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「失恋墓地」

若い頃から何かを失った時にボクは食べ終わったアイスバーにマジックで書いて近くの公園の庭園に埋めていた。
例えば、ファミコン、2年間使った財布、童貞、、など。
ある時からボクはその場所の事を「失恋墓地」と呼んでいた。
そしていつしか、色んな人がどんどん埋めるようになっていた。
「勇気の無い私」「壊れてしまったラジオ」「アキラ」「ゆみこ」「焦燥感」、、、
モノだったり、人だったり、気持ちだったり
皆が失ったものをアイスバーに書いて
埋めているのがどんどん増えていき
いつしかそれを見るのが楽しくなっていた。

四月某日、ボクはiPhoneを買い換えたので
昔のiPhoneをアイスバーに書いて
公園に向かった。
その途中、泣きながら、全身ボロボロの少年とすれ違った。
少し気になったボクは
遠く離れていく少年の右手にマジックが握られているのを見た。

そして、「失恋墓地」に行き
新しいアイスバーが刺されていた。
「パパ、ママ」と。

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