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当事者意識ってなんだ?

今から約20年前、私は新卒でネット広告の代理店に就職しました。
入社から1年半ほど経った頃でしょうか。大手クライアントの開拓に成功し、取引がどんどん大きくなって、ついには会社全体の売上の半分近くを占めるくらいの取引規模になりました。最初のうちはクライアントの信頼を勝ち取れたことや、みんなから頼られるようになったことが純粋に嬉しかったです。

しかし、その状態が続いていくうちに不満を抱くようになりました。
それは「会社にいいように使われてるだけなんじゃないか」という不満でした。

大型取引先に成長したそのクライアントの対応をこなす傍ら、新人教育も任されるようになった私は、寝る時間も遊ぶ時間もなく仕事漬けな状態でした。毎日朝帰りが普通でしたし、土日ももちろん関係なし。
だんだん自分の引き出しからものを出してばっかりだと感じるようになっていたある日、同業他社に就職した同級生がすでにマネージャーになり、年収も何百万円も差が開いていることを知ります。
当の私はといえば、入社時からほぼ昇給せず、ポジションも変わらず。
毎日18時に帰る役員からは「期待されてるってことだ!」と笑って励まされる。


しばらくして、私はその会社を辞めました。
転職先に選んだのは、実力主義を謳っているベンチャー企業。
やがて成果を出せるようになり、半年後には営業MVPをいただき、また新人教育とか企画とか、いろんな業務を任されるようになりました。

しかし、前職と全く同じことが起きました。
給料も変わらないし、昇格もしない。全然評価されない。
朝会では役員が「当事者意識を持て」「自分の会社だと思え」みたいなことをよく言っていました。
私はその意味がわからないどころか、「押し付けるなよ」とすら思っていました。

「経営は現場のことが全然見えてない」

そう思って、いい条件で声をかけてきた会社に転職しようと思いました。

この頃世間では「スターウォーズ」新三部作が公開されて話題になっていたのですが、私はそれを見て、こう思いました。

「なんでジェダイ評議会はこんなにすごいアナキン・スカイウォーカーをジェダイにしないんだ!」

しかし、アナキンほど突き抜けたスキルがあったわけでもなく、年齢も重ねていた私は、彼とは少し違う思考を持ちました。
それは「全く風土の違う会社で全く同じことが起きているのはなんでだろう」という疑問です。

そもそも私は「経営は現場のことをわかっていない」と思っていました。
しかしよく考えてみると、経営陣は自分と同じ現場の仕事をしているわけではないのだから、当然といえば当然です。
では一体、経営は何の仕事をしているのでしょう?
なぜ、自己評価と彼らの評価に乖離があるのか?
一体自分に何が足りないと思われているのか?
このような疑問を通じて、実は私の方こそ、相手(経営)のことを理解していないことに気づいたのです。

それから、自分の上司の仕事や役員の仕事に興味を持つようになりました。
会社の売上と利益の構造、組織の構造、業界の事情。
そして会社が向かいたいと思っているビジョンがなんなのか。
リーダーがどんなミッションを担っていて、なにをやっていて、なにがつらいのか。
自分の仕事がどのようにそのリーダーや経営の仕事につながっているのか。

そんなことを想像したり、知ろうとするようになってから、不思議なことに日々の仕事がちょっと楽しくなり出しました。
同時に、自然と新聞の興味のあるページも増えていきました。(それまではテレビ番組欄とスポーツ欄しか読んでませんでした)
そのうち、上から落ちてくる「司令」や「戦略」にも、自分だったらどんなメッセージを発したり、工夫をするだろうと考えるようになったり。

そうこうしていたら、それまでとは毛色の違う「ふわっとした課題をどう解決するか」という類の仕事を任されるようになり、なんというか、仕事がどんどんエキサイティングになっていきました。

そんなある日、人事査定のフィードバックで上司に言われました。
「オマエはこの一年で、すごく当事者意識が芽生えたな」

また出た。当事者意識。
正直、まだよくはわかっていなかったように思います。

ただその頃、久しぶりに見返したスターウォーズ新三部作に思ったのは、こんなことでした。

「オビ=ワン・ケノービにこんなに愛されてたのに、どうしてわからないんだアナキン!」

着眼点や共感ポイントは大きく変わっていたようです。

当事者意識って、説明するのも、持つのも、誰かに求めるのも、なかなか難しいものだと思います。
ただ、持った方が、仕事や人生の幅が広がって、ちょっと楽しくなるものではあると思います。

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