元CIID出身者が開催するデザイン思考のワークショップで、旅行サービスをデザインする

Studio Optさんが主催する「コペンハーゲン式デザイン思考を学ぶ!1dayワークショップ」があったので参加してきました。朝10時から夜の6時まで計8時間のワークショップだったにも関わらず、かなり濃い内容だったため、あっという間に時間が過ぎていきました。

ワークショップでは元CIID出身のkurさん、kamiyaさん、元 Design School Kolding出身の平野さん、KMD出身でRCA、Prattに留学された田端さんが講師となり、旅行サービスをテーマにしたワークショップを行いました。

▼目次
1. 概要 : プログラム、PEOPLE CENTRED DESIGN、テーマ、チーム構成
2. 調査 : Assumption Mapping & Research Planning, Interview
3. 分析 : Research synthesis, Insight generation, HMW
4. 概念化 : Rapid Ideation, Concept Mapping
5. まとめ : 最終発表、質疑応答
6. 感想 : 日本のカルチャーを見つめ直すきっかけに。実務で活かしたい学び

概要

▼プログラム

10:00-10:15 オープニング
10:15-10:30 チームビルディング
10:30-11:00 Assumption Mapping & Research Planning
11:00-12:30 Research
12:30-13:00 Research synthesis
13:00-14:00 ランチ
14:00-14:30 Insight generation & 'Opportunity finding
14:30-15:30 HMW作成 & Rapid ideation(ブレインストーミング)
15:30-17:30 Concept Mapping(アイディア絞り込み&発表資料作成)
17:30-18:30 Presentation and Q&A
18:30-18:45 まとめ

コペンハーゲン式のデザイン思考のプロセスでは、プロトタイプを作成し、テストを行うまでやりますが、1dayという時間的な制約もあり、「コンセプトをまとめる」まで行いました。

▼PEOPLE CENTRED DESIGN

ワークショップの初めにコペンハーゲン式デザイン思考の大事な考え方について説明を受けました。PEOPLE CENTRED DESIGNと呼ばれているものです。

PEOPLE  CENTREDとは「1. 人々を巻きこむ」、「2. 人々から着想を得る」「3. 全ての人々を考慮する」この3つが重要な要素となります。デンマークでは企業の利益を考えてデザインするのではなく、コミュニティ全体として幸福になるにはどうすれば良いか?という考えに基づいてデザインされているそうです。

(PEOPLE CENTREDについて、詳しくはこちらに書かれています)

▼テーマ

今回のワークショップのテーマは「旅行」です。旅行にまつわるサービスについて検討していきました。

▼チーム構成

僕含めデザイナー3名と、現役医学部生1名の計4名のチームでした。まとめるのが上手い方、違った視点でアイデアをたくさん出す方など、バランスの取れていたチームでした。

調査

▼Assumption Mapping

(私たちのチームの成果物)

ワークショップの最初に行われたのが、Assumption Mappingと呼ばれるものです。このワークでは、5分間で「旅行」という言葉から思いつく単語をポストイットに書き出してシェアしました。ひたすら旅にまつわるエピソードを思い出しながら、単語を書き出していきました。

5分経った後はチームのメンバーがそれぞれ書いたアイデアをホワイトボードに貼りながらグルーピングしていきました。

▼Research Planning

次のワークでリサーチテーマの設定を行いました。先ほどAssumption Mappingでグルーピングしたアイデアの中から気になるトピックを1つ選び、質問のテーマを選んでいきました。

気になるトピックって言われてものなぁと思いつつ、ワークを進めていたところ以下のようなアドバイスをもらいました。

▼アドバイス
・いきなり議論するのではなく、1人で深く考えてのちにアイデアを交換する方が建設的に議論できる
・とにかく書いて、考えをビジュアライズさせること
・このワークでは数より質が大事。本当に面白いと思ったことを1つずつ出しても4人いれば4つになる。
・方向性を決めることが大事なので、文章にできなくても良い

頭で考えていることを紙に書いて共有することで、新しいアイデアが生まれやすくなったり、前に話していたことに戻りやすいという効果がありました。「とにかく視覚化する」というプロセスは、今回のワークショップ中かなり役立ち、実務に戻ってもこのプロセスは意識していこうと思いました。

最終的に、私たちのチームは「旅の楽しみ方を最大化するためにどのようなプランを計画すれば良いのか?」というテーマに決めました。

次にリサーチテーマに基づいてインタビューの質問を設計していきました。インタビューの設計ではリサーチテーマに関する答えを聞くためにはどのような質問をすれば良いか?を考えて質問内容を検討していきました。

このワークでもまず自分で深く質問内容を考え、それをチーム内で共有しあい、ブラッシュアップさせて行くという方法で質問内容を考えていきました。

私たちのチームは、「最も楽しかった旅行の思い出は何ですか?」「その旅行はどのように計画しましたか?」「その旅行に行こうと思ったきっかけは何ですか?」という内容を質問することにしました。

▼Interview

(インタビュー中の様子)

次にユーザーインタビューを行いました。

▼インタビューのルール
・各チームで役割を決める(インタビュアー、議事録、インタビュイー)
・インタビュイーは隣のチームへ移動する
・毎回役割をローテション
・20分 x 3セット

インタビュイーをそれぞれ交代で回すので、僕自身もヒアリングされてみて初めて気づくこともありました。

▼インタビューで意識すること
・インタビューは証拠集めではない。目的はインスピレーションを得ること。
・誰も1人では生きていけないので、社会とのつながり(家族、友人、社会、モノ、コト)を知ることを意識する。
・思い込みを排除する

インタビューは証拠集めではない。目的はインスピレーションを得ること」ということを意識するのが新鮮に感じました。後の分析のセッションでも強く意識することになりますが、ユーザーが発言した内容を深掘りしていき、潜在的なニーズを引き出すのが大切だと感じました。

分析

▼Research synthesis

(私たちのチームのインタビューの気づきメモ)

次のワークではインタビューの中で得た気づきをチームのメンバーに共有するために、それぞれの気づきをポストイットに書き出していきました。例えば「聞いたことや見たもの」「ユーザーのニーズ」「潜在的ニーズ」「印象にのこったフレーズ」等を書き出していきました。

その後、似たようなアイデアをグルーピングしていきました。この時にもらったアドバイスが以下の2点です。

▼アドバイス
・潜在的なニーズを決めることが大切。
・とにかく考えていることはポストイットに書いて行く

自分のアイデアを頭の中に残したり、口に出して終わりにするのではなく、常に書き出してシェアすることが大切。ということを何度も意識しました。

▼Insight generation

次のフェーズではインタビューの気づきメモを参考にしながら、ユーザーの本質的な欲求について探っていきました。このフェーズのアウトプットでは「誰の?」「潜在的な欲求」を書き表す文章を考えました。

インサイトを決めるフェーズでもそれぞれ自分たちの気づきを紙に書いた後に、チームのメンバーに共有していきました。このフェーズでは次のようなアドバイスをいただきました。

▼アドバイス
・決め切ることが大切。
・リサーチのフェーズにおける未練をどこかで捨てる。
・1つのフェーズに固執しない。
・いつでも前のフェーズに戻れるので、安心して前に進む。
・row dataにはいつでも戻れる。
・主語、述語が大事。

確かに潜在的なニーズを決めようとすると、インタビューの議事録を見返したり、気づきメモってこれで出し切ったのかな?と不安になることがありましたが、このアドバイスを受けてから吹っ切れて前に進むことができたように思います。普段の仕事でも正解のない課題に取り組んでいると中々これで良いのか?と悩む時もありますが、とりあえず決め切って前に進むことの大切さを学びました。

このワークで自分たちが出したインサイトは以下の2つです。
人々は旅行に対して非日常的な体験を求めているが、大切な誰かと旅行の体験を共有できれば、行き先はどこでも満足する

旅の体験や思い出は時間によって変化する。それは人との関係性に大きな影響を受ける

2つめのインサイトはあるインタビュイーの方が、「元カノと付き合ってた時に行っていた旅行ってその時は最高に楽しかったけど、今となっては忘れたい思い出。」というセリフを元に考えたのですが、これを説明した時のチーム内での納得感が強く、インタビューでインスピレーションを得るって感覚を味わったような気持ちになりました。

▼HMW (How Might We?)

(チームのアウトプット)

次にInsightに対するHow Might We?を考えました。How Might We (どうすれば私たちは○○できるのか?)ではゴールと制約を与えることで次のIdeationのフェーズで斬新なアイデアを生み出すための問いを生み出しました。

この時には以下のアドバイスをもらいました。

▼アドバイス
・質問は抽象的すぎず、具体的すぎないものを考えろ
・デンマークでは面白いアイデアが出たら、How might weにアップデートしろって言われることもある。気にせずHow Might Weはアップデートしろ

いきなり良い質問を考えることは難しかったのですが、次のセッションの途中でHMWをアップデートしても良いと考えると質問も考えやすかったです。「まずはアウトプットしきること。出たアウトプットを元に考える」というLEARNING BY DOINGの意識を強く感じました。

概念化

▼Rapid Ideation

ついにアイデアを概念化するフェーズです。このフェーズでは以下の手順でブレインストーミングを行いました。

▼手順
1. 各チーム、ファシリテーターを決める
2. ファシリテーター以外、起立
3. 起立した人は他のテーブルに移動
4. ファシリテーターはテーブルのメンバーにアイデアを説明
5. 3分ブレスト、5分で説明して2セット
6. ファシリテーターを交代
7. 1~6を繰り返す

このフェーズの特に面白い点は、「メンバーを入れ替えてブレインストーミングを行うので、全く議論に関わっていない人たちがアイデアを出す」その結果、自分たちのコンセプトを深く知らない人たちの新しい視点でのアイデアを得ることができるというメリットがありました。

完全に違うメンバーにブレストしてもらうので、前のフェーズのHMWで正しい問いを考えることの重要性も感じました。

ファシリテーターもブレストに参加できるので、自分たちの想いもアイデア出しに反映させることができるそうです。(ちなみにデンマークではユーザー参加型のデザインプロセスが行われているため、80代のおじいちゃんがこのブレストに参加することもあるそう)

1人のファシリテーターに対して2セット回しているのは、1回出たアイデアを元に相乗りして面白いアイデアを考えるためだそうです。実際僕が参加したブレストでもこれめっちゃ面白いなってアイデアにうわ乗りして、面白いアイデアを重ねて行った結果、斬新且つ面白いアイデアがたくさん出ていました。

▼Concept Mapping

(チームの最終成果物)

先ほどのブレインストーミングが終わった後は、チームに戻りたくさんのアイデアをみて、投票でアイデアを決めました。僕らのグループは1人3票ずつ投票していき、投票数が最も多かったアイデアに決めました。

その後、そのアイデアを実現可能なアイデアに近づけるため、コンセプトマップを作成しました。

コンセプトマップでは「コンセプトの名前」「コンセプトの説明」「想定しているユーザー」「サービス提供者の役割」「ポジショニング」等を書き表した後、ユーザーシナリオを書きました。

まとめ

▼最終発表

(最終成果発表で話している私とチームのメンバー)

私たちのチームは「短期限定お家取り替え」というサービスを考えました。
大切な誰かと過ごす日常を丸ごと非日常に変えてしまおうというコンセプトで、現地の生活を短期限定で経験できると面白そうだよねという話をしました。

質疑応答で「こうするともっと良いんじゃない?」「こういうケースってどうなの?」という議論ができたので、それらの意見を元に更にアイデアをブラッシュアップできそうだなと感じました。

他のチームの発表も面白そうなアイデアばかりでとてもワクワクする最終成果発表だったように思います。

▼質疑応答

(CIIDのクラス後風に円になって、講師陣と質疑応答している様子)

最後に講師の方と質疑応答する時間があったので一部を掲載します。

ブレストを他の人がするのはなぜ?
・他の人の視点が大事。なぜなら、1つの問題に集中しすぎているから。
・デンマークではユーザーもブレストに参加している。ただ、ユーザーがブレストに参加するのは文化的な背景の影響も大きい。
実現可能性ってどうやって評価していますか?
・ユーザビリティとテクノロジーの実現可能性を突き詰めた後に、ビジネスモデルを考える
日本でワークしないのはなぜか?
・文化背景によってワークするかしないかが変わる。アプローチを変えないとダメだから、今はコンサルとしてやっている。
・意思決定者が現場のプロジェクトに参加させるのが必要。アイデア出しの段階で関与すると愛着を持つのでやりたがる。
今日やった内容をどうやって実務にアイデアを活かすのか?例えば、既存のサイトをスケールさせる時にどのように活用できるのか?
・どういう機能があるとユーザーがスケールさせるか?という話にする。つまり、問いの立て方を変える。
・デザイン思考は新規よりも既存事業の方が親和性高い。
・既存事業に適用して、事例を積み重ねるのが大事。
デンマークにおけるデザインの定量化をやっているのか?
・定量化はしていない。
・論理的な組み方と違う方向でイノベーションを目指そうとしている。
・デザインに投資した企業がどれだけ売り上げに影響しているかという話はある。
・デンマークの大学では定量性は諦めて、プロトタイプの時の反応をひたすら集めて、実現資料にはめている。
・何を言ったかをすごい大事にしている。
・過去にやった結果を公開しているのでそれをみると良い。

感想

▼日本のカルチャーについて考えるきっかけに。
ユーザーがブレストに参加して一緒にアイデアを考えるというのは、デンマークの国民全体に「コミュニティ全体の幸福」に対する意識が強いからだそう。

質疑応答でも話されていたが、コペンハーゲン式のデザイン思考をそのまま日本で活用するのは難しく、カスタマイズしたプロセスを実践して行くことが重要になるとのこと。

そう考えた時に、講師の方がデンマークの国民性をスラスラと説明していたように「僕は日本のカルチャーや国民性についてきちんと言語化できるだろうか?」という問いが生まれた。

日本に生まれ、日本でデザイナーとして働くのであれば、自分たちの国の文化について見つめ直しても良いのかもしれないと思った。

▼実務で活かしたい学び
「とにかく考えていることは視覚化する」
「Learning by doing」
「インタビューは証拠集めではなく、インスピレーションを得るため」
これらの3つは明日からでも直ぐに実践したい学びだった。

一方、このPeople Centred Designのプロセスを今の環境で効果的に活用できるためにはどうすれば良いのかという答えは見つかっていない。今後も日本のカルチャーと向き合いながら考え続けていきたい。

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Masaki Haruta

freeeのデザイナー。横国経営学部卒。freeeでは税務申告ソフトのデザインをメインに担当。将来はヨーロッパでデザインしながら毎晩ビール飲みたい。

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