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サッカーに心を揺さぶられることは、人生にとってプラスなのだろうか 2019アウェイ京都 観光編

サッカーファンのみなさん、こんにちは!
あなたの応援してるチーム、勝ててますか?
週末にやってくる試合が苦しくはないですか?

人生、何事も思い通りにはならないものです。サッカーの勝敗ともなるとなおさらです。
そんな悩みに対して答えてくれる、ありがたい「教え」について、京都のお寺で聞いてきました。

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著者 円子文佳(まるこふみよし)
Twitter https://twitter.com/maruko2344

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3月17日、柏レイソルのアウェイ遠征で京都に行ってきました。

試合編はこちらです。

もう2か月前の話になるのですね。柏は京都戦までは開幕4連勝でした。その後現状はしばらくあまり勝てていませんが、それでも僕は、断然ネルシーニョ絶対支持です。

サッカーの話は置いといて、今回は京都の観光編というか、お寺を訪問して考えたことを書いていきます。


・アンドロイド観音の教え

今回の京都では、このツイートを見て「アンドロイド観音」がいるという京都・高台寺に行ってきました。

アンドロイド観音「マインダー」による説法、というアトラクション?でした。
http://www.kodaiji.com/mindar/
(5月6日で一般公開は終了になっています)

さてこのアンドロイド観音ですが、仏教の概要と、「空」という思想について語ってくれました。

仏教は宗教といっても、一神教的な宗教観とは大きく異なります。

「人々を苦しめている根本的な原因は何か」「苦しみから解放されるにはどうしたらよいのか」ということが仏教のテーマです。その解決法として超越的な話ではなく、人間の身体の構造や心の働きのメカニズムに基づいた、実践的な方法を色々と提示してくれています。「禅」の思想が今でも生きていることからもわかるように、現代の生活にも応用できる部分が多いです。

仏教をマスターすると、この世に存在する様々な苦しみや悩みとは自分の認識の問題に過ぎない、と悟ることが出来ます。その悟りの境地こそが「空」だということです。


・サポーターが背負う「業」

さて、この思想をサッカーのサポーターも応用できないか考えてみます。

応援しているチームが勝てないと、イライラしたり、落ち込んだりします。試合中、リードしている状況でも「追いつかれたらどうしよう」とドキドキします。敗色濃厚で残り時間が少ないのにファウルとかとられると、正しい判定に対しても「何でだよ!」と怒ったりもします。

こういった心の動きはなぜ起こるのでしょうか?それが人間の「業」ということになります。サポーターは自分たちの未来に、都合の良いことが当然起こるべき、と考えています。試合について、勝つことを期待しており、そうならなかった場合には怒ったり、悲しんだりします。それが「苦」です。

この「苦」ですが、実は人間の心は苦しむことを歓迎するように出来ています。わざわざ負けが込んでいるチームを応援に行って、やっぱり負けたらヤジを飛ばしたり暴れたりする人は、自ら「苦」を求めてスタジアムに行っていると言えるでしょう。そういうサポーターは日本に限らず世界中にいるので、人の心のヒューマン・ユニバーサルであると言えます。


・苦しみが生まれる進化生物学的な基盤

「自ら苦しみを求める」と言われても、にわかに信じがたい人もいるかもしれません。なぜ人は苦しみをわざわざ求めるのでしょうか?

それは「ヒトはそういう風に出来ている」からです。

人間は自分にとってマイナスになるようなことがあると、脳内に「逃げろ!」という指令の神経物質が発射される仕組みを持っています。生物的にはそれが「苦しみ」の正体です。辛い感覚なのですが、この信号によって危険を避けることができるため、ヒトの進化の過程では生存に役立っていました。そのため人間の脳は「不快信号が出ることは良いことだ」と感じる仕組みを持ってしまっていて、人間は自ら「苦しみ」「不快」を求めて行動してしまう……というのが、現代的にブッダの教えを捉えなおした理論になります。

そして麻薬のように、人間の神経伝達物質にも習慣性があります。「苦しむ」のがクセになってしまうと、日常のちょっとした刺激に対してもイライラして怒ってしまう人になります。応援しているチームが低迷しているときなど、思い当たるサポーターは多いでしょう。



・「目覚めた人」になるためのサッカー観戦術

「ブッダ」とはサンスクリット語で「目覚めた人」という意味です。彼は悟りを開き、こう呼ばれるようになりました。

さて、我々が悟りを開き、サッカーチームを応援しても苦しまないようになるためには、どうすればよいでしょうか?


応援しているチームが負けているとき、「苦しい」と感じます。しかしこれは試合を見ていれば誰にでも起きることではなく、実は自分が「不快なものである」と認識してしまっていることが原因です。

例えば、2点先制したものの、その後3点取られて逆転負けした試合があったとしましょう。もし自分の応援しているチームが逆転負けした場合、そんな残念な試合の後には怒りや情けなさなど「苦」の感情がすさまじく押し寄せて来そうです。しかし、特にどちらも応援せず試合を見ていた人がいたら、同じ2-3の試合でも「いっぱい点が入って面白かったね!」みたいにポジティブに感じることでしょう。目の前で起きている試合という「刺激」に対してどう意味付けするかは、自分が決めているということになります。

実は自分が決めているということは、自分を苦しませるような試合の見方、感じ方をしないように、自分でコントロール出来るはずです。仏教的には「自分の感情や考えへの執着から苦しみが生まれる」という教えがあります。ということは、サッカー観戦に応用すると、目の前の試合から自分の感情を切り離し、「足速いなあ」「左サイドからの攻撃に対応できていないなあ」「ボランチがつり出されてバイタルがら空きで、これはやられるよなあ」など、出来るだけ客観的に試合内容を把握する方が仏教的に正しい見方ということになります。そうすればサッカーの試合を見ても、苦を伴う感情から距離を取ることが出来ます。


これこそが「目覚めた者のサッカー観戦術」です。いやそもそも仏教的に突き詰めていくと、「苦しみの原因となるサッカーなんて、見ない方がいい」という結論になります。仏教の戒律では本来、飲酒や肉食が禁止されています。同様にサッカーも、心を迷わす原因となるため、悟りを開くためには自ら断つことが望ましいでしょう。


……そんな生き方、したいですか?

僕はちょっと遠慮したいです。


・ほどほど、苦しまないという教え

人間誰しも苦しみは避けられた方がよいのですが、そのためだけに生活を全振りすることは、誰にでも出来るわけではありません。世俗の人にとってはほどほどという考えが必要になります。

いわゆる修行者が、悟りを開くためということであれば、先ほどのような話になってくると思います。「禁酒、禁欲、禁サッカー」ですね。ブッダの本来の教えはそういった方向性のようです。タイなどでは「上座部仏教」と呼ばれる、日本の仏教とは異なった教えが一般的です。戒律の厳しい、いわゆる修行者のための仏教です。そして僕は別に出家してまで心の平穏を手に入れたいわけではありません。


一方日本では「大乗仏教」が浸透しています。「大乗」の意味は、「乗り物が大きく、どんな人でも救われる」という意味だそうです。日本では僧籍にある者も、飲酒や妻帯が許されているなど戒律もゆるいです。「いい加減」だと指摘する向きもあるようですが、「仏教の教えを世俗の生活に功利的に取り入れる」ということでは、今の日本の状況に合っているように思います。ということで、サッカーサポーターは、大乗仏教的な考えをサッカー観戦スタイルに取り入れていくと、苦しみを減らす役に立つと思います。

仏教の技法では、怒りや迷いの感情が生まれた時の対処として、「今起きている出来事に意識を集中する」という方法があります。そしてサッカーの応援においては感情を増幅させる要因が、意外とピッチの上ではなく時間的に遠くにあることが結構あります。例えば、「今日負けたら降格する」「降格したら来年はJ2」みたいな、目の前のピッチの上ではなく今起きていることでもない話です。それを苦しいと感じて悩んでいる時に、自分の頭で考えすぎてしまうことを止めて、目の前の試合に集中するのが仏教的な解決法ということになります。

それを言葉にするとこうなります。

「今そこにあるサッカーを愛する」

うーむ、真理は意外なところに落ちている、のかも……。


以上、京都のお寺に行ったら色々考えてしまった話でした。本文は以上になります。本文だけで完結する文章になっています。
この先はおまけ部分で有料になります。京都については食事編を独立して書く予定がないので、今回のおまけ部分で書くことにしました。

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