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【すぐ分かる】『NBAドラフト』なるものの凄さを説明します

2019年6月4日、千葉ジェッツに所属する富樫勇樹選手が日本人Bリーガーとして初の年俸1億円に到達したという記者会見が行われました。
本当に喜ばしく、素晴らしいことです。

その会見の最後。去り際に富樫選手はメディアに対してこんなことを話しました。

『皆さん、最後に一つ。あと2~3週間後にNBAのドラフトがあります。本当に、八村塁選手がそこに掛かっているということで、これ(年俸1億円の話)以上にすごいことだと思うので。あまりTwitter等でも話が出ていないので心配になり…。皆さんもうちょっと盛り上げてほしいなと思い、宜しくおねがいします!』

自らの会見だったにもかかわらず、八村選手の『NBAドラフト』をもっと取り上げて欲しいという発言をした富樫選手。
富樫選手自身もアメリカで高校生活を送り、NBAに挑戦していた過去から、ことの重大さを誰よりも理解している選手。
だからこそ、仲間の偉業をもっと報じて欲しいと、マスメディアに訴えたかったのだと思います。

では、『NBAドラフト』の何がすごいのか?
NBAドラフト』なるものの仕組みを、『NBA=株式会社NBA』としてわかりやすく(?)一般企業風に置き換えてお伝えするという趣旨のもとnoteに残しておこうと思います。

1.新卒は定員60名です、株式会社NBA

株式会社NBAというグローバル企業に新卒入社できる定員は、全世界から毎年60人しかいません。

なんだ、60人もいるのかよ」って思う人もいるかもしれませんが、世界におけるバスケットボールの競技人口は4.5億人で、世界トップの競技人口を誇るスポーツにまで成長しています。(ちなみに2位はサッカーで2.6億人)
この数字には女子も含まれているので…、雑ですが男女5:5で単純に半分だとしても、2億人以上の競技人口の中からたった60人しか選ばれない新卒枠が、『NBAドラフト』。
選りすぐりの新卒たちだということがイメージ頂けるかと思います。

2.そもそも社員数は何人なの?株式会社NBA

株式会社NBAの社員数は450~510名です、年間で(1シーズン)。
NBAは全部で30チームありますが、1チームで抱えられる選手の数は15人+2人(※2way契約といって下部組織のGリーグに所属しながらNBAにも出場できるという新しい契約)のMAXで合計17人となります。
競技人口に対してNBA選手の割合は凄まじく少ない、というのが現実なのです。

そして、ある意味恐ろしい企業です株式会社NBA。
社員数が450人程なのに、毎年新卒を60名も受け入れている時点で離職率が半端ない。
ブラック企業なのか!?と思うほどですが、そんなことはありません。

3.新卒60名はめちゃくちゃ高給取り株式会社NBA

NBAドラフト』は全30チームが1順目、2順目と2回指名できるようになっています。
実際にはドラフト指名権自体がトレードのアセットとして使われることも多いため、杓子定規にはいかないのですが、ここでは簡単にそう定義しておきます。

1順目で指名される30名と2順目で指名される30名で何が違うのか?
端的に言うと、お金の額と契約期間が保証されているか、保証されていないかという違いです。

実際には『ルーキースケール契約』と言って、ドラフト1順目で指名された30人は指名された順位に応じてサラリー額が保証され、期間としては4年契約を締結し、うち2年間は完全保証契約となります。
2順目で指名された30名は、無保証な2年契約を締結するためチーム事情で解雇になったりすることがザラにあります。ドラフトされたからと言って安心できる立場ではないのです。

とは言え、ドラフトされると貰えるサラリー金額は日本のそれとは桁が違います。
1順目で指名される30名の給与明細はコチラ↓

(出典:NBA REAL GM. https://basketball.realgm.com/)

わかりやすく110円換算で円表示しておりますが、1順目1位指名(俗に言うドラフト1位)されるとルーキーシーズンの年俸はおよそ7.5億円、二年目は8.8億円、三年目は9.2億円4年間総額でなんと37億円も手に入るわけです。
2位以下の選手も同様に、新卒入社した瞬間に億万長者の仲間入りです。
(実際はこのマトリックスに記載されている金額をベースとして80~120%の範囲でチームと交渉して金額は確定します)

無保証の2順目指名の30名は当然これ以下にはなるのですが、株式会社NBAは勤続年数に応じた最低年俸をベースに交渉が行われるのでご安心を。
今年であれば約9千万円が最低年俸として保証されております。

ちなみに、昨シーズンから日本人2人目のNBA選手となった渡邊雄太選手。
例えるなら彼は、バイトから契約社員として株式会社NBAに入社した1年目という感じでしょうか。
2年目の来シーズン、正社員としてそれなりの年俸が保証されるかどうかが注目ポイントです。

4.チームという名の配属先はどうやって決まるのか?株式会社NBA

全世界から選ばれし60人、さらに上位30人はとんでもない金額を手にすることができる『NBAドラフト』というものがどれくらいエゲツないのかはご理解頂けたかと思います。
では、彼らの配属先ってどうやって決まるの?というお話です。

指名順位というものは、チームからすると上位であればある程、価値が高いわけです。
当然なことながら、優秀な人材を採用したい!というのは世の中の企業すべてが思っていることだと思います。

指名順位を決めるにあたっては、ロッタリー(抽選)方式が取られています。
前年のシーズンのチームの順位に応じて当選確率を上げるというのが現在取られているやり方です。

NBAは30チームのうち、16チームがプレイオフに進むことが出来ます。
プレイオフに進むことが出来なかった弱い14チームにロッタリーの権利を与えるというわけです。

要するに、営業成績が悪い部署に大型新人が行くようにして組織の活性化を企業として狙っているということです。

日本の場合(Bリーグ)は営業成績が良い部署に大型新人が無条件で採用されるケースがほとんどにつき、どんどんと部署間格差が生じている状態が起こっています。
これを良いと見るか?、悪いと見るか?また別の機会にnoteにでも書こうと思います。

5.我らが八村塁はどこの部署に配属されるのか?株式会社NBA

結論から言うと神のみぞ知るです。
ただ、ここの順位を予想したりすることがNBAファンの間では最も面白いとされています。
これも別の機会に説明しますが、NBAにはサラリーキャップと言って1チームが選手に対して使うことができる予算枠が毎年ルールで設定されます。

およそ、現在は1チームあたり年間100億円が予算枠です。
各チームはその予算枠の中から、優秀な人材を採用するためにルールの中で予算組をしています。

チームによっては『ハイパフォーマーなトップ営業選手を何人も揃えて頂点を目指そう!』という方針のチームもいれば、『しばらくは若手中心で組織の文化を育成しよう!』という方針で戦うチームもいます。
ここにも細かなルールがたくさん存在しています。こちらもまた別の機会に。

八村選手の場合、まずは現場に出て仕事をしっかりと覚えて、結果を出すこと。
これが長く働くことができる条件になると思います。

少なくとも1順目指名で30位以内で指名されれば4年間働くことは保証されるようなものなので、その4年間でどこまでスペシャルな人材になれるかどうかが鍵になります。

■一流の営業マン(スコアラー)になるのか?
■営業マンを支える一流のバックオフィス人材(ディフェンダーやロールプレイヤー)になるのか?
■一流の傭兵として転職流浪人材(ジャーニーマン)になるのか?

人それぞれ適性があるのは会社と同じです。
その適正を見極めて精進するためには、まず現場に出る(試合に出る)ことです。

そういう観点では、できる限り現場に出やすい環境を有しているチームが望ましいでしょう。

現地ではモックドラフトと言って、専門家らの指名予想サイトがいくつか存在しています。
その中で、八村選手はだいたいドラフト15位前後のロッタリーピック前後では指名されそうだという予想が多いです。

何れにせよこの範囲で指名された時点で、年俸は2~3億円4年間で10~15億円は稼ぐ形となります。
富樫選手が会見で話をした通り、金額的なことだけで見ると何倍もの価値があるものを八村選手は手にしようとしているということになります。
(もちろん金額だけではない存在価値の高さは、皆さんの感じる通りだと思います)

6.NBA選手が当たり前になる時代を目指して

2004年に田臥勇太選手が日本人として初めてNBA選手となりました。
わすか4試合の出場にとどまりましたが、夢が現実になった瞬間でした。
それから14年もの月日が流れ、ようやく誕生したのが2人目のNBA選手、渡邊雄太選手。
15試合の出場でしたが、来年以降が楽しみな活躍をしてくれました。

そして日本人選手3人目になるであろう八村塁選手。
これまでの日本人選手のNBAへの入り方とは全く違って、ドラフトで入るということの重大さはなんとなくご理解頂けたでしょうか。

世界ではメジャースポーツであるバスケットボールもまだまだ日本では扱いが小さく、間違った表現で報道されることもしばしばです。

少なからずバスケットボールにビジネスとして携わっている身として、少しでも正しい情報が届けられれば良いなという気持ちです。

それが、偉大なことを成し遂げようとしている選手たちを正当に評価することに繋がればなと思います。

Bリーグも3年目ではありますが、徐々にサラリーも増えています。
まさに子どもたちの夢の職業になりつつあります。

9月には中国でワールドカップがあり、来年には東京五輪があります。
Bリーグの成長もそうですが、日本においてバスケットボールがさらにメジャーになり、いずれはNBAに次ぐリーグになれると信じています。

その時は日本人のNBA選手が当たり前のような人数で活躍しているかもしれませんね。
さぁ、日本のバスケを盛り上げましょう。


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