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ウマ娘 サイレンススズカ を塗る記事

SAKAKI Workshops デイラさん原型のサイレンススズカ を塗装していきます。
初めてのご依頼品の製作。
記事は作業が進むごとに更新していく予定です。



1.組み立て

仮組み

パーツチェックして軸打ち&仮組みしていきます。離型剤落としに関しては茹でたり洗ったり諸説ありますが、私はベタついていたらレジンウォッシュに入れて超音波洗浄、そうでなければそのまま磨いてるうちに落ちるでしょの精神です。今回はスベスベだったのでそのまま作業開始。

パーツ数は標準的で、少し髪の毛のはめ込みに少し苦戦した程度で(いつものこと😂)サクッと組み上がりました。

この時、クリップで掴むのが難しそうなパーツは塗装の際の持ち手を兼ねた軸を打っています。
最初の穴あけはタミヤの精密ドリルを愛用しています。少し高価なだけあって軽い力でスルスルドリルが入っていきます。

ドリル径は違いますがこのシリーズです。折れることもあるので1.0mmを2本常備


破損対策と台座

片足立ちの中でもかなり攻めたポージングなので設置する足(左足)と台座に工作をします。
今までは自分の観賞用でしか作ってなかったので固定方法であれこれ考えたのは今回が初めてで、たくさんアドバイスを頂きました🙏感謝!

補強のため、足の裏から膝下ぐらいまで真鍮線を通しました。長く真っ直ぐの穴を開けるのは一発勝負なので慎重に作業。
鉛筆で2方向から下書きして、いいな?この角度だぞ?!と何度も確認しながら、変な方向に力をかけて穴を曲げてしまわないように掘り進めていきました。

台座への接続はネジ留めに加えて、回転防止用にステンレスピンを打って2本軸に。
バランス的には踵と爪先に2本打てばいいのですが、踵に天皇賞のレリーフが掘ってあるのを壊すとバチが当たりそうだったので画像のような配置の軸打ちになりました。

耐えてくれ・・・下駄レジン!

台座の裏側にはプラ板でネジの頭を支える補強板を作成。面取りカッターで皿穴加工をしています。

右側の穴は接着剤を流し込む用の適当な穴です


後ろ足をコトブキヤから出てる六角形のベースにアーム(なにかの余り)を取り付けて支えます。六角形のベースが並ぶので自分的にナイスチョイスだと思ってます笑


こちらが台座に置いてみた画像。
うーん!かっこいい!!


2.表面処理

ここからはひたすら地味な作業が続きます。
表面処理とひとくくりにしてますが、作業内容は
段差消し、隙間埋め、気泡埋め、シャープ化、磨きの処理です。気になったところだけ僕が普段やってる手法や気をつけているところを紹介します。

おおまかな工程

①段差や気泡、隙間の処理、堀直しをしながら240番→400番でやすりがけ
②全てのパーツの処理が一通り終わってから600番でやすりがけ

一気に600番まで磨かない理由は、処理忘れを後になって気づくことが多く、見直しを兼ねてというのが1つ。
もう1つは隙間埋めの工程で瞬着硬化剤がかかるので、それをまとめて削り落としたいというのが理由です(これは僕の気にし過ぎかも知れません


段差消し・彫り直し

腰から下は難なく磨けるのですが、上半身はそうはいきませんでした。
服のパーツは脇から腰にかけてパーティングラインが入っていましたので、ラインを消した後に一部ディテールを復元しました。
今回は段差が大きかったので、段差を解消してからライナーソー、ケガキ針、タガネを使い分けて掘り起こします。(段差が小さくければ先に深く彫ってから段差消した方が楽だと思います)
復元するラインが真っ直ぐで、ライナーソーの刃より短ければライナーソーでそのままガバッと削ります。
ラインが曲線だったり、長い場合はマスキングテープでガイドを作った後、ケガキ針で軽く下書き?下彫り?をした後にタガネで掘ります。

復元前
復元後
モールドの掘り直し


細かすぎる話かもしれませんが、彫った後の底面の形がツールによって異なります。
ライナーソー、タガネは四角『□』
ケガキ針は逆三角形『▽』

ガレージキットには沢山の掘り起こすと仕上がりの立体感が増すラインが存在します。

今掘り起こしたような服のラインであれば『□』で彫っておくと、マスキングをする時のガイドにもしやすいですし、マスキングがヨレたときにも一段暗い色で墨入れをするので境界をぼかせます。
一方で肌と服の境界等を掘り込みする場合は、私はケガキ針で▽のラインを作っています。現実に置き換えた場合、自分の穿いてるパンツのゴムと肌こ隙間に四角い彫り込みなんて走ってないですよね?

0.1mmやそこらの細いラインの話ですが、時と場合と場所によって使い分けるのがいいと思っています。リアリティをガレキに与えるためにこんなことも考えておくと仕上がりに影響あるかもしれません…(個人の感想です

補足ですが、隙間三行さんの先日のツイートは彫った後の話で、肌の方は丸めた方がリアルですというごく一部の人にしかわからない資料でした。とても参考になります。


洗浄

シンナーで洗ったりと手段は色々ありますが、私の場合は中性洗剤+超音波洗浄機で洗います。好きなやりかたでいいと思います。メリット・デメリットがあるので私の所感で書いておきます。
もしかすると溶剤に浸けて超音波洗浄すると最強かもしれません(間違っても洗浄機のバスに直接溶剤を入れないように。ジップロックやタッパーを使いましょう)

溶剤浸けのメリット
・やはり溶剤。溶剤は全て(手脂や離型剤)を溶かす。
・5~10分浸けるだけでお終い。
溶剤浸けのデメリット(個人的な感想です)
・処分がたいへん
・やったことないので洗浄力が残っているかの管理の仕方がわからない

超音波洗浄水洗いのメリット
・何より水道に捨てれるのがお手軽。
・超音波洗浄で奥まったところに入り込んだ削りカスが取れる
超音波洗浄水洗いのデメリット
・中性洗剤のヌメりをとるために何回も洗う必要がある。
・水切りが大変

それでは私のやり方の解説です。
使用している超音波洗浄機はSK本舗さんのロゴ入りの超音波洗浄機。
これでなくともロゴなしの中身が一緒のものはamazonで買えると思います。
タイマーはもちろんのこと、温度計がついているのがポイントです。(ヒーターもついていますが、電気ケトルで沸かして調整した方が速いです)

洗浄の際、付属の網より小さなパーツはダイソーで買った粉ふるいに入れて洗います。

手順は以下のとおり。
①ぬるいぐらいのお湯に中性洗剤を数滴いれて5分洗います。
②お湯を捨て、中性洗剤のヌメりを除くように水をかけ流す。
③もう一度ぬるま湯をはり、5分セット
④お湯を捨て、水をかけ流す。
⑤念のため、もう一度ぬるま湯で5分

そのあと、キッチンペーパーで水気ををよく切り、乾燥機で乾かします。ここでよく水をきっておかないと、カルキ汚れが残ったりしますのでしっかり水切りをします。
ダボ穴などに水が残っていることがよくありますので、こよりにしたキッチンペーパで吸い取ります。僕はよく手首のスナップを効かせて飛ばしたりもします笑


3.梱包準備

依頼者さまにお届けするまでが製作代行。
フィギュア好きな方とはいえ、ガレージキットの組み立てに慣れていない方にお渡しすることを念頭において、組み立上がった状態で発送することにしました。(Twitterスペースでアドバイス頂いた先輩方に感謝!)


段ボールにポリエチレンの緩衝材を敷き詰めていき、本体と接触面するところをウレタンフォームで支えるという方法をとりました。

完成形がこちら。下に寝ているものでフタをします。黒いのがウレタンフォームです。
フタをした図
飛び出してるのは開封時に引っ張るところ

ポイントは台座を緩衝材でがっちり固定して、本体を上下前後左右からウレタンフォームを緩衝材の端に接着したもので優しくしっかり支えることですね。台座に六角形を選んだおかけで、差し込み式の固定パーツを上手く当てがえることが出来ました。
円形台座のときはしっかり上下から押さえるようにするのがいいと思います。

台座の形状に切り出した緩衝材でがっちり固定。
差し込み式にしたので取り出しのときも簡単!

このあと、もう一回り大きい段ボールに新聞紙とかをぐしゃっとして隙間を埋めて発送します。
発送するときはガラス製品、天地無用😌
無事に届きますように!

使用したものは↓ 1m✖️2mと巨大なものだったので注文の際にはご注意ください笑

https://www.yodobashi.com/product-detail/100000001002039146/



※完成後追記

完成後、上記の梱包で依頼者さまに配送したのですが衝撃に耐えきれず箱の内部で分解して到着したとの報告が…

再度送り返していただき、リペア&梱包再検討。
ウレタンフォームをくり抜きいてそこに収納していくことにしました。

ガイドをマスキングテープで作ってくり抜いていきます。
ちょっと大きめにくり抜いて緩衝材を巻いて丁度いいフィット感になるようにしました。



4.調色

僕の調色はまずそれっぽい色を探してほぼ瓶生で、それと決めた色を基準にに調色するというとてもシンプルなものです。

基本にする塗料を決める

色を探すのに色見本作っておくと便利です。
このときグラデーション作っておくと薄く吹いた時の感覚が掴みやすいです。

今回の色候補たち

調色の考え方

候補を決めたら実際に調色していきます。私の場合、混色するとしても濁っちゃうから2色ぐらいまでで、基準とする塗料と目標が離れている場合はCMYで寄せたい方向に寄せるという感じです。

ベースの塗料を決めたら次にハイライト色を作ります。(塗る場所によっては使わない時もあります)
ベースに白を混ぜるか、もっと明るい色の瓶生があれば生で使います。

次にシャドウ色ですが、ベース色にCMYで作ったブラック(通称:モチコウさんのタレ)を加えるか、濃いめの瓶生があればそれを加えます(例えば、淡い紫を塗装するなら基本色の紫を加える)。
クリアカラーをクリアで割ってパパッとシャドウするときもあります。

試し塗り

調色した塗料を試し塗りして雰囲気を掴みにいきます。(100均で売ってるミニスプーン、白いのもあるといいな。

スズカさんといえばイメージカラーは緑なんですが、実は紫の方が面積多いんですよね。デコマスをよく観察すると、飽きさせないように紫が数パターン質感で使い分けされているんですよね。狙いを外すと印象も変わってしまうので依頼者様と打ち合わせしてパターンを決めていきました。

マスキングテープに塗った順番をメモしてます。
タイツのカラーを念入りに打ち合わせ

5.塗装

髪の毛

このキットで1番のキモとなる部分。
髪の裏側には茶髪に紫のシャドウが入っており、リカバリーが効かないので慎重にグラデーションをかけていきます。

使用カラーと手順は以下のとおり。

ハイライト…CL101ブロンド
ベース…CL102栗毛
シャドウ…CL102栗毛+CMY
紫シャドウ…G017パープルバイオレット+EV09エヴァパープルグレー

①ハイライトとして残すブロンドをベタ塗り。
②シャドウ色を吹いて暗くなる部分のアタリをつける。
③ベースカラーをハイライトを残すようにしてグラデーションをかける
④様子見しながら②と③を往復する。
⑤紫シャドウを吹く。(マスキングなしの単色グラデ)

ベース色とシャドウ色のグラデをかけているときはエアブラシを2本用意してワンタッチジョイント等で切り替えできるようにしておくと便利です。

①ラスキウスのブロンドをベタ塗り
②シャドウのアタリをつけた状態
いい感じのブロンドヘアーに見えます
②を上から見た図。
③栗毛を塗ったところ。
カチューシャのところは白を後から塗装するので、立ち上げやすいように先にマスキング
③上から見た図
③別角度から
⑤紫シャドウ
⑤紫シャドウ
表側に吹き漏らさないよう慎重に

衣装

ホワイト→グリーン→ゴールドの順でマスキングしていきます。

ホワイト
ベース…G031アルティメットホワイト
シャドウ…EX01ホワイト+Fスーパーシェルホワイト+VO40風群青
ホワイト+風群青は鮮やかになり過ぎるので今回はスーパーシェルホワイトを使っています。
服のシワがはっきりと造形されているのでシャドウを入れ過ぎるとクドくなりますし、注目して欲しいのは髪のグラデなので本当にあっさりシャドウです。入れすぎたら隠蔽力が強いアルティメットホワイトを上掛けすれは緩和できるので、良い塩梅になるよう何度か往復しました。

グリーン…G013ビリジアングリーンを単色グラデ
顔料少なめの塗料だったので吹きながら単色グラデにしました。(この塗料、最終の色がどんな色か分からない…重ねるほど濃くなっていきます💦

ゴールド…SM207スーパーリッチゴールド
文句なしのど安定のゴールドです。アクセントとして使われているので間伸びもしないので特にシャドウは入れませんでした。

以下工程ごとに画像付き解説

ホワイトのシャドウ。
あっさりめです。
マスキングの様子①
ラインに沿って細切りテープ
細切りテープの上からゾル
マスキングの様子②
ゾルの上からテープを貼っていきます。写真ではニチバンのテープですが途中からサイディング用テープに切り替えました。局面への追従が素晴らしい
グリーンを乗せて…
ゴールド!
掘り直した筋彫りには暗めのグリーンを調色して墨入れしています。
細かいパーツも塗り分け。
カチューシャも塗り分け。グロス仕上げです


衣装の紫

作例をよく観察すると、場所によって使われている紫色と仕上げが違うので依頼者様と打ち合わせしながら進めていきました。
すべてベースにEV09エヴァパープルグレーを塗り、その後にコートする色を使い分けてしました。

タイツ部分…VO025マイザーパープル
ホットパンツ…G017パープルヴァイオレット
それ以外…ベースにCMYを加えたシャドウのみ

タイツに関しては作例ではもっと肌が透けているような色だったのでピンク色からの立ち上げを提案したのですが、依頼者様の希望でコート色を赤寄りの紫をチョイス。完成した仕上がりを確認して依頼者様の選択で大正解でした😅

紫はカメラに映りにくいのでカラーチェッカーと一緒に
エチエチとムキムキの奇跡のコラボレーション

肌塗装、面相

肌色はサフレスクリアのG059とG060を混ぜた塗料でシャドーを吹き、モデルカステンの粘膜クリアーでコートするという手順です。
エナメルの粘膜クリアの登場で格段に補修がしやすくなりました。
スズカさんは病弱ということなので、粘膜クリアの重ね吹きは控えめにしています。

面相は付属のデカールを使用して研ぎ出し。

口の中はエナメルの
ホワイト+マゼンダ+イエロー
を混色して筆塗り。
奥まったところはマゼンダ多めの色をスミイレの要領で。
赤すぎると歯垢染色液みたいになっちゃうので良い塩梅になるように調色します。

口の中を塗装した後クリアで保護。
唇をエナメルの
クリアー+粘膜クリア+ホワイトで筆塗り。
上唇に色を乗せ過ぎたり濃すぎたりするとタラコ唇になってしまうので、自然な雰囲気になるよう拭き取りで整えています。

瞳をマスキングした後に艶消しコート。
唇にエナメルクリアで光沢を乗せて
頬にウェザリングマスターのサーモン→ピーチでほんのりチークを入れて完成です。


6.完成

パーツを組み上げて完成です。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
そして何より、代行の機会を与えて下さった依頼主様に感謝を!


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