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『葬送のフリーレン』名言集 5話

遅々として進まぬ名言集。やっと5話まできました。よろしければ4話のnoteもお読みください。

さて、5話スタートです。

その100分の1が、お前を変えたんだ。

アイゼン

このアイゼンの台詞の後に、回想シーンがフラッシュバックとして挿入されます。

皆さんはここで違和感を持たなかったでしょうか。

そう!その違和感の正体はアイゼンの言う「100分の1」の期間が回想の中に含まれていないことなのです。映し出されたのはエイラ流星以降の旅路ばかりでした。

アイゼンの指す「100分の1」ではなく、その後が映し出されたのです。
一体、どういう意味なのでしょうか?

その意図を推測してみましょう。

冒険中の10年間。その間、フリーレンの心の底には、彼女を変える契機となる小さな出来事が澱のように積みあがっていっていました。ただ彼女自身はそのことにまったく気づいていなかったのでしょう。しかし、ヒンメルの死を引き金に彼女の心はかき回されます。まるで沸騰する液体のように心の大部分に澱が舞ったのです。それが、人を知るための旅へと彼女を赴かせたのだと。そういう比喩なのではないかと思います。

だからこそ、澱としての期間ではなく、旅立ってからのシーンが映し出されたのではないでしょうか。

私たちの心の中にも、これまでの人生の中で様々な思いや記憶が静かに溜まっているはずです。それは普段は沈殿しておとなしくしていますが、なにかをきっかけに心がかき回され、気づいてしまうのです。一念発起して何かを始めるときは、そういうものではないかなと思います。決してその瞬間の思い付きなどではなく、これまでの長い蓄積があったから決意し、行動に移せるのだと思います。

ヒンメルが出てくるんだ。てっきりまた先生が出てくるものかと思っていたけど。私も少しは変わっているってことかな。

フリーレン

人の記憶を覗き込み、その記憶の中から大切な部分を抜き出して、捕食対象に幻影を見せる。そして正常な判断力を奪った隙に攻撃する。アインザームという魔物が使う人間に対する手段です。

この時にフリーレンの前に現れた幻影。それは師匠のフランメではなくヒンメルでした。

師匠と過ごした期間は約50年。ヒンメルとは10年です。大きな差異がありますし、1対1だったのと1対3だったのとの密度の違いもあります。それにもかかわらずヒンメルだった。

実はこのシーンと台詞は、最初に挙げたアイゼンの言葉をフリーレンが自覚する重要なものなのではないかと思っています。

こういった経験は、皆さんにも身に覚えがないでしょうか。

例えば、第三者から「〇〇さんって、おこりっぽいよね」や「いつも冷静だね」と言われたり、性格診断テストやSPIで「あなたの性格は……」と診断されたり。

誰かに言われたことや、指摘されたことは実は記憶にこびりついていて、ふとしたことで「ああ、そうなんだ」と自分自身も納得してしまうこと。それに似たようなものだと思うんです。

これと同じような流れを、アイゼンの台詞とアインザームのエピソードで表現し、視聴者の記憶や心に共鳴させているのではないでしょうか。

こうして文章化していくと、その巧みな構成に気が付き、心が震えます。

私の集めた魔法を褒めてくれたバカがいた……
それが理由になるかな。

フリーレン

竜を倒す理由をシュタルクから聞かれた際のフリーレンの回答です。
この答えに対してシュタルクは「くだらねえな」と一蹴します。
フリーレンのリアクションは「でしょ……」。

このやり取りがとても面白いと感じませんでした?

人は自分自身が信じる道を歩き続けます。その行動原理は過去の経験や学習、記憶、思いなどが積み重ったもので、他人には完全には理解しにくいものです。伝えるのもの難しいし、自分自身でも完璧に把握できているとは言い難いでしょう。

フリーレンのこの台詞は、勇者パーティーとのエピソードに基づいています。魔法で岩がロボットみたいに動いて、それを皆が褒めた。たった2~3秒のシーンが挿入されています。彼女の言葉は、この記憶を元に発したものでした。しかし、言葉の表面だけを拾えば、命がけで竜と戦う理由には到底結びつきません。

だからシュタルクは「くだらねえな」と返したのでしょう。彼の反応は至極普通です。しかし、フリーレンの中では魔王討伐の一部であり、彼女の行動原理の根拠となる大切な記憶なのです。

実はこのシーンも最初に挙げたアイゼンの台詞を裏付けるものなのかなと考えています。

こうして見ていくと、制作側がどれだけ細かく計算しているのかと驚かされます。また、原作マンガに対する制作側の深い理解が窺われます。

もしかしたらこの作品は後世に残る名作になるのかもしれませんね。

今回は5話の3つの名言を挙げました。

深く読み解いていくと、人の行動原理は過去の経験や記憶に基づいていること。その行動原理は他人にはわからないこと。実は自分では気づいていないマイルールみたいなものが存在し、知らぬ間にそのルールに従っていること。ある時、ふとそれを自覚すること。などが隠されています。

心理や考え方って、とても複雑で、一言では表せないし、自分でもわからないことが多いですよね。誰かと関わり、行動を共にし、言葉を交わすことで、露になったり気づいたりするということも日常ではよくあることです。また、自分自身で思考を言語化することもとても大切なのだと改めて感じます。

こういった事柄を物語に乗せて私たちに伝えてくれる『葬送のフリーレン』は今までになかった作品なのだと改めて思う私でした。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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