新作オペラ「メドゥーサ」を終えて

所感を綴りますよ。無事にオペラ「メドゥーサ」終演致しました!
はい!パチパチパチィ!


スタッフ・キャストの全員での集合写真

現代に合わせたオペラ

今回の新作オペラ「メドゥーサ」はギリシア神話を題材にしながらも現代のニーズに合わせた作品になったと思います。
上演時間も休憩を含めて1時間半〜少し程度、オペラ初心者の人も楽しめるスピード感と音楽的にも凄まじくドラマのある作品でした。(蒔田さんの構成力素晴らしいです。)
ワーグナーのようでもあり、プッチーニのようなヴェリズモチックでもあり、耳にメロディが残っています。
また、日本語だったのもよかったですね。結局、外国語作品は一般のお客様からすると字幕を追うことになるので舞台での演技に集中しにくいこともあると思っているので日本人のお客様に対して日本語で作品上演するのは素晴らしか良いことと思いました。

といいつつも個人的にはいつかイタリア語とか英語とかでもやってみたいですね。また何か表現が変わりそう。

キャスティングの重要性

今回のオペラは前記事でも書きましたが、作曲家の蒔田裕也さんがキャスティングされています。

キャストの皆様

やはりね、舞台に慣れた歌手をキャスティングすることは非常に重要です。例えば全員若手で経験値がまだまだな歌手ばかりだと稽古が進まないので短い期間で作品を完成させるのは難しいのです。
または、慣れてない人が一人二人いたとしてもその中で他の慣れたメンバーで諸々フォローできるぐらいのバランスがちょうど良いのですね。
やはり演技の立ち回りや舞台所作などは経験を積んでできるようになるものです。

なので今回は本当に良いバランスのキャスティングだったと思います。それぞれがそれぞれの良さを持っているキャスティングで個々が光るものでした。
ベテランの歌手の大先輩、先生方の立ち回りは本当に熟練度が違うもので本当に細かな動作が勉強になるものでした。僕自身もテンションが上がって、稽古から演技も非常に楽しくやらせて頂きました。ベテランの多い現場にいても遅れをとらずついていけるようになった自分に対してもあぁ、俺も成長してるのかと思いました。学生時代の頃に何も立ち回りを知らなかったペーペーの頃を思い出し、感慨深いものがありました。

また、この作品のユニークな存在はアンサンブルの精霊たちですね。ストーリーテラーの役割も果たしていました。さながら魔笛のクナーベやダーメのようで面白いなと思っていました。
アンサンブルが入ってからの他キャストを含めた6重唱などはまたまた圧巻でした。

今回歌手にとってはホールの響きが少し特殊(客席にはシンプルに聞こえて、舞台側では声の返しが聞こえない)で、なかなかにやりにくさもあったのは事実です。しかしそんな状況でもうまく調整して歌い切れるキャストであったことも成功の理由の一つだったと思います。
やはりここも経験値です。舞台、劇場が歌手を育てる思考は至極正しいものと思います。

音楽スタッフ、演出家

今回、ピアニストの重左さんが素晴らしかった。オペラ「メドゥーサ」はもともとピアノ伴奏想定で書かれたそうなのですが、もう音がオケのように重厚で、非常にに展開の激しいものでした。また相当に難しい伴奏を弾いてドラマと歌手を引き立てて下さった重左さんに感謝しております。
そしてやはりマエストロ金丸さん。スタイリッシュな指揮であり、明確に歌手の音楽を導いてくださいました。コンタクトもかなり取りやすく非常にフレキシブルに歌うことができました。

ボイストレーナー、指導者として

個人的なことですがアテーナ役の野々村さんは私の元にレッスンを約一年通って下さっているソプラノ歌手の方です。日本各地でのコンサート出演やレコーディングなど普段から勢力的に活動されております。

僕は女声に関しては基本的に僕の歌い方、発声を教えることをしていません。男声と女声では僅かに声のメカニズムが違うからです。
基礎として重要となる呼吸法も僕が普段用いるものとは違うものを教えていました。

いやね結果として言えば本当に素晴らしかった。重くもなく軽くもなく、ただ健康的な発声を作り出せるように僕もレッスンしてきたつもりでしたが、実際本番はまぁ声が高らかに響いており、なおかつ発音も明瞭に聞こえやすいものになっていました。
面白いのは声量が大きいわけではないという点です。響きの増幅で歌い上げることで健康的に聞こえるというものが極めて良いものということを再認識させてくれました。
そしてやはり舞台を通じていきなり上達するもの、100回のレッスンよりも1回の舞台と言っても良いぐらい成長されていました。
先生の立場で見てしまうととにかく嬉しいものがありました。
まぁ逆に僕も演奏者だったので今回は緊張しましたが笑笑 先生が恥を晒すわけにはいかないとも思っていました。先生は自分の演奏も無事終わってホッとしています。

ペルセウスを演じて

まぁここからは自分自身の話にしましょう。
僕はもともと英雄譚、ギリシア神話など大好きです。またゲームも好きでドラクエなどもずっとやっています。いわゆるファンタジー系は大好き人間なのです。
今回ペルセウスという英雄を演じられることは非常に嬉しいものでした。個人的にはドラマチックにカッコよくをモットーに歌っていました。

稽古場では笑いを大切にしていますので隙あれば笑いを取る精神です。そこはもう関西人ですね。逆にふざけすぎないように自制もしています笑笑
和やかに楽しくハイクオリティに稽古をするのが個人的には一番良いと思います。

さて、ペルセウスという役どころについて言いますと、二幕まで登場しません。二幕から登場していくつかのセリフを歌い、喋り、展開の激しいアリアを歌い上げたあとはメドゥーサとの戦いのシーンとなり激しい音楽で歌い切ります。
突然登場するこの英雄を演じるためのメンタルの持って行き方が今回の僕の中での課題でした。舞台で声を出せるのも二幕から、周りのキャストは声を出しているので暖まってきている中、一人だけこれからスタートという状況。なかなかにスリリングでした。
しかしやはり舞台に行くと面白いもので演じることに徹することができるものです。今回は槍でメドゥーサを刺す演技もあり、かなり目立つシーンでした。武骨にとにかくあまり人間味を溢れさせないことが大切だったかなと思っています。任務を遂行する武人であることが大切と思っていました。なので全体として基本的には感情的になったり内面性を見せたりしないことを大切にしていました。今回のオペラにおいてペルセウスの性格や人間性まで描かれる必要はなく、ただ英雄であれば良かった。英雄らしくメドゥーサを殺害し、目的を果たす役で良かったと思っています。

いや、しかし面白い役どころでした。突然彗星のように現れる役。なかなかない経験をさせて頂きました。
まぁ、まとめに、
めっちゃしょうもない感想を言うと

槍と剣を持てて楽しかったです!!!!(少年の心)

僕自身の発声メソッド

今回は前述のように特殊な会場でした。
響きがあまりない舞台で歌うときのコツはそのホールに合わせた声を微調整するが大切と僕は考えています。今回は本番日も早めに楽屋に入り舞台で声を確認しました。
実際今回は連日歌いすぎもあり声が疲労していました。そして特殊な会場となるともう無理は聞かない。しかしドラマチックに聞かせたい。そんな葛藤の中、結果として使ったテクニックは声を曲げるという古来よりある古典的なテクニック。鼻に引っかけるわけでもないけど鼻の後ろにフックをかける、上顎から声が出ると言うあの流派です。
これがよかった。声を押さずに落ち着いて演奏できました。どこで曲げるのかと言うと色々ありますが、文字ではなかなか書けないです。まぁ手で言うなら僕の言うあの手というやつです。(わかる人にはわかる)
正確には曲がる時に声を飲む、音を飲むという概念も使っています。母音修正とも言えますがよくあるあの修正法ではないですね。
やはり良いメソッドだなと思います。今後とも仲良くしていきたいメソッドです。

発音に関して言うと僕はあまり子音を飛ばすという技術を日本語では使わないです。流れと重要な音節をほんの少しだけ強調し、ウ母音もオに寄せすぎず、深くしすぎず(外来語は特例あり)日本語に聞こえるラインを保ちます。
Hは自分の中でH,Fと発音を使い分けます。例えば、へび(hebi、このbは少し軟子音に寄せる)、風船(Fusen,このsも軟子音のような感じですね、強調しすぎない)などなど。

しゃ行はsyではなくshに置き換えます。
しゃ(sya→sha)
のような感じ。これ以上説明してしまうとテクニックを説明しすぎるのでこれぐらいにしておきましょう。やはり声楽家といえども日本人ですから母国語の歌を上手く歌えていたいものです。そして字幕がなくてもしっかり歌詞が伝わる歌手になるべきだと思っています。

終わりに

さて、今回無事初演を終えることができました。
10/6 20時にまた作曲家の蒔田さんから発表があるようなのでご期待ください!

それでは!


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