詐欺師の暴走

詐欺師が会社に入ってからは、次から次へといろんな事が起こります。

営業部の社員から、在庫管理の為
新しいシステム導入をして欲しいと要望があったのです。

在庫がいつでも誰でも見れる様に、
ちゃんとしたシステムを作りたいと言われました。

商品が足りなくなったり、売残り在庫になったりしていたのです。

営業担当者が、いろんな会社から見積もりを持って来ました。

それを見た詐欺師は
米国に本社のある某ソフトウェア会社に依頼すると言い出します。

その場にいた全員が呆然としました。

何せ最低でも1億は、かかります。

そんなお金、どこにあるの???
私はオロオロするばかり。

詐欺師は続けます。

どうせやるなら、大手企業に頼まないといけません!
ちまちま小さな会社に頼んでも、大した物はできませんよ!

そしてその某ソフトウェア会社に依頼する事になるのですが、詐欺師は一切がっさいを 自分のお気に入りの社員に、丸投げします。

自分は何台もパソコンを並べた自分のデスクで作業しているかの様に、
週3日位、会社に顔を出すのです。

アイスクリームを食べながら、さも株式や投資の画面を見て、仕事しているように見せていました。

私もはじめは、FXの仕事を
しているんだろうと思っていました。

あれよあれよと言う間に、某ソフトウェア会社と契約し、その会社の担当者が3人常駐するようになりました。

ソフトウェア会社の役員の支社長まで、会社にせっせと足を運んでは、進捗状況を確認していました。

何故なら、3ヶ月で全システムの導入を依頼していたからです。

某ソフトウェア会社も、はじめてのケースだったので、気合いを入れて取り組んで下さったのです。

しかし、それを面白くない社員もいました。

毎日レクチャーを受けるのですが、どうしても受け入れられない社員がいるのです。

前の方がわかりやすかったのに。
何でこんな事、しなくちゃいけないのですか。
社内は、てんやわんやの状況になっていました。

私は、そんな社員をなだめ
頭を下げる毎日を 送っていました。

何でこんな事、私がしなくちゃいけないの?
私だって、訳わかんないんだから。
言い出したあなた(詐欺師)がやる事でしょう!

と思いながら。

そんなある日、詐欺師は新聞に1面広告を出すと言い出します。

こんな大企業と取引していると、会社の宣伝になるからです!
さぁ、これから皆さん忙しくなりますよ!

と社員たちに言うのです。

私は、ホントにいいのか?そんな事して。

と思いましたが、詐欺師お気に入りの社員にさっさと段取りをさせます。

ソフトウェア会社の支社長との会談形式の記事がいい。
カラーで1面広告ですからね。

お気に入りの社員に指示を出していました。


ん千万の費用が、かかります。
どっからその費用は出すの?

私は不安で仕方ありません。

そして当日がやって来ました。
新聞社の取材班やソフトウェア会社の社員等、大勢の方が集まり
インタビューがはじまりました。

私がしどろもどろにならないよう、
原稿が用意されていました。

さも私がシステム導入を発案したかのような文字が、並んでいます。

支社長との会談もはじまりました。

私、すっごいウソばっかり言ってる。
嘘つきだわ。
罪悪感が体中に、湧き上がってきます。
早くその場から、逃げ出したい!

そればかり考えていました。

商品を持って、笑顔で写真撮影。
ウソ笑顔です。

やっと終わって、皆さんにご挨拶。
本日はありがとうございました。

慌てて逃げる。

階段を駆け上がる。

部屋に入ると、詐欺師は

どうでしたか?
いい記事になりますよ。

笑顔で言って来るのです。

もう勘弁して下さい!

心の中で叫んでいました。

一週間後、新聞に記事が乗りました。

いろんな所から反響がありました。

各銀行の方が、押し寄せます。
こんな急成長の会社に乗り遅れてはいけないと。

無担保で融資をします。
いかがですか。

詐欺師の思惑通りの展開になって行きました。

何億もの融資が、会社に入って来ました。
はじめの内は、利息だけは払っていました。

でも実際には、融資されたお金を回していただけの自転車操業だったのです。

ほとんどは、詐欺師がFXに注ぎ込んでいました。

そんな事になっている等と全く気づきもしなかった私は、なんて情けない世間知らずの歳だけ経った子供でした。


あの時ちゃんと言えればよかった。

あの日こうすれよかった。

今更、後悔しても仕方ないのはわかっています。

でもでもと自問自答を繰り返すばかりです。

また明日に。

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