不用意な組織づくりは組織間に「壁」をつくる 最終的に大切なのは、縄張りを越えて考え行動する人材だ

戦略をいかにして実行に移すかを考える過程で、組織内外に必要な機能や機能間の依存関係が浮かび上がってきます。これらの機能を実現するには、組織体制や制度・ルールの見直しが欠かせません。
つまり、まずは戦略を実行に移すための機能を明らかにし、次にこれらの機能を実現するための組織体制や制度・ルールを考える、これが正しい順番です。
ところが、日本企業の多くがこの順番を守っていません。やるべきこと(=必要な機能)が曖昧なままに組織づくりを先行するケースをよく見かけます。

「部門ごと、グループごと、○月○日までに自分たちが何をやるべきかを明確にしてください」

組織体制をつくり上げた後に、各部門にこんな指示を出す経営幹部が多いわけですが、これでは本末転倒です。

組織体制をつくり上げるというのは、組織間に「壁」をつくっているのと同じです。いざ、戦略を実行に移そうとしたとき、体制がうまくデザインされていない組織では、組織間の壁が障壁となって立ちはだかります。これはまさに自殺行為、自分たちの手で自分たちの首を絞めているのと同じです。

そんなわけで、組織づくりの順番を間違えるのは致命傷になりかねないわけですが、組織間の壁の問題はこの順番を守るだけでは解決しません。

適切にデザインされた組織にも組織の壁は存在し、時に事業運営を阻害します。たいていの人は自分の所掌内で状況を理解し処理しようとするので、上司や上層部が適切に指導しない限り、壁は高くなる一方です。
しかも、事業環境が厳しくなる中で「自分たちの立場だけでも守り抜こう」という内向的で利己主義的な思想が組織の価値観を侵食した結果、組織の壁はこれまで以上に高くなり、壁を乗り越えることは至難の業となっています。

さらに、日本企業の「欧米モノマネ」がこの状況に拍車をかけます。役割分担が明確な欧米企業では組織の壁を前提とした事業運営がなされているわけですが、日本企業が付け焼刃でこれを真似たところで、所詮中途半端に終わるだけです。この中途半端さが問題の放置につながっています。
日本の現場は本来、組織の壁を乗り越えるのに十分な能力を備えていました。それを思うと、今のこの状況は残念至極としか言いようがありません。

このような状況の中で、組織の壁を乗り越え、自分の縄張りを越えて行動できる人材は欠かせません。ビジネス環境が複雑さを増すに連れ、顧客を納得させるには、以前のような単純な価値提案は通用しなくなっています。機能横断的なプロジェクトも増えました。壁を挟んで会話しているようでは、競争に勝てなくなっているのです。

「うち部の微細化技術と○○部の解析技術を組み合わせて新しい価値を生み出しましょう」
「顧客と対面している□□事業部を仲間に入れて顧客ニーズを取り込む必要があります」
「うちの部から△△君をプロジェクトマネージャとして派遣するので、各部は彼と力を合わせてゴールを達成してください」

どれもこれも、壁を乗り越えられる人材がいればこその話なのです。

壁を乗り越える人材を育てるには、周辺の情報や事業の全体像に関心を持たせる必要があります。身の回りの狭い範囲の情報しか持たず孤立無援な働き方をしている、いわゆる近視眼的な人たちは、壁を乗り越える必要性にすら気付きません。そんな人たちを変えるには、全体を俯瞰できる場所に彼らを引きずり出し、さまざまな情報や状況にさらすしかありません。そして、概念的に考える訓練をするのです。

皆さんの組織がこのことに気付いていないなら、皆さん自身がまずは動くしかありません。自ら壁を越えて情報を集め、人と交流し、その中で壁を越える能力を身に付けるのです。最初は苦痛を伴うかもしれませんし、上司にとがめられるかもしれません。しかし最終的には、皆さんは、組織をまとめ上げる「結果を出せるリーダー」として唯一無二の存在になるはずです。

組織の壁の高さを注意深く測りつつ壁の質を探り、それらの壁をうまく乗り越えることのできる人材、私たちはそんな人材にならなければなりません。そして、そんな人材を育むことが今の私たちには大切なのです。
早めに手を付けることをお勧めします。

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