私が小学校の高学年から中学時代にかけての話である。家計は親父が作った借金のせいで火の車、とにかく逆立ちをしても金がない毎日だった。私と兄で順番に米をといだり買物に行った。小遣いなどない。一般家庭ではあったりする誕生日やクリスマスの小さなパーティーに誘われることもあったが、プレゼントを準備できない私は参加することはなかった。

 父は漁師だったから魚をさばいて煮たり焼いたりはできたものの、スタンダードな家庭料理は知らなかった。そんな父が苦労して私たち子供のために毎日炊事をしてくれた。有難くもったいないことなのに、子供である私達はそんな父にも不満ばかり言っていた気がする。もしあの頃に戻れるなら、生意気な顔をして父に文句を言ってる昔の私の頬を3•4発ほど張り倒したい。
 しばしばインスタントラーメンが夕食の食卓に上がった。小学生の時分はなんとも思わなかったが、思春期を迎え、しみじみと『ウチには金が無いんだなぁ』と思ったことを覚えている。

 これまでにインスタントラーメンをいくつ食っただろう。当時はワンタンメンやサッポロ一番(塩、しょうゆ、みそ)なんかが主流だったけど、日清の出前一丁が出た時にはちょっとした騒ぎになったと言っても過言ではないだろう。ごまラー油という名前で別の小袋がスープの他に入っていたことで、グッと特別感が増した。サッポロ一番の塩ラーメンにも別の袋でゴマが付いていたが、あれには私はあまり特別感を感じなかった(兄はそれが一番だと言っていたが)。
 私見ながら出前一丁の完成度の高さは群を抜いていたように思う。大人気番組である『ヤングおー!おー!』にレギュラー出演していたザ・パンダ(4人の落語家)のTVCMも流行ったんだけど、なんといっても当時初めて食べた時の衝撃は忘れない。もちろん今でも美味いんだけどあの時のときめきは特別だった。

 さて、インスタントラーメンを語る上ではチキンラーメンは外せない。朝ドラ『まんぷく』では、チキンラーメンを世に広めた日清食品創業の安藤百福夫妻が描かれていた(安藤さくらさん演じる奥さんがメインだ)。それまで世の中に無かったものを世に送り出すという、生みの苦しみをハラハラドキドキしながら毎回楽しみにしていた。子供の頃から、他のラーメンとは違いチキンラーメンには何故麺そのものに味を付けてるんだろう?って思っていたけど、その答えはドラマの中に盛り込まれていた。その後のカップヌードルにまで繋がる夫妻や周囲の意志ある人たちの奮闘には大いに刺激され共感したものだ。実はその朝ドラ『まんぷく』には我が校の生徒たちも、神戸で収録した最終回のラストシーン(歩行者天国でカップヌードルを手にする若者たち)のエキストラとして多数出演してるんだぜー!

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