荘子 雑篇 説剣篇 第三十

荘子 雑篇 説剣篇 第三十

吉成学人(よしなりがくじん)
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この篇は、趙の国の恵文王に荘子が剣をもとに、政治を説くと云う話です。
もっとも、冒頭の文章で「昔」としるされているので、荘子本人の著作ではないようです。

趙の文王は剣術を好んでいました。
剣術が好きなあまり、都には三千人以上の剣士が客人として住んでいました。
王は日夜、剣闘を鑑賞し、死傷者は毎年百人以上出ましたが、王は剣術をやめられませんでした。
そのせいで、とうとう国の国力は衰えてしまい、周囲の国からは侵略されそうになります。
事態を危惧した太子は、王に剣術をやめさせられた者には千金を渡すと宣言します。
側近は荘子を推薦します。
早速、荘子に声をかけると、彼は千金を受け取らず、太子と面会し、話を聞きます。
荘子は後日、剣士の格好をし、王と面会します。
荘子は、自分の実力を「十歩進むごとに、一人を殺し、千里進んでも足を止めることはない」と述べます。
王はたいそう喜び、荘子と試合をさせるために、選りすぐりの剣士たちを集めます。
後日、再び王と面会した荘子は、王からどのような剣を使うのか、と尋ねられます。
荘子は、自分は三つの剣、「天子の剣」、「諸侯の剣」、「庶人の剣」があり、どれか好きなものを選んでほしいと述べます。

王は「天子の剣」について尋ねます。
荘子は、天子の剣とは、切っ先が北方の地で、刃先は泰山で、二つの国がそれぞれ、みねとつば、つかとする巨大な剣で、働きを制御するのは五行、決断するのは刑罰と恩徳、導くのは陰陽の二気で、ひかえるのは春と夏、活動するのは秋と冬。
この剣を動かせば、諸侯の誤りは正され、天下は皆服従する、と云います。
王はあまりの大きな話に圧倒されます。

次に、諸侯の剣について尋ねます。
荘子は、諸侯の剣とは、切っ先が才知に富み勇気のある人物で、清廉の人物を刃先とし、賢良の人物をみねとし、誠実な人物をつばとし、豪傑な人物をつかとするそうです。
この剣を動かせば、激しい雷とどろき渡るようで、国境のうちはすべて入貢し、君の命令に服従する、と云います。

王は次に、庶人の剣について尋ねます。
荘子は、庶人の剣とは、王が客人としている剣士たちのことで、闘鶏とあまり変わらないと述べ、死んでしまえば、国ために働くことすらできない、と指摘します。
荘子は、王が天子の地位にいながら、庶人の剣を好むのは、理解し難いと述べます。

王は、荘子を御殿の上に登らせ、料理でもてなします。王は反省したかのように、あたりを歩き回ります。
その後、王は三ヶ月、王宮に閉じこもります。
剣士たちは見捨てられたことを悟り、その場で自殺しました。

最近、熱いですね。