概念の議論から実行計画に移るところのシフトチェンジが難しい

これまでは概念化と共感の話をしてきましたが、今回は「概念化の後」について考えます。

概念化のプロセスとは、キーワードを拾い集め、概念モデルを作り、全体を俯瞰することでした。その結果、私たちは何を手に入れることができるのでしょう。
私が概念化のアウトプットとして期待しているものは以下の通りです。

 ・目標達成に向けた本質
 ・明確な前提
 ・全体像(主要な構成要素、要素の分類、依存関係、包含関係など)
 ・目標達成に向けた手段と優先順位

ビジネスの現場では、概念化は方針検討の段階に位置付けられることが多いのですが、アウトプットの一覧を見ると、それも頷けます。

さて、概念化で頑張ってきた皆さんは、これらのアウトプットを手に取って、さぞかしホッとすることでしょう。ところが、のんびりしてもいられません。ビジネスの目的はまだ達成できていないからです。
概念化のアウトプットは、その後、具現化に向けて「実行計画」へと引き継がれ魂が吹き込まれます。

実行計画では、概念化のアウトプットをヒントに、今後の活動を目的や目標につなぎ込むための具体策が検討されます。ステップ・バイ・ステップで、ひとつひとつ、緻密に練り上げられるわけです。

実行計画に織り込む内容を紹介しますが、これらは一例に過ぎません。

・ 目標達成に向けたシナリオ
 ・運営方針
 ・投資の種類と規模、投資のタイミング
 ・選択肢と仮説
 ・実行上の障壁と、それを打破するシナリオ
 ・評価指標(先行指標と結果指標)と評価基準、評価のタイミング
 ・推進体制とレポートライン
 ・責任分担や役割分担、会議体
 ・推進する上で欠かせない制度やルール
 ・詳細な日程計画
 ・詳細な予算計画

これらのうち「目標達成に向けたシナリオ」と「運営方針」は概念化のアウトプットに含まれているはずで、実行計画ではこれらを必要に応じて詳細化していきます。

日本企業には計画をお座なりにする組織風土がありますが、実行計画も例外ではありません。たとえ、自分にとっては計画するまでもない分かり切った話だったとしても、それをひとりで抱え込んでいたのでは、周囲の人たちには何も伝わりません。
実行計画を作成してみると気付くのですが、頭の中では分かった気でいても、いざカタチにしようとするとなかなか手が進まないものです。肝になる箇所が曖昧だったり、論理的に矛盾していたり、できると思っていたことが実は非現実的だったりと、悩みは尽きません。

実行計画では、現場との議論も大切です。現場の行動をイメージできなければ、絵に描いた餅になりかねないからです。
こんなときに役に立つのが「すり合わせ」です。これは、トップダウンともボトムアップとも違う、日本固有の文化です。以前に、目標設定段階のすり合わせはご法度だと話しましたが、実行計画には欠かせません。

「○○したいのですが、実際にはなかなか難しくて… 」
「それなら問題ありません、私たち実験部が□□しますよ」
「… 」
「私たちが□□して設計部にそれを伝えれば、彼らは必ず△△してくれますから」
「そんなことができるのですね、どうもありがとうございます」

こんな会話が成立するのが日本の現場のよさです。

概念化力では、日本はまだまだ欧米企業には及びません。多様な人々が織りなす社会の中で、価値観や問題意識の違いを乗り越える手段として、彼らは自然と概念化力や共感力を育んできました。
日本人が付け焼刃で簡単に追いつけるものではありません。
しかし、実行計画は別です。実行計画は日本企業の良さを引き出すのです。

とかく、現場合わせを期待して実行計画を軽視することの多い日本企業ですが、事前にすり合わせておけば、結果はさらによくなるに違いありません。

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