2003年ヒッチハイクの旅 〜0番線〜 3日目「一人目」

 旅に出て3日目の朝。起きたのが、4時半ごろ。
 秋田にあるこの「おがち」という道の駅は、後でとてもいい場所だということを知った。東北でなにかの一位になったらしい。
 なにかの一位になっただけあって、色々設備が整っていた。空調の効いた室内。夜間も閉まることなく開放されている。椅子もテーブルもある。壇になっている寝そべられる場所もある。私もここでカバンを枕代わりにして横になって寝た。ここまで乗せてくれた人たちがあるとかないとか言っていたコインシャワー室もあり、自動販売機や、カップ麺の自動販売機までもある。それよりなにより、綺麗である。
 コインシャワー室に入る。鍵をかける。お金は使わない。シャワー室と、洗面所があるのだが、洗面所でもお湯が出る。そうとわかれば、そこで、シャンプーをして、持ってきたタオルをお湯で濡らして、体を拭く。かばんの中を整理して、コインシャワー室を出る。
 しばらくそこでぼーっとしながら、休憩所に出入りするトラックの運ちゃんらしき人に声をかけようかどうしようか迷いながら、高いなと思いつつカップラーメンを朝食にする。結局声をかけられず、7時ごろ外に出る。

 外には何台か車が停まっていた。さっき休憩所にいた感じのよさそうなおっちゃんに声をかけてみる。しかし、逆方向に行くという。近くに停まっていた山形ナンバーの老夫婦にも声をかけてみる。こちらも山形から来たという。逆方向、撃沈。 声をかけるのは勇気がいる。断られ続けるのに耐えるだけの勇気がいる。もういいや、自分は。ボードハイにしよう。
 自分から声をかけるスタイルのヒッチハイクもあるが、私は、やっぱりボードをかかげてやるボードハイのほうがいい。これなら、優しい人だけが停まってくれる。だけど、確実に、先に進むスピードは遅くなるだろう。
 声をかけたのは、その二組だけで、すぐに目の前の国道を歩き出した。少し行ったところで「山形」と掲げ、ヒッチハイク開始。
 顔の右側から太陽が昇ってくる。そして、ジリジリと照りつける。右半分だけ焼けてしまうのではないかと思ってくる。
 1時間しても一向につかまらない。どうしよう。道の駅は、すぐ目の前。そこに戻ることもできるけど、どうせなので、先に進もう。

 少し行ったところには大型スーパーのマックスバリューがある。広い駐車場を通り、まだ開いていない店の前にあるベンチで少し休むことにした。
 そこで横になって休んでいると、その店の人らしき小太りの男の人が「大丈夫です?」と声をかけてきた。大丈夫ですと答える。私はただ、休憩してただけだけど、心配に思われたか、邪魔に思われたかしたのだろう。
 開店が9時で、その9時過ぎに起き上がり歩き出し、国道へ戻る。少し先にあるトンネルを抜ける。トンネルを抜けても、やはり田舎道だった。グラウンドで野球をしている子どもたちが見えた。あたりは山で囲まれている。
 川を越えたところでしゃがんでヒッチハイク開始。まだ立ってヒッチハイクするというのが恥ずかしく思える。しかし、一番初めのときよりは確実に恥ずかしさは和らいでいる。時刻は9時半をまわっている。
 ここでも、ただ車が通り過ぎるばかりでなかなか停まってくれそうになかった。
 一度座り込んで、マジックを取り出し、「山形」と書かれた紙の次の新しい紙に「新庄」と書く。ヒッチハイクは、運が命である。しかし、場所、時間、交通量、行き先などの条件も色々かねそなえている。行き先を変更するのはある種の賭けみたいなものである。私の書いた新庄は、山形より手前。要するに「近くまででもいいから乗せていってー」ということである。「山形」と書いていても、途中まで乗せてくれる人もいるけど。
 新庄をかかげ、再び待つ。そして、早くに車が停まってくれた。
「こんにちは」
 6台目ともなると挨拶する余裕が出てきた。新庄まで行くか確認し乗り込む。

 乗せてくれた人は坊主の男の人。山形市まで行くという。わざわざ「新庄」と書かずに「山形」のまま待っていてもよかった。時間もこの場所でヒッチハイクしてから30分ぐらいしか経っていない。
 子どもと奥さんを秋田に置いてきて、またこれから仕事に戻る途中だという。
 鳥取まで自転車で行ったことがあるらしい。というか、九州まで行こうとしたけど、鳥取で断念したらしい。それでも凄い。私の中の坊主の人のイメージって、なにかしでかす人だと思っている。なにかとんでもなく凄いことをしそうなイメージがある。
 やっぱり、こういう人はヒッチハイカーを乗せてくれるんだなと思う。同じようなことをしたことがある人。気持がわかる人。私も、もし将来、車に乗ってヒッチハイクをしている人を見つけたら乗せると思う。嫁さんの尻に敷かれていなければ……。もし結婚して、その嫁さんがヒッチハイカーは汚くて嫌いだなどと言う人で、尻に敷かれていれば乗せられないだろう。昨日、最後に乗せてくれた3人のうちの運転席にいた人は、そういうことがあったと言った。父がヒッチハイカーを家に連れてきたけど、それを奥さんに怒られた、と話してくれた。

 田舎道をずっと走る。それほどしゃべる人ではなかったけど、自転車で旅をしていたときの話などを聞いた。
 途中で車を降りて、アクエリアスを買ってきてくれた。
 そして、11時半ごろ、一軒のラーメン屋に入る。ありがたくご馳走になることにした。
 もつラーメン。聞いたことあるようなないような。ここではこのラーメンが有名らしい。そして、この店もちょっとは有名らしい。ごく普通のラーメン屋に見える。
 カウンターに座る。もつラーメンを2つ。途中、大盛りかどうか店の人が聞いてきて、坊主の男の人は一つ大盛りと答える。出されて気づいたが、大盛りが私のほうやった。ありがとうございますと心の中で思い、ラーメンを食べる。
 うまかった。「もつ」と呼ばれるものは、こりこりしたところは美味かったけど、ふにゃっとしたところはレバーみたいで美味しくなかった。
 ラーメンを作っている場所の奥にいる、食器洗いとかしている人が煙草を吸っていたのがちょっと気に喰わなかった。
 店に来た制服姿のままの女子高生がさわやかに思えた。
 食べるのが遅い私を、急かすことなく、ゆっくり食べと言って待ってくれていて、そして、すべて食べ終わり腹いっぱいになって店を出る。
 再び車を走らせる。少し寝る。市街地を走り、国道を反れ、山形駅まで乗せていってくれた。
 礼を言い、その坊主の男の人と別れる。

 時間は13時前。Sに電話をかける。すると、30分ぐらいで来られるとのこと。とうとうSに会える。それまで駅構内でも見てまわることにした。
 女子高生や若者が通り過ぎるが、あまりなまっているようには思えなかった。電話で話しているときのSもあまりなまってないし、山形の人はあんまりなまってないのだろうか。それとも、若い人だけなのだろうか。
 駅の階段を上がり、歩く。駅周辺や駅構内は秋田駅と似ている。駅構内と繋がっているデパートに入り、トイレに行く。すると電話が鳴る。電話に出ると、もう1〜2分で着くと言う。
〈早いな。はよ、支度せんと〉
 話している途中でなぜか電話が切れる。
 その間に服を着替えて、鏡で自分をチェックして、また電話が鳴り出す。
 電話でしゃべりながら、改札口付近にいると言うSの言うとおりそっちへ向かう。目印などは一切教えていない。教えようと思う間にも改札口に着く。
〈どれやろう、どの人やろう〉
 改札口に顔を向けている、私から見ると背を向けている緑色のシャツを来た髪の長い人がいた。
 あっ!
 と思った瞬間、向こうもこちらに振り返り、お互いに気づく。この人だ。
 一礼して、電話を切って、挨拶を交わす。初めましてだけど初めましてじゃない。初めましてじゃないけど初めまして。
 ネットのお絵描き掲示板で仲良くなった人。今回、この旅で会いたいと思う人は全員お絵描き掲示板つながり。写真で顔を見たことがある人もいれば、見たこともない人もいる。Sとも、電話では話をしたことはあったが、顔は知らなかった。今回、初めて会った印象は、イメージと違っていたけど、思っていたよりしゃべりやすそうでよかった。キャピキャピな女の子だったらどうしようと思っていた。
 お土産をもらった。スケッチブックとカラーペン。これになにか描いてとのこと。これで暇つぶしに困らないかもしれない。本でも持ってきていれば暇つぶしができたかもしれないけど、ヒッチハイクしてるか、歩いているか、寝てるか、車の中で会話しているかのどれかぐらいしかしてないと思い、なにも暇をつぶすものを持ってきていなかった。昨日の朝、道の駅「ひろさき」でも、朝が明けるまですることがなくて、スケッチブックの一番後ろに絵を描いていたくらいだった。

 Sとこれからどうしようかということになったが、私はさっきラーメンをご馳走になって腹がいっぱい。そして、あと数時間で始まるSがこれから見にいくという踊る大捜査線の映画も、私の見たいと思う映画ではない。一緒に飯を食べることも映画を見ることもできなくなった。
 さて、なにをしよう。
 考えてもらちが明かないので、しゃべりながら映画が始まるまでそこらへんをぶらぶら歩くことにした。
 天気は曇っている。ほどよい気温。暑くもなく寒くもなくちょうどいい。
 Sは、駅の近くに停めていた自転車を押しながら、歩く。
 山形には来たものの、特に「これが山形や!」というものはない。秋田に似た街並み。駅周辺は、建物が多いが、やはり山形らしさは感じられなかった。そんなものなのかもしれない。
 美術館まで足を運ぶ。残念ながらあまり興味がありそうなものもなかったので入らなかった。近くにお城があるらしい。あまり興味はないとは伝えるが、他に見るものもなさそうだったので、見にいくことにした。後で思い出にはなるだろうし。
 霞城公園という。「霞」と書いて、「か」と読むらしい。ちょこっと敷地内を歩き、済生館という建物を見る。以前は病院だったらしい。そして、あきてきたので、他の場所へ行く。
 Sの家に行ってもいいかと尋ねるが断られる。絵の合作とかしたかったが残念。
 そして、もうすぐ映画が始まる時間が近づいてきた。よくわからない建物で写真を撮り合い、14時半ごろお別れ。
 本当に短い間だったけど、会うことができただけでもよかった。

 近くのデパートのような場所に入る。上のほうの階に行く。勉強するスペースがある。そこでは黙々とみな宿題やら勉強やらに勤しんでいる。
 そこの隅の方で、椅子に座り眠る。

 そこから見る景色では雨が降っているのか降っていないのかわからない。天気予報では、そろそろ雨が降ってくるころだ。もう夕方で、陽もこれから落ちてくる。早く行かなければ。早くヒッチハイクしなければ。
 起き上がって外の景色を見た私は、もと来たであろうドアを開けようとしたら開かなかった。
〈はずかしー〉
 そのまま、近くの壁に飾ってある山形の昔の白黒写真を眺めたあと、別の出口から出て、トイレに行き、一階へ降りる。
 雨は少しぱらついていたと思う。近くの別のデパートみたいなところの三階の百円均一の店に行く。「キャン・ドゥ」という店。秋田にも、青森にもあった。
 さっき起きたのが18時ごろ。19時で閉店らしいが、もう19時。急いでゴミ袋を探す。スケッチブックが濡れないための袋。探しても見当たらないので、店員に聞く。愛想のない店員は、ゴミ袋の場所を教えてくれる。半透明ではなく透明のゴミ袋を購入。コンビニで買えばもっと高くつくだろう。私はただ、スケッチブックが雨に濡れなければいいのだ。
 旅に出る前、雨の日のヒッチハイクって、みんなどうするのだろうと考えていた。なにかボードにビニールの袋でも被せているのか、傘だけでボードも濡らさないようにしているのか、はたまた、雨にあたることなんて滅多にないのか。
 なんにしろ、今、雨が降っている。スケッチブックを濡らしてはなるまいと、今、ゴミ袋を買ったのだ。かなり大きいが、他に代用の利きそうな、しかも安く手に入るものがない。しかも、本当なら出発するときに買えばよかったのだが、ゴミ袋以外でもう少しなにかいいものはないかなと思い買わなかったせいで、今になってしまった。百円均一がぎりぎり開いていてよかった。
 今の店で傘も買えばよかったと思ったのは、少ししてからだった。
 雨が降っていたので、青森の百円均一の店で買った折り畳み傘を取り出し、差して歩く。しかし、数分後に、調子がおかしくなった。傘を開いたときにその状態を維持しておくためのバネででっぱる金具がでっぱらないのである。これでは、傘は開けど、すぐにしぼんでしまう。今ここにその傘を買った店がないので、返品してもらうこともできない。
 手で押さえていこうか、それとも、バネが直るかもしれないから、いじりながらいこうかとも思ったが、やっぱり新しい傘を買うことにした。「セーブオン」という聞いたことのない名前のコンビニで、約300円もするビニール傘を買う。300円は痛い。1日で計算している食費代に相当する。しかも、折り畳みではないので持ち運びに不便である。しかし文句はいっていられない。
 国道へ向かい、歩く。もうだんだんと陽が暮れている。陽があるうちにヒッチハイクをするのはもう無理だ。
 途中、交番が見えた。今回はお世話にはならんぞと思う。

 しばらく歩くと国道13号線に出た。そして、南下しながら、ヒッチハイクポイントを探しては傘をさしながらヒッチハイクをする。今度からはしゃがみもせず普通に立ち、胸より道路側にボードを向けて持つ。
 今回のヒッチハイクは、まったく車が停まってくれなかった。場所を変え、場所を変えしていく。大型トラックが通るときは傘を前に向ける。そうでないと、傘が裏返ってしまう。そのときに、前が見える透明のビニール傘でよかったと思った。
 雨は次第に強くなっていく。ゴミ袋はさっそく役に立ってくれたけど、さっぱり車は停まってくれなかった。
 Sにもメールして、助けを求めた。どこかここらへんに寝られる場所はないか、と。レストランのガストなら朝の5時まで開いているという。通りを歩いていて、眠れはしないけどカラオケもいいかなと思ったりした。

 車は停まらないし、雨は降っているし、暗くなるし、寒くなるし、まったくいいことなし。
 一軒のコンビニ、ローソンを通り過ぎ、ラブホテルを通り過ぎたところで、またヒッチハイクを開始。しかしここでも停まらない。
 諦めてローソンまで戻る。そのときに、さっき後ろから歩いてローソンに向かっていたおっちゃんが、ローソン側から来て「新潟まで行くのか?」と声をかけてきた。あと何か言っていたがよくわからなかった。
 そう、私がかかげていた先は新潟。山形市からだと、結構な距離がある。しかし、下手に特定の場所を書いてしまうと、新潟に直行する車を逃してしまう気がした。新潟まで行くのに、これといって大きそうな町がなかったのだ。
 確かに、今のこの状況では停まってくれる車はほとんどいないだろう。時間もボードが見難い夜だし、場所もこれといって停まれるスペースがあるわけでもないし、車はびゅんびゅん走っているし、行き先も遠いし、しかもこんな雨の中びしょびしょになっているかもしれないと思うと、誰も乗せないだろう。でも、それはあくまで運ではあるのだけど。
 ローソンで「ブラックジャックによろしく」の6巻を立ち読みしたあと、梅のおにぎりを買い、外で食べる。ローソンの壁にゴキブリがいた。田舎だからなのだろうか。
 ラブホテルを見て思う。ラブホテルと普通のホテルって、どう見分けるのやろう。名前とか雰囲気とかで見分けるのだろうか。未だによくわからない。それにしてもセックスするのに4500円は高いな。今の旅をしている私の常識からして。

 雨の中を一人で黙々と歩くことに、特に孤独などは感じなかった。怖いとも思わない。ただ、辛い。雨は降るわ、寒いわ、行けば行くほどなにもないわ、車は停まらないわで。
 ひたすらに歩く。たまにヒッチハイクするが、すぐやめる。

 ひたすらに歩く私がすることは「考え事」だった。
 Aさんの電話番号などを聞けばよかった。
 「Aさん」とは、秋田まで乗せていってくれた2台目の女性。名前を聞いていないので、車を降りてから私が密かにそう呼んでいた。「謎の少女A」で、Aさん。少女というのには無理があるが。
 自分の今の状況や愚痴なんかを聞いてもらいたいと思った。話をしたいと思った。
 私は、相手のことを知ろうとしないことに固執しすぎていたのかもしれない。なにもこだわることはなかったのかもしれない。私がそもそもこの旅の途中で会った人のことを知ろうとしなかったのは、ただ単に、不必要な繋がりを増やしたくなかったから。相手の連絡先などをこちらから教えてもらうとすれば、連絡するだろうし、それで話なんかはするかもしれんけど、それがだらだら続いて、腐れ縁になったりするのが嫌だったから。ようは面倒くさがり屋なのである。
 ヒッチハイクというのも、一つの出会い。そこから結婚したという風な話もなにかの雑誌に書いていたと思う。

 私は虫が嫌だった。自分はホームシックになったことがないし、孤独も夜も全然怖いとは思わないし、幽霊とかいう類も旅という開放感の中では怖さを感じない。第一、幽霊なんて見たことない。しかし、どうしても嫌なのが、虫。
 蜘蛛、ムカデ、ゴキブリ、蛾、蜂、蟻、ハエ……。さっきも、タランチュラ並みにでかい蜘蛛がいた。
 そういう虫のいるところでは寝ることができない。

 たまにボードをかかげてはすぐやめたりしながら、道の駅みたいなところに来たが、そこでもベンチに蜘蛛が巣を張っていた。そうでなくても、雨だけしかしのげないこのベンチでは寒さのせいもあり眠ることは無理だろうけど。
 ベンチで休んでいて、Aさんからもらった地図を見ていると、それに挟まっていた紙の表にマックスバリューの東北店舗の住所と電話番号が載っていた。前に見たときは裏しか見ていなかった。
 いくつかある店舗の中に二つ丸がついている。一つは秋田の、その日行こうとしていた店だろう。もう一つは、青森の西側にある場所。弘前から車で出勤するにしてはけっこう遠いように思う。
 もし、この丸がついてある店に電話すれば、なんとかしてそのAさんを見つけることは可能かもしれない。無事、福岡に着くか青森に帰ってくることができたら電話してみようか。この紙ももしかしたらいるものかもしれん。でも、やっぱりやめよう。そこまでしたらストーカーと同じだ。チャンスがあるのにできない。もどかしい。この紙も多分いらないと思うし。
 カエルがいた。生のカエル。生きたカエルを生で見たのは、久しぶり。というか、見た記憶がない。でも、多分見たことはあると思う。実家の近くもけっこうそういう生き物が見られる場所があったものだ。今はマンションが建ったりしてもうほとんどないけど。
 そのカエルを見ていたが、やがて自動販売機の下へと姿を消した。
 さて、また歩こう。歩くしかできない。途中休憩できるところがあればそこで休憩しよう。こんななにもないところで休憩なんてできない。まだまだ朝は明けない。歩こう。ちゃんと休憩できるところで休憩しよう。
 しかし、行けば行くほど、さらになにもなくなってきて、戻るに戻れず、止まるに止まれず、休むに休めず、ただ先を行くしかなかった。もちろん、ガストやカラオケなんてあるはずもなかった。夜なので、長距離トラックが多くなってくる。
 ヒッチハイクといったら、長距離トラックのイメージがあるが、実際にやってみると、ボードでは停まらない。向こうも仕事だろうし、第一、規則で乗せてはいけないとあるだろうし。乗せて事故でも起こして私が怪我でもしたらたいへんだもの。
 時間も場所も行き先も、なにもかもいい条件が揃っていない。そして、もしかすると私自身も駄目なのかもしれん。ヒッチハイクしているときは特に笑顔でもないし、乗せたいと思えるような人ではないのだろうか。


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吉川雅彦

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