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心にコタエた歌 4

《織江の唄》山崎ハコ

炭鉱の町に生きた青年の人生を描く『青春の門』
その青年に恋心を抱く少女の運命が辛い・・・

 『青春の門』の主題歌。日本には今よりずっと貧しい時代があった。貧しさは希望や向上心も生み出すが、同時に寂しさや悲しさであり、怒りや悔しさであり、さらにあきらめや絶望の母でもある。

 人間にとって 自分の力ではどうしようもない時に『空を見上げるしかないランキング』の第1位は 金がないことだろうか。貧しい家に生まれたこの歌の主人公である少女は、中学卒業と同時に口減らしとして、家を出て北九州は小倉にある娼館またはそれに近しい処に奉公(年季奉公なんだろうか・・・)する運命であることがわかる。
 本人も仕方ないことだと悲しい納得をしているが、見ず知らずの男どもの慰みものになる前に、淡い恋心を抱いていた 信介 という幼なじみに、最後に会って男女の契りを交わしたいと願う。『信ちゃん』『信介しゃん』そう呼びかける少女の切ない思いに胸が詰まる。年季奉公といえば 年季が明けるまでは無給か、あったとしても小遣い程度であることが普通だ。その代わりに食事や最低限の着るものが支給される訳だ。

 ほんの最近まで自分が在籍していた中学の校舎の屋根が、涙でぼやける。好きな人のこともその他の色々なことも全部あきらめ、少女はバスに揺られている。何の期待も持つことができない小倉の街に向けて。歌詞に出てくる田川という街や、カラス峠を越えたという情報から、地図に当てはめてみると どの辺りが歌の舞台だったかがわかるが、もはやその当時の炭鉱の町の様子は『歴史博物館』にしか残っていない。

〽・・・
   バスの窓から中学の
   屋根も涙でぼやけとる
   信ちゃん 信介しゃん
   うちはあんたが好きやった
   ばってんお金にゃ 勝てんもん・・・


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