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アールト大学の授業紹介; Design Joint Study

Aalto UniversityのMaster of ArtsはArt, Design, Architectureの3領域に更に別れていまして、ぼくの所属するCoIDはDesignに属しています。Design Departmentには他にCreative Sustainability, International Design and Business Management, Contemporary Design, そしてFashion, Clothing and Textile Designの計5つのコースがありまして、12単位分は全デザイン学生に共通の必修授業で構成されています。Design Joint Studyと称されているらしいです。

授業は来週からなのですが、シラバスを見ていても面白いので、軽くご紹介。実際に体験したあとに詳細はお伝えできればと思います。(全貌はこちら)

⭐INTRO course

この授業では、BachelorからMasterの学生の準備が整うような橋渡しを役割としています。BA👉MAへと進むに当たり下記のようなことが資質として求められ、それを補うための授業となります。

・カタチからコンテンツへ
・プロダクトからプロセスへ
・単一領域から領域横断的なコラボレーションへ
・知識の蓄積から生成へ

実際のコンテンツにおいては、未来のデザイナーとしてどのように社会的な変化や課題を取り扱えばいいのか、どのように未来のデザインに求められる能力や役割、実践、組織のカタチを構想していけばいいのか、などの問いがカバーされています。

授業では、ゲストスピーカーの基調講演やリーディングマテリアルをベースにディスカッションをしながら進めていき、主な焦点は取り扱われる概念に対して創造的・批評的に考えを深めていくことです。そうした概念を「自分自身やチーム、社会と関連付ける礎」となるように統合することを期待されます。

授業課題では、そうして深めた考えを、「未来のデザイン組織」をプロトタイピングすることにより、表現していきます。面白いのが"組織"というだけありかなり具体的にプロトタイプを構築するようで、組織ミッション・組織構造からジョブディスクリプションまで求められます。

⭐Design & Culture

「デザインと文化」というコースでは、戦後にフォーカスしたフィンランドデザインを含め、デザインの歴史についての概観を得ます。その中で、デザインと社会・歴史・経済・技術発展・社会現象やイデオロギーなど文化的側面のあらゆる領域との関連性を明らかにしていくことが狙いです。

デザインを現代社会とフィンランドのイノベーションシステムの中に位置づけて読み解き、デザインとフィンランドの生活様式、消費習慣や価値観を洞察し、最終的にフィンランドの国としてのアイデンティティにデザインがどのような役割を果たしているかを探求する授業です。
そうすることで、Learning Outcomeとしては、社会におくデザインの役割を理解するための歴史的・概念的な礎を築き、デザインドリブンの文化と社会的変革を生み出すための洞察や言語を獲得します。

多様性あるバックグラウンドを考慮して、留学生に対してはフィンランドデザインの特徴を明らかにしつつ自国の文化の比較軸とすることに重きを置き、フィンランド人学生に対しては自国の文化の基盤を新鮮なまなざしで脱構築するためのツールを提供することを狙いとします。

下記の主要テーマを取り扱いながら批評的アプローチを用いて進めていきます。

・フィンランドデザインの歴史
・デザイン政策と国家イノベーションシステムにおけるデザイン
・現代のメジャーカルチャーとサブカルチャーにおけるデザイン
・フィンランドの生活におけるデザイン

⭐Design Research

デザイン・リサーチでは、デザインの実践・リサーチ駆動の実験的デザインやアカデミックリサーチなどあらゆるリサーチ領域の多様な関係性の理解を深めます。
人間中心デザイン、実践手動型デザイン・リサーチ、デザイン・マネジメント、リーダーシップとリサーチ、物質と創作を用いたデザイン駆動のリサーチ、サステナビリティのためのデザインなどをテーマとして取り扱います。

また、基礎的な認知科学理論やデザイン・リサーチで一般的に使われる方法論を学びます。このような理論背景を用いながら、学生は体感的に幾つかのリサーチメソッドを用いて、それぞれの分野の探求を行います。

Learning Outcomeとしては、下記です。

・リサーチの成果に関する認知科学と方法論に則った意思決定を議論できる
・デザインの実践とリサーチ型デザイン、探求のためのデザインなどの関係性を説明できる
・あらゆるリサーチタスクに最適なメソッドを選択し、実行できる

まとめ

この他、2年次には Thesis seminarが必須となります。ぼくはひとまずINTROについていけるかドキドキ。特に英語で思考を深められるか...

でもこれらを整理して、なぜこの3つの授業が必須なのかという部分にAaltoの考えるデザイナーとしてのあり方のヒントが見えてくるように思います。

・常に未来をプロトタイプしていくチカラとマインドセット
・プロトタイプを通して新たな実践知を創造していくこと
・文化や社会的背景が構造的にデザインに大きく影響すること
・ミクロ的な日常生活やリアルがデザインと文化性と密接につながること
・リサーチはあらゆるデザインのコアになるであろうこと

さて、実際に不安と楽しみが同居していますが、なんとかなるでしょう。

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