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パク・メンホというキャラクターの「徹底解説!どんな人?虎ってなに?」を読みたくて作った個人的にまとめただけの記事

徹底解説ではなく、原作を引用しながら読み取ったものを列挙します。
ミリタリー知識も歴史の知識も乏しく根拠がwikiからだったり映画からだったりするのでなにかしらを間違えている自信があります。
詳しい方教えてください。私にパク・メンホ解説記事をください。

※英語版を購入したので一部修正
※公式サイトのキャラクター紹介URLがなぜか見れたので追加


「パク・メンホって誰?」

漫画『ディエンビエンフー』に登場するキャラクター

ページをめくれば人が死んでいる上にエロもあり内容がえげつないが、理不尽な暴力の中でも抗う人間の生と死と、命を繋ぐことを描いた激熱な名作漫画。未完と言われていたが2018年に完結している。
連載雑誌の休刊等の事情で複数の同題名の単行本があるが完全版を購入すれば本編・題字・アオザイ通信等を網羅できる。

パク・メンホは『ディエンビエンフー』の第1集に登場する人物。

通称「祖国を捨てた虎」。顔に刻まれた傷が虎縞のように見える。 初登場時45歲、一児の父。元朝鮮人民軍の兵士で、朝鮮戦争のさ なか若きヤーボに出会い、祖国北朝鮮と妻子を捨ててグリーン・ ベレーの一員となる。ベトナムの地で秘かに韓国軍猛虎師団の若 き兵士を育成した。彼らは後に「百匹の虎」として格闘技大会 「胡志 明杯(ホーチミン・カップ)」に登場する。

『The ART of Điện Biên Phủ』より

上記の紹介は2016/8/5主人公ヒカルの誕生日に発売された画集にあるもの。全巻のエピソードガイド、マンガ制作にあたって描かれた設定資料、単行本未収録マンガなども掲載されている。

また公式サイト『Character』のページにも紹介があり、上の説明にさらに追記がある。

※第三部の「胡志明杯」では「百匹の虎」としてメンホの部下100人がお姫さまに挑む設定があったが、「TRUE END」化の結果メンホ仇が討たれることはなかった。また『TRUE END』本編回想シーンには「野良犬たち」が時折登場する。

https://dienbienphu.jimdofree.com/character/

「何話に登場する?」

初登場は 第1集 #4 脱走計画


舞台は1960年代のベトナム。米軍所属の従軍カメラマンである主人公・ヒカルミナミが日本へ脱出しようとするが、ティム・ローレンス率いるストレイ・ドッグス(野良犬たち)というグリーンベレーの中でもはみ出し者の集団に捕まる。

ここで、各野良犬の能力が描写されている。

・インソムニア→タイヤを狙撃して足止めをする
・カリフラワーのじじぃ→取り付けてあった爆弾で車両を爆破する(乗る前から取り付けられていた?)
・リトル→弓矢を連続で射出しヒカルを森へ追い込む
・ミンチ→肉の解体現場で両手に肉包丁らしきものを持って立っている
・パク・メンホ→ヒカルを蹴り、パッコーンと森より高く・遠く吹っ飛ばす
ダンニャワード→飛んできたヒカルを長い手でキャッチして地面に置く
・ジャジャ丸→クナイを投げてヒカルの動きを止める ヒカルは漏らす

ギャグっぽく描写されているが、パクがとんでもない脚力を発揮している。

名前判明、回想が始まる #5 野良犬たち

野良犬率いるティムによる人物紹介が始まる。
ネィティブアメリカン、ヨガマスターと続いて、
『祖国を捨てた虎。パク・メンホ。』
ここで初めて名前が出てくる。夜、一人でシャドートレーニングをしている。
他、爆弾の魔法使いに、白頭巾の解体屋、まどろみを知らないスナイパー、アメリカン忍者とかなり個性的。
『みんなここでしか生きられない野良犬たちだ。誰とも馴れ合わず、戦うことでしかアイデンティティを得てない。』とのこと。

場面は変わり、主人公ヒカルがイイにおいにひかれて近寄るとパク・メンホが調理器具で何かを煮ている。このとき、パクはヒカルに気が付きじっと見つめ、ヒカルを怯えさせている。

『キムチ・スープ コリアンのソウルフードだ。韓国軍猛虎師団にわけてもらった。米軍の野戦食は味けない。』

ここで猛虎(メンホ)師団の名前が突然出てくる。
後述するが、パクはベトナムの地で韓国軍猛虎師団の教育係をしていたことが第11集でわかる。その兵士からわけてもらったという描写。名前のメンホはおそらくここから取られている。
なお英語版ではPEOPLE'S ARMY(人民軍)表記になっている。

ちなみに、第5集に収録されているアオザイ通信#25グリーンベレーの誕生にてパクは『オキナワに派遣された第1グループ』に所属していたことがわかる。
ヤーボ大佐もティムも第1集で自己紹介をするが、第5グループ所属である。

1957年 第1特殊部隊グループ(1st SFG)編成
1960年 南ベトナムの現地で4番目の部隊第5特殊部隊グループ(5th SFG)が編制される

『待て 今、肉が来る。』
『ミンチ。素性は知らん。拷問のスペシャリスト。外では生きていけないヤツだ。アイツはただ肉を解体するのが好きなんだ。』
『よし食え。』
『いいから食え。腹一杯食え。』

ミンチの解説が入る。肉を持ってきてもらうなど交流があったことがわかる。ヒカルにキムチ・スープをわけてあげるパク。
以下、濃厚な回想が始まる。

『15年前1950年の朝鮮戦争、決戦のプサン。わたしは30歳で朝鮮人民軍の大尉だった。飢えていたよ。』
一か月にわたる米軍との戦争で北朝鮮側はみるみる消耗。
補給も絶え、弾薬も食料も尽きたわたしを生かしたのは、テコンドーだった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%9C%E5%B1%B1%E6%A9%8B%E9%A0%AD%E5%A0%A1%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84

決戦のプサンとは、1950年8月9月の釜山橋頭堡の戦いのことだと思われる。
そして当時30歳。階級は大尉。2年前にできた国の軍で大尉をしている。
補給を断たれた状況で4人くらいの武装した兵士を目の前にしながらも、テコンドーで生き残っていることが描写されている。負傷は頬の切り傷と鼻血だけ。

『1人の青年が素手で挑んできた。ボッコボコの完敗。彼は美しくその強さはわたしの想像を超えていた。』
『それがヤーボ大佐だった。しかし不思議とキモチよくてね……
 痛みも苦しみも感じなかった。
 肉体は死に瀕しているのに精神は心地よく解放されていた。』
『小指ひとつ動かせないのにもっと戦っていたいと思ったよ。北も南も将軍さまもどうでもよくなって、わたしは脱北し年下の大佐の部下になった。』
『妻と息子を北に残して。』

肉体が死に瀕するほど戦い、なおかつまだ戦いたいと願う性格であることがわかる発言。
ここで脱北者であること、妻子持ちであることがわかる。
そして、どうでもよくなったのは「北も南も将軍さまも」であり、家族については残してきたと言及している。
なお、年下の、とわざわざ触れているのは儒教思想の描写かもしれない。

『君はいくつだ?』
『見えないな。まるで子供だ。』

しゃべりすぎたな。
あの少年が……重なったからか?
北に残してきた、当時5歳の、息子に。
しかし、野良犬に思い出はいらない。

子供に対する強い思い入れが垣間見える。
ちなみに当時とは1950年。息子は45年産まれ。
あの国は
1945年 日本から独立 
1948年 建国
分裂後の北は自由恋愛による結婚は難しくなるのだが、おそらく出会ったのは45年前後、つまり日本の統治下のときではないかと推測できる。身分制で選ばれたのではない奥さんが居たのだろう。

ヒカルは19歳。パクの息子は生きていれば20歳。
「いくつだ?」「見えないな」という発言から、パクにヒカルの外見は実際より幼く見えている。
であれば、何が重なったのかと推測すると、ヒカルが日系なところだろうか。日本人との奥さんとの子供だったのかもしれない。

そして、「しゃべりすぎた」と言う。野良犬に思い出はいらない、と思い直すことから、普段は自分の過去は話さないのだろう。

そして最強ゲリラ兵・お姫さまとのバトル #6 傷ついた虎

まだ子供…
『君…』

まだ子供、の部分で姫さまの写真が描写されているため、捜索対象のゲリラ兵だとわかっている。しかし、君…、と声をかける。子供に対する躊躇いの描写。姫さまは10歳

いや……始まってる!?

何。素手で。おもしろい。

鉈で襲い掛かる姫さまの手を蹴り、鉈を飛ばす。しかし、姫さまは素手で挑み続ける。
「おもしろい」から自分と同じ条件で戦う相手への敬意が見える。

15年前、捨ててきた。何もかも。北に。同志も友も。家族 も。

こんなときに、思い出すなんて。脱北者の家族は、強制収容所行き。オマエたち、もう死んだかなぁ。

――미안합。(ごめんなぁ)

でも。

韓国語の部分は家族に思う言葉は韓国語になっている。英語しか話せないヒカルと会話していたことから普段は英語を話していると思われる。
ここで、お姫さまの顔面に蹴りを当てるが、足をへし折られ、膝を付く。

『ハハッ。おもしれぇ…子供(ガキ)』

最初は君、と呼びかけ躊躇っていたが、ガキに変化している。笑いながら立ち上がり、一歩も引かず、叫びながら攻撃を続けようとしたが、お姫さまに首を吹っ飛ばされ終わる。

お父さん……こんなふうにしか、生きられない。

その後のティムのコメント。

『ぶっ壊されてる。ヒドイもんだな。しかし彼は、とてもイイ顔をしている。』
『ミンチ、死体を片付けろ。インソムニア、君は見てたんだろう?パクの表情が語ってる。どうやら敵は、ツマンナイ相手じゃないらしい。』

ちなみに翌日のミンチ・カリフラワー・ダンニャワードの死体についてはこのようなコメント。

『もういいよ。捨てとけよそんなもの。犬にでも食わせればいいさ。』
『単純にさ。あの娘に勝てなかっただけのことだろ。俺……キョーミないんだ。弱いヤツ。』

比較すると、ティムはパクを弱いヤツとは言っていない。ぶっ壊された姿を見て、イイ顔をしていると言い、ミンチに死体を片付けさせ、ツマンナイ相手じゃないらしい、とまで言う。

「虎ってなに?」


朝鮮半島全土には虎が多く生息していて、神話もたくさんあり、古くから虎の国と呼ばれていた。
ちなみに体長は2.5m〜3mにもなる大型のトラのようだったが、害獣駆除事業の一環として狩猟され、1950年付近には戦争の影響もありほぼ絶滅。
南北に分断されるよりも以前から居た、誇り高い戦士の象徴として作中では使われている。パクはティムに「祖国を捨てた虎」と呼ばれている。
その上で#6の傷ついた虎とは、
内容から考えるに「傷ついた」は心の傷hurtではなくて肉体に残る傷scarがついた虎。つまり顔に傷がある虎、パク・メンホを現した題名ではないだろうか。
※追記
英語版の題名はA Wounded Tiger 「手負いの虎」

50年ヤーボ大佐との闘いの後、パクの顔には虎の縞模様のような傷がある。後述するが人物紹介にも「刻まれた」とあり、おそらくワザとつけられている。

「百匹の虎ってなんだったの?」

百匹の虎はグリーンベレー第一グループに所属するパク・メンホが訓練した集団である。
それがわかるのは第11集。この漫画はトーナメント戦を始める。IKKIの休刊が決定した後に、月間連載ではなく書き下ろしで描かれた。
休刊しなければ第三部で登場したのであろうキャラクターが二人一組になりトーナメント戦で戦い散っていく。その中で、「百匹の虎」と痩せたヤーボ大佐の試合がある。時代は1970年、パク死後5年経過している。

ベトナム戦争において「虎」と恐れられている韓国軍猛虎部隊。かつてヤーボ大佐は「野良犬たち」を組織し、朝鮮戦争を生き抜いた韓国軍兵士を部隊へ編入。

#66 百匹の虎 214P

この話で初めて猛虎部隊が野良犬に編入されていることがわかる。

あの顔の傷はまさか…死んだはずの…パク・メンホ!?
しかもふたり!?
いや…違う。
百匹の虎…

215P

応援にかけつけた韓国軍兵士…その全てに虎の傷が刻まれています。つまりその傷跡こそ、パク・メンホへの弔いの証。
百匹の虎の忠誠心と復讐心が今、お姫さまとヤーボに注がれています。野良犬の一匹として散ったメンホの恨み。

216・217P

パク・メンホが慕われていたことがわかる。顔の傷の位置や数は個人によって異なる。片目を潰すように刻んでいる者もいることがわかる。


第11集は2014/10/10に発売されている。設定集は2年後2016年発売。
顔の傷は1970年のトーナメントより前からあり、おそらく61年付近ニャチャン基地にてパク・メンホの訓練によりついたものらしい。分断されたとはいえ同じ民族であるパクを尊敬していたそうだ。弔いによりさらに顔の傷を追加したということがわかる。

「パクの顔の傷は若い頃のヤーボにつけられたってホント?」

決定的な描写はないが多分そう。
パクの回想の中、1950年「ボッコボコに完敗」し倒れている姿を見ると65年時点の傷と同じ場所に切り傷があるのがわかる。

なお、ヤーボが素手で殴りつける相手は作中に複数居る(ティム・お姫さま・おばあちゃん・百匹の虎etc)がいずれも打撲跡として描写されている。パクには素手で挑んだとあり、細かい顔の傷は意識的につけているのではないかと予想ができる。
その意図は描写がないため予想に予想を重ねるしかない。個人的には、脱北者、それも大尉をしていた軍人を堂々と米軍に所属させると引き渡し要請だとか後々面倒になるので人相を消したのでは、と予想している。しかし、決定的な描写はない。

ちなみにヤーボは第11集#66にて百匹の虎との戦いの中で恨みを引き受ける描写がある。
造作もなく一瞬でなぎはらい百人の虎は場外へ落ち試合は終了する。その後、彼らの元へ向かい、指でピッと傷を作る。

虎(パク・メンホ)への敬意を刻もう。

230P

弔いにより顔の傷を増やした百匹の虎に合わせ、顔に傷をつけたという描写。これにより百匹の虎は号泣し、ヤーボは澄ました顔でその場を後にする。
トーナメント戦では一層軽薄な描写が増えていてこのときのヤーボは全裸だし「行動が常にイケメンすぎる」と実況される冗談っぽい雰囲気だ。

ただ、傷の場所が、1950年のパクの回想にあった、弾薬もなく一人で戦い負傷したときの位置。
高確率で百匹の虎も同じ位置に入れているが、人により入れてたり入れていなかったり角度が違ったりしている。
それもそのはずで、1950年の傷の位置はヤーボしか見てない。
敬意を刻もう、の次に挿入される顔に傷があるパクの戦う横顔も、おそらくヤーボが思い出している描写。

ここで、ヤーボがどういう人物か考える。
彼は自分の見込んだ5歳児がどのように生き抜くかを観察し、スコットヤードを引き付けてから全滅させ、圧倒的な力の差を見せつけてからグリーンベレーに勧誘している。
同じように、1950年のパクのことも見ていたのでは?
その姿に惹かれ、「ボッコボコに完敗」させ部下にしたのでは?
そのときに付いていた、一人で生き抜く戦士として負傷した傷の位置を、20年後の1970年になっても忘れず、同じ位置に刻むことで敬意を示したのでは?
恨みの清算のための行動ではあるが、百匹の虎が知りえない部分はパクへの敬意が見える。


1950年のパクの傷の位置
1970年虎への敬意で刻む傷

「パク・メンホってどんな人?」

まとめると、
1920年生まれで1945年に息子が産まれた一児の父で、国が分断され48年から独裁的な全体主義の国になるが大尉を務め、戦いに身を投じていたところ20代のヤーボに完敗し、顔に虎のような傷を刻まれ肩書を捨て部下になるも家族のことは15年後も思い、第一グループに所属しながら百匹の虎を教育し、慕われるも野良犬として散った戦士。

三話しか登場しない。しかし、無駄を極限まで省いた濃厚な描写がある魅力的なキャラクターであることがわかる。

「トーナメント、その後について」

なお、「黒歴史」「BADEND」と作者に言われているが第三部構想というものがある。トーナメント後、第12集後の展開の構想だ。編集に却下され、なしになっている。

2016年3月時点の資料、86Pにヤーボと共に百人の虎の生き残り数名が行動を共にする案と、『この繋がりでパク・メンホ 朝鮮戦争~米軍~韓国軍の教育係~のエピソードを入れる』と書いてある。
96Pには『100匹の虎 グリーン・タイガース』と書かれ立ち絵もあり『頬の傷で連帯を生む』『グリーンベレーの天才、ヤーボが率いる最後の部隊』とある。百人の虎が大剣をかついだお姫さまと対決するラフもある。

カンボジアでの共産主義とヤーボの対決が予定されていた。そこに、共産主義の国から脱したパクに教育された百人の虎が同行する設定が存在していた。しかし、なしになった。
続編として、西島大介先生はカンボジアの共産主義を描く『コムニスムス』を連載している。

逃げません。切れません。黒歴史にしません。トーナメントはやりません。という強い言葉が添えられている。


「いかがでしたか?」

パク・メンホは、すぐに退場することは決まっていたとしても、彼のエピソードは第三部まで出てくることが予定されていたし、おそらく初登場のときから決まっていた。ほぼ1話だけといってもいい登場人物だが、魅力的なキャラクターとして描写されている。凄い。

どなたか詳しい方、本当に、パク・メンホについて私に教えてください。2007年の漫画ですが私は令和になってドハマりしてこれを書いています。なにかを間違えてる予感しかしかしません。
でも激熱には違いないので、この怪文書を読まれた方は『ディエンビエンフー』と『コムニスムス』を読んで是非パクだけでなく全キャラに、作品自体にハマってください。よろしくお願いします。

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