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【LIPHLICH】コンセプトワンマン 暗暗たる様-EP1-ライブレポート22/01/23

開始前のざわめきの背後でうっすらと流れているのは、LIPHLICHのライブではなかなか耳にした憶えのないデスボイスの凄惨な印象の曲だった。
<cradle of filth/deceiving eyes他>

この日の公演がコンセプトワンマンであることを思い出す。
『LIPHLICHコンセプトワンマン』と題されたライブが催されるのは、いつぶりになるだろう。
2013年の4月、目黒鹿鳴館で行われたライブに参加した記憶が、個人的には最後になる。

開演時間が来る。
客電が落ち、ざわついていた空気が静まり返る。
青いライト。

ステージを隠していたカーテンが一瞬でなくなり、薄暗いステージの上には微動だにしないメンバーたちが立っていた。
足音や気配はなかった。いつからそこにいたんだろうと思う。
中央にはマイクスタンド。その前に居るべき久我さんが居ないと見渡して、一人だけ後から現れるのかな、と思ったところで気が付いた。

――居る。
マイクスタンドの数メートル背後、ドラムセットの前の段差に腰を掛けて客席を見ている。

おもむろに音が入る。
ライトが七色に明滅する。音に呼応するような激しさ。

歌が入る。ライトは紫。静まり返る。

静と動がくっきり棲み分けしていると感じる。
曲は「Fの地雷 暗暗アレンジ」

バスドラに呼応する光。赤、緑、紫が明滅している。
微動だにせず、無表情に指引きするベースを見上げる。
中央に立ち、歌う久我さんはホラー映画に出てくるピエロのような線を目に重ねている。
唇は黒く塗りつぶされて、輪郭を黒くなぞる線が垂直な筋として首に描かれている。

「You are freaker」
声が伸びる。
妖怪みたいだ、と思った。人間ではない生き物。

効き目までちょっとあとちょっと ~
誘導しよう もっとこっち ~
早くおいでよ 間もなくBOMB

一曲目にこの曲を持ってくる意図が、その場ではピンとこず
ただただ、異形みたいな存在感を発する久我さんを見て、
声の伸びに呆気に取られていたが
改めて歌詞を読んで、地雷を暗喩に用いたその「この場に全員巻き込んでやる」という
悪意にも似た意図に気付いた。

曲が終わり、誰も声も音も発さない。
静まり返る会場に降る青い光。

爪弾く音に声が重なる。
青の明滅にバスドラが重なる。

覗いてみた儀式 そこかしこで重ねて見る快楽模様

1曲目の余韻に圧倒され、立ち尽くしていた客席が
耳馴染んだフレーズに誘われて、おずおずと拳を掲げ始める。
「カルトなでしこ」だ。

サビを迎えて、それまで遠慮がちだった客席に迷いが消える。
異形のように見えた心細さの中に、見知った顔を見出した時の安心感のようだと思った。
間奏中、右手で顔を覆う久我さん。左手は右腕の肘に。
(追記:LIPHLICH公式から、映像上がりました!

「ようこそ」の一言に続いては「It’s a good day to anger」
赤いライト。
先の曲でゆるんだ意識を甘やかすような見知った曲が呼び水になり、
観客はヘドバンを伴って音に溺れる。
客席の意識をステージの中央で束ねる久我さん。

信じるに足る煽動者だ、と思う。
表情すら出していなかったステージの上のメンバーたちに、無防備な笑顔がこぼれる。
ギターソロが良かった。

「LIPHLICHコンセプトワンマン暗暗たる様へ、ようこそいらっしゃいました」

鼓動みたいな導入。会場全体の空気が止まる。
次の曲は何か? とそれぞれが耳からの情報を頼りに探っている数秒間。

耳慣れたイントロで、思いもしなかった懐かしい曲が始まり、驚きながら笑ってしまった。
「嫌いじゃないが好きではない」
曲の毒々しさに見事に重なる紫と緑のライト。

どうだって言えるさ 赤の他人だからね

センシティブに振舞っていても君は意外と長持ちするよ

懐かしく辛辣な、よく知っている言葉たち。
この曲は活動初期のアルバムに含まれていて、当時はライブの雰囲気も今とはだいぶ違っていたことを思い出す。
振り付けが細かく決まっていたように思うけれど、現在の客席もそれをちゃんと踏まえていて、頻繁には演奏されないこの曲も、客席に愛されて継承されているのだということを思った。

「行く場所がないのは 一人だけじゃないよね」で暗い会場の中、
中央に立つ久我さんに、歌詞に呼応するような白いピンスポット。

「You are invited」の囁きに続いて始まったのは「淫火」
赤と紫のライトが、曲の描く地獄の景色に色を付けている。
ベースがいい仕事をしている。
ドラムもギターも、それぞれが映えるAメロ。
間奏に重ねられる久我さんの裏声もとても好い。
2番サビ明けのドラムのカンカンという音もとても好い。

地獄へ通じる人々の行列を描くような曲だから、コンセプトワンマンと聞いて一番にイメージする曲だったけれど、想像以上に解像度が高いというところに驚いた。
普段からよく演奏する曲ではあるけれど、普段が客席を景色に没入させるところに主眼があるとしたら、この日の演奏は耳慣れたものよりも情景描写に重きが置かれているような気がした。
コンセプトワンマン、という先入観と、その場の空気に影響されているだけなのかもしれないけれど。

これは、儀式だ、と思う。
ライブハウスという単語に想起される没入を、一曲で挙げるとしたら「淫火」だ。

地獄へ続く赤い幻が消え、空間が静けさを取り戻す。
聞き覚えのない音。
緑色の明滅。
ドラムとベースだけの導入。まだどの曲なのか分からない。
指引きされているベースの運指が王蟲の足だ、と思って、懐かしく思う。
前任のベースの進藤さんの運指を、私は見るたびに王蟲の足だと思っていた。

ギターが入り、赤いライトが加わる。
「ウロボロス(萬)」

歌が入ってやっとウロボロスだ、と理解した。
芸術点高いことしてて驚く、とこの時のメモに残している。

いつものライブなら、客席を巻き込む勢いに無意識に腕が動いてフリをしてしまう曲が、息を飲んで見守るしかない緊張感を帯びていて、安易な同調や共感を許さない張り詰め方をしている。

客席は動かない。
「鑑賞」するものだ、と言外に教えられたかのように従順に。
安易な没入をさせないことで、観客の意識を見ることに集中させているのだ、と理解する。

2番サビ後の「I‘m swallowing for all shadow」のワンフレーズが白いライトに照らされて、聖歌のように神々しく存在して息を飲む。

Underground という耳馴染みのある導入。
「書」だ。

「淫火」に並び、閉塞感のある濃密な情景が描かれる曲。

青いライトが深海のようだった。
胸元に結ばれていたリボンを解き、小道具のように弄ぶ久我さん。
ピンスポットに照らされる存在感は、魔術師みたいだった。

サビを迎え会場の中は明るさを増したが、青一色。
間奏は真っ赤の明滅。

吐いて吐いて吐いて食べて吐いて吐いて食べて吐いて吐いて吐いて食べて

解いたリボンを自らの目に押し当てて目隠しをして叫ぶ。

視界を奪い去って 果てなく自由になる

再び迎えたサビで、久我さんの頬にやっと肌色が戻る。
ラストフレーズ「いなくなった」の直後の一瞬。
それまで溢れていた音が消え、場は唐突な暗闇に沈む。
それまで見て聴いていた世界が、すべて幻だったかのような鮮やかな終わり。

「アルトラブラック」

緑色のライトの下の囁き。
イントロのババババババ ババババという音のところで赤い光の明滅。
それぞれの音が映える。
客席は音に合わせたフリをして、見知った曲の安心感を確かめるように目の前の景色に溺れる。

溺れるように曲を聞いて確かめ、間奏を迎えて、緑のライトを見て我に返る。
冷静なまま見届けようとしていたはずなのに、没入していた自分に気付く。

自由にしろ 自由にさせろ

アウトロでプルルルルと舌を鳴らす久我さん。

「踊り狂え」の言葉に続くのは「ヘンピッグ」
下手に来て久我さんが客席を煽る。
ベースの竹田さんにっこにこ。
ギターの新井さんは凄い顔をしてギターを弾いているのが見えた。
派手なギターソロだが、音が痛くなくて嬉しい。
演奏後、自然な拍手が客席から湧いた。

真っ暗な中、白い光が差す。
オルガンみたいな音。
ステージ中央で、両手を掲げて見上げる久我さん。
音が入って、ライトが七色に変わる。
「ロストデカダン」

見飽きた街が教えてくれた 罪も罰もここにはない

歌う久我さんが年端のいかない少年に見えた。
観客一人一人に歌の中身を説いているような。
大サビで両手を広げて見まわす。

崩れ去るのが 滅びゆくのが 正しいなんて誰が言った

久我さんのための舞台(時間と空間)だ、と思う。
自然にステージ中央に視線が引かれる。

ギターソロはギターにちゃんとピンスポットが当たる。
最後、黄金の光に包まれて終曲。
思わず息をつく。
(追記:LIPHLICH公式から、映像上がりました!

次の曲の音が入ると同時に緑のライトが明滅した。
「ガベル・マンの真相」

序盤のドラムが正確でタイトでとても好い。
個人的に、この曲は数回しかライブで耳にしていないなと新鮮に思う。
私がこの時期数回しか足を運ばなかったからなのだけど。

どうでもいいが仲良くしろ
つまらない選択はするな
利害が常に一致してるとは思うなよ
3分待とう
履き違えるな 二本立て

客席は久我さんに合わせて、右手をまっすぐに伸ばす。
(共感を拒む歌だな)と思う。
淡々と動かずに弾くベース。
アウトロのドラムが映える。
竹田さんが珍しく下を向いてベースを弾いている。
あまり見たことのない横顔がきれいだなと思う。

バイオリンみたいな導入に歌が先行。
「朗読するワルツ」

透明感。静かな海底みたいな景色。
急に赤の明滅が、静けさを塗りつぶす。

待たずともまた来るよ 冬
待たずともまた来るよ 春

孤独と祈りのイメージ。
ギターソロの時、他の人は動かない。視線さえ動いていない気がする。
青い空間の中を、白い光が切り開いてゆっくりと回転していた。
(追記:LIPHLICH公式から、映像上がりました!

(今日のライブは演奏の良し悪しじゃなくて、「面白かった」という感想が先に来る)
と我に返る。

ピアノの導入で始まったのは
「離人」

愛する人が離れてしまった後は
言葉などで良いのなら I love you I love you I love you

初めから何も持っていなかった 失った気でいたよね

今だから話してよ tell me tell me

正直なところ、私はこの曲に特に好ましい印象は持っていなかった。
発表した当初、「今までにない分かりやすい素直な歌詞だな」「感情移入を許す無防備さは珍しいな」と思った反面で、それを歌う久我さんはいつも通りにシナリオの人物を演じているように幾分ドライに歌っている印象があり、「他人事だなあ」と思っていた。

メロドラマのような歌い上げる曲、という以上の印象がなかったこの曲に、私はこの日、一番強い印象を受けた。
ライブが終わった後も、気を抜くとこの曲をステージで歌っている久我さんの姿が思い出されたし、無意識にこの歌のフレーズを口ずさんでしまい、頭から離れなくなったくらいに。

黄色、ゴールドに見える染まるステージの空間。
これまでと違う色調に珍しさと新鮮さを感じる。
メロウな曲調に似合う色だった。

中央に立ち歌い始めた久我さんの姿は、泣き笑いをしながら独白する女みたいだった。
斜め上を遠く見つめて祈るような。
あれが意識的な演技なのだとしたら、私は驚く。
自身の中にある嘆きや悲しみを、無防備さを晒す覚悟で表出させないと、人前であんな表情や姿にはなれないと思った。

懺悔の歌だ、とハッとする。
そうか、この曲、自分の悲しみに酔っている歌ではない。懺悔の歌なんだ、と腑に落ちる。

大サビ前でドラムの小林さんが、ベースを注視しながら、ドラムを注意深く叩いている姿が印象に残る。

哀しい 哀しい 哀しい

両手を掲げた久我さん。ゆっくりと下す。
頭を抱えて、マイクスタンドに縋りつき、目を伏せる。
回顧。反省。
I love you I love you と言いながら立ち尽くすアウトロ。

音が消えて、息を飲んで見守っていた客席から、自然な拍手が湧いた。
(追記:LIPHLICH公式から、映像上がりました!

赤いライト。
しゃがんで天を向く久我さん。
マイクスタンドを蜘蛛の糸に見立てて縋りついたまま歌う。
ポエトリーリーディングみたいな。
何て言っているのかは聴こえない。叫び。

琴みたいな音が入り、次が「サタンの戦慄」だと気付く。

立ち上がる。赤いライトが明滅。
デスボで煽り、逆ダイを煽る。
赤と紫に染まる空間。鼓動みたいなバスドラ。

唐突に(ピントが合っている)と感じる。
客席の意識に。音の明確さに。全ての照準がズレずにこの空間で交差している、と感じる。
(追記:LIPHLICH公式から、映像上がりました!

「飛ばしていくよー」の声に続いたのは「ロボトミー」
凄く久しぶりに聴いた。この曲。正直存在を忘れていた。
緑のライト。緑と青。
Aメロ前のベースのスポットがすごく良かった。

おかしくなりそうだ I’m dizzy
大群鳴らしてる Party Music
オールを失くしそうで溺れる感情 ちょっと処理中
1度目はまだ正気

狂いたがり同病相憐れむ

今、ちゃんと改めて歌詞を読み直してみて
ライブ中の意識みたいな歌だな、と思いました。

曲終わりで久我さんが自らの首を掻っ切る仕草の後、暗転して無音になったのがすごく良かったです。

一転して赤、青のライトで空間の色が変わる。
勢いのある曲調に、客席から拳が上がる。
「RACE」
曲の勢いが空間と客席を飲みこんでいく。

血で血を洗うレースへ急げ

Race to the top of your hell
どこかの花屋が転んだ 助けずに放っておけ 先に行け
Race to the top of your hell
気になるパン屋が怪我した さあその手 差し伸べろ 巻き起こせ

Race to the top of your hell
近くの花屋と恋に落ち もうダメと抜け出そう 道連れに
Race to the top of your hell
お得意パン屋が眠りだす さあその手 頬叩け 共に行こう

夜を越えて 朝も越えて走る
終わらない 軍靴が響く

(今、改めて歌詞をちゃんと読んでみて、こんな歌だったのかと驚きました)
(すいませんでした)
(人生の歌ですね、これは)

ギターソロが良かったです。
ベースの指引きもとても良かったです。
サビのコーラスもめちゃいい。
ベースを弾きながらにっこにこの竹田さん。
両手を握る久我さん。広く開いて客席に向けて「おいでおいで」と手招きをする。

勢いの付いた流れで「ラスソン行くよー!」と叫び始まる「MANIC PIXIE」
会場の、地下二階のコンクリートの床が揺れる。
客席全体の今まで抑圧されていた衝動を、押さえていた箍が外れた感じ。

ドラムソロの時、客席までみんな座って、後方まで見えるようにするの、すごくいい。
配慮があって優しい文化だと思う。
ドラムをたたく小林さんは、あまりに速く叩き、集中しているので、息をしていなさそうに見える。

それまで涼しそうに見えていた竹田さんも、よく見ると顔中に玉の汗。
すごくいいドヤ顔をしていて良かったです。

MANIC PIXIEの曲中は、私の意識も楽しく飛んでいたので、あんまり詳細記憶がありません。

本編終了で暗転。
暗闇の中、携帯を見る人がいなかった。
雑談をする人も居なかった。
声が出せない中、重なりばらけるアンコールの拍手が続く。

暫くして登場。
緊張がほどけた表情でにこにこしている。
「疲れちゃった~。よく来てくれたね!」
「気が抜けちゃった。MCなしでやるの久しぶり」
「いつものフランクな兄さんたちに戻りますんで」
「途切れずに行けてよかったよ俺は」

アンコール1曲目は「リップ・ヴァン・ウィンクル」
明るくて身軽。ライトもキラキラ。
動き雑なくらいぴょんぴょんする。
パーティーソングだなあとまぶしく思いながら、さっきまでの緊張感との違いに驚く。
のびのびしていて、動きも自然。

「まだまだ行くよー」
アンコール2曲目は「特例Z」
客席が飛ぶ。久我さんも飛ぶ。
1番の終わりあたりでベースのトラブルらしく、演奏が止まる。
久我さん「やったね、アンコール伸びた」

再開。Aメロのベースのスラップは格好良かった。
無邪気さ、身軽さ。

特例じゃない私に 星になれと言わないで
どうしたらいい 分かるはずないじゃない
あなたのその偶像にも勝てないなら
今すぐ豹になってお帰り下さい

内容に反するというか、この曲、個人的には大好きな曲「piropo」に印象が近いです。
声や人物像が理由かもしれない。
こんな無防備な曲を書いていたことに、驚きました。
中の人の誠実さ、なのかもしれない。

この気が抜けるタイミングに、この可愛く無防備な曲を持ってきて
無邪気に楽しみ切るという意図。
本編終わったら、気を抜いて楽しむって、腹を決めていたんだなと思いました。

「もういっちょ行ってみようかー」の声で始まったアンコール最後の曲は「FLEURET」

NO ONE KNOWS 僕だけの小さな世界へと
NO ONE DOES 君だけを連れ込んでみせる

以前、この曲に注目して記事を書いた時の印象よりも、もっと積極的で明るい曲に見えてハッとしました。
前に聴いた時は、心細い祈りを支える切実なもののような印象だったのが
今回、すごく明るく、力強く、迷いなく、当然のことのように差し出された手。

とらわれてなんかいないよ TAKE THIS HAND

客席の一人一人に目線を合わせて、手を伸ばして
「僕と行こう」と叫んだ久我さんは、強くなったんだと思いました。

それを迷いなく、信じている客席。
客席の一人一人が、迷いのない信頼と愛情とささげ、それを誤魔化さず、目を逸らさず、正面から受け止めて、引き受ける存在。
感謝と、愛情と、信頼が、結晶したような時間だと思いました。

最後の曲にFLEURETを持ってくるのを、私は初めて見たけれど、すごくいい終幕。
今日見た景色を包括して、愛情と信頼を確かめ合って、

君のすべてをいただいた先が 理想であれ

という祈りを結晶させて終わる一日。
後に残すものはなにもないなと思わせる最後の曲でした。

ワンフレーズごとに、確かめるように拳を掲げる時間。
音を、歌詞を、声を、祈りを、現在を、存在を、確かめる演奏。

言葉を選ばずに言うと、彼らの強さと、存在に、感動しました。
これ以上ないくらい、いい幕切れ。

黄色い明るい光の下で、にこにこに笑い、
「そういえばあけましておめでとう。今年もよろしくね」
と言い残してステージを去ったメンバーたち。

「本日の公演は全て終了いたしました」というアナウンスが流れて
諦めずにアンコールを求める拍手をしていた客席の空気が緩む。

思わずその場にへたり込んでしまった。
人の流れに沿って、外へ出て、友人を見つけ
「今日、なんか、すごかったね」
「やばいもの見たね」
「ちょっと、落ち着きたいから、煙草喫いに行こ」
「分かる、混乱してる、情報量」

「離人が、頭から離れないんだけど」
「分かる、めっちゃ良かった」
と言葉を交わして、やっと深く息を吐くことができた。

「何というか、久我さんオンステージだったね」
「くがしんご、ああくがしんご、くがしんご」
「分かる」
「久我さん、本当に偉い」

「楽器が、全く歌の邪魔しないね」
「そうなの、信頼できる」
「わかる、えらい」
「いい味方見つけたよね」

「コンセプトワンマンで、こんだけいいライブやったんだから、DVDにならんかな」
「なってほしいな」
「売ってほしいな」
「Amazon流通してほしいな」
「Youtubeに上げてほしいな」
「もっかい見たいな」

断片的にしか言葉にならない感想を、好き勝手に互いに吐き出しながら、私たちは駅へ向かった。

この後数日間に亘って、この状態が続いて仕事もろくに手につかなくなるとは、この時は正直思っていなかった。

■追記
この日のライブ後に、久我さんから写真が上がっていたので添えておきます。


■追記2

この日のライブ映像が、LIPHLICHのnoteアカウントで
1500円で限定公開されました!
このレポート読んで、もし「どんなものなのか見たい」と
思った方は、1500円出しても後悔しないと思います。
スポットは無料で見られるのでそちらだけでもぜひ。


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