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全国保証(東証プライム/7164) 株主総会レポート 2023/6/16

 東証プライム上場の全国保証の株主総会に出席しました。株主総会の様子について、当記事にてご紹介したいと思います。なお、当レポートは私の心証に基づき脚色されており、意図せず誤認している可能性もありますのでご容赦頂ければと思います。ご指摘、コメント等ございましたら、私のツイッターアカウントよりご連絡を頂ければ幸いです。

1.参考記事 

 参考として直近UPした新中計に関する所感と、昨年の株主総会のレポート記事を再掲しておきます。よろしければ合わせてお読み下さればと思います。

2.基礎情報

 それでは、まず総会全体の流れを共有しておきたい思います。といっても、株主総会の様子はライブ配信もされていましたし、恐らく後日録画が公式IRページにUPされると思いますので、そちらをご視聴頂いた方が確実かと思います。少なくても質疑以外の部分はどなたでもご視聴できるような形になると思いますので、この記事でも質疑の部分を中心に記載をしていきたいと思います。

  10:00 開会 (青木社長)
     ~議決権数の報告、監査報告は割愛~ ※
     ※社長が審議に足る旨と監査適正の旨を一言言及して終了
  10:05 報告事項(動画ナレーション)
  10:20 対処すべき課題 (青木社長)
  10:25 議案上程 (青木社長)
  10:28 質疑応答
  11:23 決議
  11:25 閉会

 まず今年はなんといても、社長が石川さんから青木さんにバトンタッチしたことから、青木新社長が議長として運営された点が例年と異なります。石川前社長の、あのいかにも元信金マンですという丁寧な語調は、絶対的な安定感がありましたから、それに比べると青木新社長の議事運営はまだ緊張の中にある様相ではありましたが、誠意をもって運営されていた点が印象に残りました。

 今年も議決権個数や監査報告等の形式的な部分は割愛されました。少しでも質疑に時間を当てて頂きたいためこれで良いと思います。今年は報告事項や対処すべき課題の箇所で前年よりは10分弱多く使い、特に新中計ということもあり丁寧な説明になっていたと思います。対処すべき課題の部分でも新中計の内容を軽くご紹介頂くという感じです。正直、新中計に係る説明会動画がUPされているので、それと比べるとサマリ感はありますが、そういうもんをご覧になっていない方も参加されているでしょうからね。

 あとは会場ですが、昨年は会場こそ同じでしたが、広さを狭めての開催でした。しかし、今年は元の通り全面を使っての開催でした。コロナ禍前までは豪華お土産配布があったこともあり、100人以上の方が参加されていたわけですが、お土産もない今となっては20人位ですかね。寂しいもんです。まぁでもライブ中継が行われていたので、地方の方や都合が合わない方にとってもやさしくなりましたからね。これはこれでいいのかもしれませんね。

3.質疑応答

 それでは、質疑応答の様子をメモ残していきたいと思います。★印は私が投じた質問です。またここでのメモは、私なりの解釈で大いに脚色しています。従って、実際の質問や答弁の内容と差異がございますので、ご参考程度に留めて頂ければと思います。
 なお、回答者は特に明示化していない場合は、青木社長が答弁されているとご理解下さい。

★Q 住宅ローンプラットフォーム構築について
 当社は新中計において住宅ローンのプラットフォーマーになることを目指し、案件チャネルの拡大を展望されている。この構想が上手くいく事で本業の保証事業にも寄与する事を期待しているが、一方で業界内でも様々な動きがあると承知。
 例えばSMBCグループとNTTデータが今春リリースしているが、ローン申込から契約までの業務を共通化するプラットフォームを提供し、今後各金融機関や保証会社への参画を呼び掛けているというような動きもある。このような動きを踏まえて、当社がプラットフォーマを目指す上で、単独でチャネル拡大を目指していくのか、あるいは業界内のこのような動きに協調して存在感を発揮していくのかなど様々なアプローチがあるものと考える。
 案件チャネル拡大という狭義な意味での展望に留まらず、データ連携等の各機能における処理高度化や利便性向上までを展望し付加価値の高いプラットフォームとなる事が重要と思うが、どのようなアプローチや展望をもってプラットフォーマーを目指されていくのか。業界内の動きも踏まえて展望を教えて頂きたい。

 今年度からスタートした新中計において、我々は住宅ローンのプラットフォーマーになることをスローガンに掲げている。住宅ローンに纏わる物件探しからローン契約までの流れを川上から川下のように川の流れのように捉えているが、現状の当社の事業は「保証」というちょうど中流の部分に特化しているのが実情である。従ってこの中流域から川上、そして川下への事業領域を拡大する余地がありここに成長余地があるものと考えている。この川上から川下までをカバーしていく事がプラットフォーム構築というビジョンに繋がっている。
 確かに他社含めて様々な動きがある中で、まだ定まったルールというものがなく状況は流動的だと思っている。そのような中で、当社としては720の提携金融機関のネットワークを持っている点、そしてこれまで蓄積してきた様々なデータを活用出来るという強みを活かして、プラットフォーマーになっていくポテンシャルがあるものと考えている。
 そしてこのような強みを発揮していく中で、他社との協業なども今後柔軟に対応して参りたい。
■考察
 今回は新中計1年目という事で、来年以降にこの取り組み状況をトレースしていく事を想定し、とりあえず回りくどくても中計に係る質問をぶつける事にしていました。住宅ローンのプラットフォーム構築という中で、これまでの資料では案件チャネルの多様化みたいな部分にフォーカスをされている印象で、真のプラットフォーマーになるためにはチャネル統合的な意味合いだけではなく、一定の業界標準等を作っていく事も視野に入れておく必要があると考えています。領域を拡大していく上で、標準化を企図していく事は大切ですからね。そういう意味で、敢えてSMBCグループ×NTTデータの事例も出してみました。

 このような動きがある中で、独立系の保証会社としての独自にアプローチしていくのか、こういう潮流の中で協業をしていくのかは重要な岐路になるのではないかとも考えています。行内保証との利益相反が起きる事もあるため、一概に共通化の中にあまねく同社が介在することの難しさはあるのかもしれませんが、逆にそれを機会とする事のメリットも大きいようにも感じます。既存のネットワークが強固なまま維持されるという前提に立つだけでなく、常に状況は変わるかもしれない、という中において、マクロで同社がどのような立ち回りをされていくのか、業界全体の動きも捉えながら見守っていきたいなと思いました。

Q 剰余金処分の件
 利益剰余金の状況をみるともう少し配当を出せるのではないかと考える。債務保証積立金に沢山留保されていることから妥当な水準とは思えるが、そもそも債務保証積立金にこれだけの額を積み立てる必要性について合理的な説明を伺いたい。
 PBRを向上させていくためには配当をより強化する事が肝要とも思えるため、その策として配当の考えをお聞かせ願いたい。

 債務保証積立金は任意の積立金であるが、我々保証債務の信用性を高めるために一定の厚さをもって保持しておくことが重要である。この考えとしては、保証残高全体から生じる年間の毀損額の15年分の厚さを保持していくという方針である。15年分というのは、概ね住宅ローンの弁済期間の平均がこの程度という事から設定しているものであり、今回の積み立てもこの考えに沿っての対応である。
 そして、この15年分の水準になってきたこともあり、資本の活用フェーズに移行していくという判断の下で段階的にこの3年間で配当性向も更に向上させていき50%まで持っていく事を開示している。
 金融機関からの信用という大前提を崩さぬような積立を継続しつつ、水準感を踏まえて資本を活用するための政策として還元や事業投資にとバランスよく振り向けていきたい。
■考察
 私は冒頭の質問で株主還元の更なる拡充姿勢について御礼を申し上げたのですが、一方でまだ拠出できるでしょう、という方もおり、新鮮に感じました。確かに資本は大変厚いですから、一見するといくらでも配当出来てしまう気がしますからね。
 ただ、答弁にもある通り、資本を厚くしておくことで信頼がより高まるということはありますし、純粋にレシオ等の効率性指標だけで推し量れない「事情」というものもあります。私はむしろ配当性向20%台だった頃に、もう少し満足いく厚みが形成された暁には…という頃を知っているので、その暁がやってきて、このように配当性向を50%まであげる、と宣言できるような状況になっている事が感慨深くもあります。
 そもそも資本効率向上の文脈でいえば、配当だけではなく自己株取得も選択肢として表明されています。むしろ、今後M&AやCVC等の育成を図っていく中にあっては、選択肢を増やしておくという意味でも自己株買いを含めた議論をしてもよいのではないかと思います。確かにわかりやすいのは配当ではあるのですけどね…。
 またPBRについては、直接的な回答はなかったように感じましたが、同社のPBR水準って極端に低いわけでもないですし、その他金融という属性上、あまりここに注目してもな、という気がしています。
 資本政策による価値向上というより、大きな事業理解への誤解や、抜群の安定性という部分などの理解が広まっていない事による割引の方が主因としては大きい気がします。

Q 個人株主への対応について
 以前の株主総会において、個人株主の方がより長期で保有してもらう機会に繋がることもあり、個人投資家の比率を高めていきたいというご説明があった。株主優待や個人投資家向けIR等の活動を通して個人投資家へのアプローチをなされてきている事と思うが、このお考えは現状でも変わらないのか。またもしそうだとすると、個人投資家界隈では、まだ当社への理解が醸成されていないという事感じる機会がある。具体的には、住宅着工やマクロ経済の動向などに影響を受けてしまうなどのリスク面を懸念されるような傾向にある。しかしながら、当社の特徴は安定的に収益をあげていける強みがあると認識しており、(リーマンショックや東日本大震災の時にも安定していたというような)こういう部分をよりIR資料等で訴求されるようお願いしたい。

 個人株主は概ね現状10%程度になった。しかしながらもう少し個人株主を増やしていきたいと考えており、この基本方針は変わらない。株主優待についても、様々な雑誌等にも取り上げて頂けており、IR/広報の意味合いを高く評価しており、少なくても当面は継続していきたいと考えている。
 IR資料については、我々の成長や事業理解が深まるような資料作成、あるいは個人投資家向けIR活動を社長自らが先頭に立って訴求して参りたい。
■考察
 昨年、株主優待の件を質問した手前、再度株主優待について質問するのを憚られていたのですが、このような質問をして頂き大変ありがたかったですね。
 元々10%程度の個人投資家比率を目指していきたいという事だったと記憶しており、その意味でも一定の比率まであがってきたこと、そして株主還元政策をUPDATEしたことから、株主優待制度については存続に疑義がかかっていたような雰囲気もあったかと思います。しかしながら、少なくても当面継続していきたいという事を明言されておりましたので、その点だいぶ不安は後退するのではないかと思います。経済合理性からしたら、明らかに配当で報いた方がよいわけですが、副次的な広報・IRの意味合いという定性的な部分で評価されているようでもありますので、当面は続くものと思われます。あとはクロス対策として半年未満は実施しないなど、一定の区別をすることは必要なのかもしれませんね。まぁそれでもガチ勢からしたらイタチごっこかもしれませんけどね。
 個人投資家IRについては、ぜひ青木さんが矢面に立って、色々な機会で露出してもらいたいですね。総会とは異なり、もう少し距離感の近いものがあるといいですね。

★Q 他社協業・M&A・スタートアップ投資の活動について
当社は周辺事業の一環で、他社との協業やM&A、更にはCVC設立を通したスタートアップ連携を深めていく方針を示された。この春にはグループ戦略推進室も設置され様々なシナジー創造を期待したいが、一方で取締役の方々の経歴やスキルマップから事業投資に係る知見が必ずしも十分とは言えない状況もあろうかと思う。前中計から事業領域の拡大としてこの方向性は共有頂いているものの、難しさもあり中々具体化する事が難しいという状況の中で、現状の人材リソースを踏まえてこの周辺事業の拡大施策をこの期間で形にしていくために改めてどういうブレークスルーが必要だとお感じになられているか。前中計の活動の振り返りや、当社のよさでもある堅実さや保守性を重んじるという文化そのものもしなやかに変えていく勇気も必要だと思うが、展望をお聞かせ願いたい。

 周辺事業の拡大という取り組みの中で、基幹事業の保証事業から少し幅を広げた部分に目を向けていく活動を新中計に掲げている。経営企画部の内部組織ではあるものの、グループ戦略推進室を組成することで、社内外に向けてもきちんと新たな領域拡大を企図しているという事を示していく事を念頭に意志をもって組織化したものである。しかしながら、人を配属するだけではなかなか前に進まないということもあるため、まずは人材育成が重要だと考えている。人材育成を推進していくためには、例えばCVCを活用する中で、ベンチャーキャピタルに係る外部の方との連携の中で学べる事も多くあると考えている。専門家とも手を組んで事業投資を進めていく中で、そのプロセスなどにおいても社員がノウハウを吸収できるような形で育成を図っていきたいと考えている。
■考察
 こちらも中計に係る部分での質問です。前中計から領域拡大としてM&Aや他社協業というのはずっと存在していますが、なかなか基幹事業から外に出ていく実績というものがみえてこなかった中でありますから、このタイミングで改めて新中計期間でどのように実現させていくのかという事を投げかけておくことで、来年以降の状況UPDATEにも使えると思っています。
 回答にもあった通り人材育成が重要であるということで、それを外部人材との交流の中で育んでいきたいということです。VCの方と一緒に仕事をするということは、ある意味、VC側の意向も大いに介在しやすいため、なかなか一筋縄ではいかないケースも多いと聞きます。ですので、実際の事業投資の成否率という意味ではそんなに甘くない世界ではないかと思いますので、来年の総会では、具体的にVCとどういうタイアップがなされてきたのか、その中でとりわけまずは人材育成という課題対処を掲げられてきた中で、この1年の成果と残りの期間で具現化するための方策、あたりは聞いてみたい所ですね(今からワープして聴いておきたい位です(笑))。
 同社の人材は金融に偏っています。役員の構成をみても、取締役の皆さんは生え抜きであったり、元金融マンばかりなんですね。M&Aや事業投資という経験がスキルマトリック上にも存在しておらず、当然使用人である社員にとっても未知のフロンティアであるわけです。そういうある意味経験の浅い集団が、こういう領域にチャレンジするということは相応の変化がないと難しいとも思います。ですから質問の最後には、企業文化そのものの変化にもしなやかさが求められるのではないかという事を敢えて付け加えたのです。今後の期待したいと思います。

Q 債権回収業務について
 債権回収業務とは具体的にどのような業務なのか。感覚的には、回収業務というのは難しさもあろうかと思う。金額の規模感や全体の業務フローのようなものを披露頂きたい。また今後の方針として拡大させていくとなると、リスクも高まるようにも思うが、一方でそんなことはないということなのか、理解を深めたい。

 現在、あけぼの債権回収というサービサー事業を行う会社を子会社化して運営している。債権回収業務とは大きく2つの種類があり、全国保証や提携金融機関様の債務の回収を請負という受託業務と、他社の債券を割引購入した上で回収して利ザヤを取るというやり方である。その中で我々は前者の部分に注力している。そして、回収率等の様々なファクターをデータとして蓄積している事もあり、リスクをヘッジした運営が定着しており、その点リスクは軽減させる中で運営が出来ている。(山口専務)
■考察
 質問者さんが何を企図していたのかわかりませんが、基本的な債権回収業務に関する質問であればIRさんに照会をすれば丁寧に教えて下さるように思います。山口さんがあけぼの債権回収の代表者として回答下さる折角の機会ということなので、私がもしこの領域で質問をするとしたら、コロナ禍前後、そして今と推移をみて、要注意先等のフラグが立つ傾向の変化とか、代位弁済に至るプロセスの特徴、あるいは回収業務そのものが物件価格上昇等によってどういう変化があるか(担保価値の上昇等で実はおいしくなっているとか)とかを聞きますかね。それから、提携金融機関の債権取り扱いの動向とかも興味がありますね。金融機関としてもこのような業務はアウトソースしていきたいという潮流があるでしょうから、手数料や債権そのものの取得をするとした時の割引率等の変化が、当社グループとしてどういう財務影響として作用していくのかとか。

Q 不良債権の処理について
 (質問者さんは金融機関で回収業務に長年従事されてきたとの自己紹介)
 全国保証は、保証料の中から代位弁済等に至る不良債権リスクの転嫁のための保険等に加入されているかと思う。不良債権化した債権を他社へ譲渡したり保険を使って処分をするなどの対応を取る事と思うが、その流れや保証枠のどれ位を保険として賄っておられるのかなどの情報を頂きたい。

 代位弁済の発生率は保証債務残高全体の0.07%と極めて低く、更に担保等の処分により回収を行うわけだが、担保売却による回収率は77.4%という数値になる。この差引の部分が我々が負担を講じるべき範疇になるが、実際にはその後債務者の方が少しずつでも支払いを続けられるケースもあるため、被る損失については実際にはより少なくなる。具体的な金額等は手元にないため、申し上げられないが、いずれにしてもきわめて少ない数ということになる。(山口専務)
■考察
 質問者さんが保証料の中から保険に加入しているという趣旨の事を仰っていましたが、私はそのように認識していませんでした。あれ、私何か見落としているのかなと思いましたが、回答ではそのことには触れずに答弁されていたので、恐らく保険などには入っていないでしょう。まぁ敢えていえば、担保物件が保険のようなもの、ということになるのでしょうね。
 質問者さんは恐らく住宅ローンという安全性の高いローンではなく、いわゆる事業ローンのようなものを扱われていたのかもしれませんね。その場合は商習慣も異なりそうですしね。
 そしてこのような不良債権化した部分へのリスク視というものが改めて示されていると、実態とのギャップを感じますね。答弁にもある通り、現状の代位弁済に至る率は極めて低く、更に物件価格上昇も相まって担保回収も進捗しますからね。実は極めてリスクが小さい中で運営されているという事がこれで理解できますし、だからこその圧倒的な利益率なわけですね。
 ただ、雇用情勢もよく、また物件価格の高位という現況においてはこの状況が続くものと思いますが、不況が訪れた時には多少は今よりは落ち込むことは想定しておかねばなりませんね。とはいってもリーマンショックのような時でも無風でしたからね。あまり過度に心配する要素はないようにも思います。ただ、業界の有識者であっても、こういう疑問が涌いてくるくらいに、実情と外形理解に乖離があるということなのかもしれませんね。

★Q 社長交代について
 石川社長は長きにわたって当社を導いてこられたが、今回社長のバトンを渡すこととした想いや、青木社長にどのような期待をしているか。青木社長にはこれからの社長としての抱負を伺いたいが、これまでの当社のどのような部分を継承させ、またどのような点を変えていきたいと思われているか。社長としての会社のビジョンを改めてお伺いしたい。また社外取締役からみて、今回のバトンタッチをどのように評価しているか。なお、代表権を2人がお持ちになることになるが、どのような分担をされて運営されているのか。

 遡ると17年8か月という年月に渡り社長を務めてきた。これまでの支援にこの場を借りて御礼申し上げる。まず社長交代の経緯としては、在任期間が長くなってきたことに加えて、上場後10年という節目を迎え、更に新たな中計を掲げるというタイミングでもあり、この時期にバトンを渡すというのがベターな判断ではないかと考えた。指名報酬委員会に社長交代の打診を行い、慎重な議論を重ねて決めてきたものである。青木社長に期待するところとしては、新たな中計では提携金融機関を増やす事での本業での拡大をコアにしてきたわけだが、それを大事にしつつ周辺事業への開拓を進めていくという事でもありこの部分の実務を司ってきたわけでもなり今後より推進していく事を期待している。役割分担の所では、会長として社長をフォローしていく中でコーポレートガバナンスを高めていくことを大切にしていきたい。また、対外面ではこれまでの人脈を築いてきたわけなので、こういう人脈をより深めて当社グループに貢献していけるような立ち回りをしていきたい。更にグループ会社も増えてきているという中においては、全体の統率等にもフォローをしていきたいと考えている。(石川会長)
 社長が変わっても急に会社は変わらない。当社の経営理念はとても大事な事だと思っているし、そういうコアな部分はこれからも変わらない。今褒められることをするのではなく、未来に評価される事を起点に行動していく事が大事だと思っている。こういう営みを続けていくことで、債務委託者、金融機関の橋渡しとしての重要な役割において信頼を重ねていけるものと思うし、そういうプロセスを社員と共有しながら進めて参りたい。その上で、新中計に掲げた新たな領域への進出を進めていく事で成長をより高めていく活動を示していきたい。(青木社長)
 指名報酬委員長を務めており、昨年12月に石川前社長から打診があり、大変驚いた。後継者育成プランを策定している最中であったため、完全にプランに沿った対応というわけではなかったが、その原理原則論から慎重に客観性と平等性を協議を重ねてきた。青木新社長は企業カルチャーや経営方針の理解も深く、企画力、運営能力等に優れ、更に倫理観等の評価も踏まえて取締役会に上程した。更なる協議を踏まえて決議をしてきた。取締役総意をもって青木新社長をバックアップしていく体制を継続させていきたいと思っている。(上條社外取締役)
■考察
 この質問は他の取締役、とりわけ、石川前社長に話してもらうために用意していました。石川前社長が一言も発しないということはあり得ないと思っていましたし、そもそも株主総会として各取締役の方は一言くらいずつは何かを語った方がいいと思っています。
 石川前社長の答弁は非常に丁寧でしたね。きちんと経緯やそもそもなんでそういう発想に至ったのかという事もお話頂きました。そして自分の役割などについても語られいました。対外的な人脈という所は非常に厚い方だと思いますし、青木新社長は元々管理部門を掌握されてきたという側面からも営業面でぜひフォローを頂けるといいですね。期待すること、というのももう少し株主総会としてではない場であれば緩い回答もあったかもしれませんが、模範解答的なものではありましたが、新たなフロンティアとしての期待感を示して頂きました。こういう場でこういう発言をされることを、青木新社長が耳にするというのは儀式としても大事だとも思っていますから意図した通りです。それから経緯の中で、ベターな選択と仰られていたのが印象的でした。ベストな選択ではないんですよ。これをどう読み解いたらいいのか、今でも頭の中がグルグルしています(笑)。
 そして青木新社長はこの時の答弁はこれまでの答弁とは違って、より自分の想いを全面に出してお話をされている印象を受けました。なんというか気持ちが乗っている、というような印象です。「今褒められることをするのではなく、未来に評価される事を起点に行動していく事が大事」というお言葉がありましたが、こういう言葉をリーダーが発して組織を率いてくれれば安心です。我々投資家もついつい目先の株価動向ばかりが目にいってしまいますが、少なくても自分のスタンスが長期的な寄り添いという所にあるのであれば、未来志向でありたいなと思いました(短期志向を否定しているわけではありません)。
 上條さんは社外取締役で指名報酬委員会の委員長を務められているのは実は調べてあったのですが、名指しで指名するのもちょっと失礼かということと、他の取締役の方への配慮から社外のお立場としてというトーンで質問をしました。こちらの本来の狙い通り、上條さんに振って頂けたことはありがたいですね。本当は驚きがあったとか取締役会で更なる協議があったということでもあったので、この辺りの議論のプロセスを窺い知れれば、当社のガバナンスの実情も把握できるのでしょうが、流石に株主総会の場では無理ですよね。立食形式の懇親会でもあればいいんですけどね~

Q 株式分割について
 当社の株価は5,000円近辺の水準にあるが、庶民が買うには買いづらい水準となっている。個人投資家を増やしたいというお話もあったが、分割は検討できないのか。

 貴重な意見。東証が示す水準が5万-50万という水準感からみれば上限を超えているような認識はある。当社のファンになってもらうための努力は今後も行っていきたい。
■考察
 難しい問題ですね。確かにNISA等の扱いを考えた時に、庶民にエントリーしやすい水準という意味合いからしてもやや高い事は事実ですからね。一方で、そのような値ごろ感で取得された個人投資家が真に求める長期ファン株主になってもらえるのかという部分があるのかなとも思います。
 ただでさえ株主数が多くなっており、株主優待制度の費用負担という所を考えても、分割をしたとしてどういう設計にするのかという所も出てきます。分割をするにしても株主優待の条件に最低保有期間を設けるとか、長期株主により傾斜をつけていく、などの対応が必要ではないかとも思います。

Q 女性登用について
 政府主導で女性取締役の登用についてその比率を高めていく事を求められている。当社においても社外取締役を外から招聘するのではなく、プロパを育成するという事が大事だと考えている。育成プランやその取り組みは女性活躍にもフォーカスが当てられるものとなっているのか。

 女性活躍推進として会社として取り組んでいる所である。管理職の女性目標や管理職候補者の割合などを具体的に数値を決めて開示している。現状ではこの目標水準に達していないが今後目標達成に向けて取り組んでいく所存。
■考察
 これ以前にも私言及しましたが、おかしいですよね。私は女性もどんどんと登用されていくことはとてもいい事だと思っています。ただ、女性だからという理由では形式的なものになりますからね。

 回答の中で具体的な%も示されていましたが敢えてここでは記載を割愛しましたが、比率と人数ってとっても歪みがあって、当社のように取締役員数が少ない場合、1人で%が大きく動きます。ですので、%は意味ないと思いますし、女性にフォーカスを当てて議論すること自体にも違和感があります。女性の着眼点や遂行能力が高い事は疑いのないことですし、意思決定の多様性という点では重要だと思っています。ただ目標数値を決めて一律でやるというのはおかしいと思いますし、実態に即して粛々となされていけばいい事と思います。
 また、社外取締役の女性がこの質問受けている時になんともいえない表情をされていたのを私は見逃しませんでした。正確には質問者さんは「外からひっぱってくるのではなく」と仰られていました。社内で女性を育成していく重要性を問い質す上で、社外取締役としての価値を下げる必要性はないと感じたんですよね。まして、その場に該当する方がいらっしゃる中で、発言していただく機会すら振れない(これは私も反省してて、該当の社外取締役の方には、新任の選任の際に一度質問してお話頂いただけなんです)中で、一種部外者的な言われ方をされる事をどうお感じになられたか、心配でなりません。こういうのも閉会後、少しでもコミュニケーションを図れる機会があれば双方でもう少しフォローし合える気がしますし、建設的な対話にも繋がると思うのですよね。そういう機会がない事が残念です。

4.さいごに

 青木新社長が初めて議事運営された株主総会となりました。これまでの石川前社長と比べるとまだ絶対的な安定感という所には至りませんが、一方で質疑でも積極的に、誠意をもって回答して頂けました。そして社長交代に係る質問では、ほんの少しですが、青木さんというお人柄を感じる事も出来た気がします。なお、石川前社長の議事運営においては、他の取締役が答弁した後に、社長として補足を述べられるというケースが多かったのですが、たまたまかもしれませんが、今回はそのような事はありませんでした。今後、他取締役にどんどん回答を振った上で、社長としての考えを示すというような運営になると、より役員体制として安心感が醸成される気がしました。

 今年もライブ配信があったこともあるのでしょうし、お土産がないということもあったのかもしれませんが、来場者は少なかったように思います。開会前にIR担当さんとも立ち話をさせて頂きましたが、やはり人数が少ない事を残念に思っているような印象でした。直接役員の方と触れられる機会でもありますから、もう少し盛り上がるといいなと感じます。

 それから開会前にクレーマーさんのような方がいましたね。
元々優待のクオカード、何で書留で送ってるの?コストもったいないじゃないがスタート。まぁ上からの言い方はともかく主張そのものはまぁわかるって感じで聞いていました(私のすぐ横で総務の社員さんがひざまついて株主様の話を傾聴している感じ)。ちなみに金融機関として金券を株主様に送る際に普通郵便というわけにはいかない&高島屋ギフトに委託している関係かと思いますしね。
 その後、そもそもコストという部分でいえば、この総会の場所代ももったいないだろうと。何人来るのかわからないのにこんなに広い場所を借りて~と。ん?コロナ明けで見通しが立たない部分あるし、企業としてはバッファを見越して柔軟に対応出来るように場所を抑えているんじゃないのか?と感じます。自社ビル会議室とかでいいじゃないかと。いや、セキュリティ等の問題もあるし、流石に時価総額的にもそういう規模感じゃないのではと感じます。
 そしてこれが主訴だと悟ったのですが、そんなお金をかけるのであれば、来場した我々株主にお土産のひとつでも渡したらどうなんだということです。あ、そういうことね、って全部が繋がりましたよね(笑)。
 この一連のお話にずっと社員の方が席に座る株主様より目線を下げ、床にひざまついて、仰る通りでございます、貴重な意見として今後の…となだめている構図をみて、悲しくなりました。
 株主って確かに会社のホルダーではありますが、神様でもなければ、そんなに偉い存在ではないと思うのですよね。なのによく殿様顔で臨場して鳴っている方がいるんですが、あれはどういう心理状況なんでしょうね。
 そして、企業側ももう少し毅然とした対応をとっていいのではないでしょうかね。現場の社員の方がすり減ってまで、下手に出て対応する事って不幸の連鎖だと思うんです。そういう時には現場の少し偉い人にお出まし頂き、少なくても対等にお話をするようにしないと、何でも下手にでればいいってもんじゃないようにも思います。まぁ賛否はあるのかもしれませんけどね。

 投資判断的には、当たり前ですが、特に変わることはありません。新中計の活動をまずは1年よく見守り、基幹事業が変わらず退屈ながらも堅調な推移となっていく事を期待して、応援を続けていきたいと思います。
 頑張れ、全国保証!

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